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【小松泰信・地方の眼力】「通識」と「常識」2019年11月27日

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【小松泰信・(一社)長野県農協地域開発機構研究所長】

 11月27日、NHK総合7時台の「おはよう日本」は、香港の高校で10年前に必修化された「通識」教育を紹介した。若者を中心とする抗議活動や勢いの背景に、この教育の影響があることを示唆。生徒が議論をしながら理解を深めていくユニークな科目であることを伝える興味深い内容であった。もちろん、危機意識を持つ親中派の動きも紹介した。
 にもかかわらず、「ベ・ツ・ニ」と唾棄したきものは放送し、「桜を見る会」関係は放送せず。

◆「通識」教育の成果が問われる

地方の眼力・本文用画像(小松泰信先生) 東京新聞(11月27日付)によれば、香港政府の林鄭月娥(りんていげつが)行政長官は26日の記者会見で、デモ参加者らが掲げる「五大要求」を拒否する考えを強調した。選挙で示された民意が無視されれば、混乱がさらに深まる恐れがあることを伝えている。
 西日本新聞(11月27日付)の社説も、行政長官の記者会見を受けて「一連の混乱を本気で収拾するつもりがあるのか疑問が残る」とする。そして「事態を動かすには中国政府の柔軟な対応が必要だ。中国共産党は10月末に『香港の管理強化』を打ち出している。香港の動向が国内や来年1月の台湾総統選に影響を及ぼさないよう締め付けの強化が懸念される。だが、『一国二制度』を尊重し、香港政府に一定の裁量を与えることが本筋」とする。民主化を求める人々にも「暴力に訴える過激な行動は慎むべきだ」とした上で、「香港政府は対話によって混乱の収拾を図り、公正な選挙制度の実現といった政治改革を目指すべきだ」と提言。
 香港政府高官も含めて、「通識」教育の成果が問われている。

◆安倍族に「常識」教育を

 共同通信社は全国の有権者を対象に11月23、24日に世論調査を行った(対象者1962人、回答率52.7%)。「桜を見る会」についての主な結果は、次の2点である。
(1)同会に安倍晋三首相の地元支援者が大勢招待されていたことについて;「問題だと思う」59.9%、「問題だとは思わない」35.0%
(2)同会を巡る安倍首相の発言について;「信頼できる」21.4%、「信頼できない」69.2%
 地元支援者の招待を問題視しない人や、首相発言を信頼する人は決して少なくないが、驚きや落胆は禁物。
 西日本新聞(11月27日付)によれば、田村智子参院議員(共産党)が、内閣府から提供された2014年の資料には「総理、長官等推薦者」に「3400」と明記されていることを紹介し、招待者数が年々増加する中で、今年の推薦枠が14年よりも減って「約2000人」というのは不自然と追及した。
 またその記事に続いて、菅義偉官房長官が26日の記者会見で、反社会的勢力の出席について問われ、「出席は把握していなかったが、結果的には入ったのだろう」と述べたことと、菅氏と反社会的勢力のツーショットについては、自ら「いつの時か全く分からない状況だ」とも語った記事が載っている。
 菅氏には、反社会的勢力各位の功績と功労を明らかにすることと、ツーショットへの明確な説明が求められる。
 安倍族が図らずも教えてくれているのは、彼らに「常識」教育が必要なことである。

◆河北新報が問いかけるJAの政治姿勢

 河北新報(11月16日付)によれば、吉村美栄子山形県知事の資金管理団体による政治資金パーティーで、山形県内の15JAと連合会が拠出した資金で活動し、県農協中央会に事務局を置く任意団体「山形県農協農政対策本部」(県農政対)が、1人1万円の券75人分を購入しながら半数近くが欠席する運用を繰り返していた疑いがあることを伝えている。
 問題のポイントは、この県農政対が、個人加入の政治団体「県農協政治連盟」(県農政連)とは別組織の任意団体という点である。
 上脇博之氏(神戸学院大学教授、憲法学)は「任意団体など、政治資金規正法で『その他の団体』に分類される団体が資金管理団体のパーティー券を購入し、欠席した場合は違法な寄付になる。寄付が認められる個人や政治団体とは事情が違う。県農政対と支援する会(小松注;吉村氏の資金管理団体)は欠席分を精算するなどして、寄付と見なされないよう細心の注意を払う必要があった。何度も大量欠席が続いていたとしたら、意図的であり悪質だ」とコメントを寄せている。
 さらに同紙17日付では、この問題に対するJA幹部や組合員からの批判の声に加えて、外部からのコメントを紹介している。
 山田創一氏(専修大法科大学院教授、民法)は「最高裁の指摘を重視するなら、政治献金が許されるのは、構成員の思想・信条の自由を侵害しない場合に限られる。今回の事例のようなパーティー券購入が対価に関係なく実質的な寄付とみられる場合は、組合員の思想・信条の自由を侵害し、農協の目的の範囲外だと考えられる」との見方を示した。
 当コラムは「農協グループが自己改革を進める中、まず正すべきなのは、こうした不明朗な行政、政治との関係や金のやりとりだ。組合員に説明し、納得の得られない運営はするべきではない」ことを強調した。

◆JA全中に「代表機能」は担えない

 日本農業新聞(11月20日付)の1面に、JA全中が19日にJA代表ら約900人が参加する「食料・農業・農村振興フォーラム」を開き、与党政策責任者と意見交換をしたことが載っている。皮肉なことに同じ紙面に、19日の衆院本会議で日米貿易協定の承認案を与党などの賛成多数で可決、参院に送った記事も載っている。そこでは、政府・与党が要求資料の提出を拒み、野党が反発して退席が相次ぐなど対立が激化し、審議時間もわずか11時間だったことが紹介されている。
 我が国の農業に多大な影響を及ぼす協定の審議に、極めて不誠実な対応しか取らなかった与党の政策責任者とどのような意見交換をしたのか。そして野党のしかるべき議員と「食料・農業・農村」問題について意見交換をする予定はあるのか。
 農業者もJA役職員も多様な政治信条を持っている。すべての政党と、しっかりと意見交換をすることこそが、広く国民にこれらの問題に関心と理解を示してもらう入口になるはず。
 それを怠って、国民に広く理解を求めるとは、常識の欠如した人の発想である。
 JA全中のHPには、自らが果たすべき機能として代表・総合調整・経営相談の3つの機能が上げられている。
 そして代表機能については、「組合員・JAの共通の意思の結集・実現をはかります」と記されている。
 このフォーラムのどこに「共通の意思」があるのか。悲しいかな、「代表機能」を担う資格をJA全中は自らの手で捨て去った。
 「地方の眼力」なめんなよ


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小松泰信氏のコラム【地方の眼力】

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