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【森島 賢・正義派の農政論】香港が目ざす自由と民主主義の内実は何か2019年12月2日

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【森島賢】

 先週、香港の区議選で民主派が圧勝した。得票率でみると、民主派57%、親中派42%だったが、小選挙区制なので議席獲得率は大差になり、民主派85%、親中派13%だった。
 いったい、民主派のどんな政策が市民の圧倒的な支持を得たのか。自由と民主主義だというが、それだけでは分からない。そこを明確にして、香港市民の支持だけではなく、中国国民の全体に支持を広げることが、政策を実現するための、今後の課題だろう。
 そうなれば、中国全体の政治を動かすことができるし、歴史を動かすことができるだろう。それは中国の歴史だけではなく、世界の歴史を動かすことになるだろう。
 いくつかの疑問点がある。

 香港区議選の4日後に、米国が香港人権・民主主義法を成立させた。その内容は、香港で基本的人権と自治を侵す者には、米国政府が資産凍結などの罰を与える、というものである。もちろん、想定している対象は、中国政府の幹部だろう。

 当然のことだが、中国政府は、露骨な内政干渉だとして猛反発している。
 ここで注目したいのは、このことではない。

 香港の民主派は、この香港人権法の成立について、米国に感謝する集会を開いている。TVでみると、会場には米国の国旗が林立し、「トランプさん有難う」という看板も見える。
 民主派は、それに加えて、他の国々も米国にならってほしい、と要望している。
 いったい、これはどうしたことか。中国政府は猛反発しているのに、香港の民主派は歓迎している。いったい、民主派が要求する政治は、どんな政治なのか。
 それは、米国べったりの政治なのか。彼らが要求する自由と民主主義は、米国を手本にしたものなのか。香港の政治を米国型に変えることを、他の国々も支持してほしい、というのだろうか。
 支持を要請する相手は、米国や他国ではないだろう。中国全土の国民ではないのか。
 中国全土の国民の多くは、米国型の自由と民主主義には問題が多い、と考えている。

 米国型の自由は、資本のための自由が、その根幹にある。それが米国国民の中間層を下層に追い落とし、いまや国民を、1%の経済的強者と99%の経済的弱者に分断している。
 この格差問題は、米国にとって社会を根本から揺るがす、そして早急に解消すべき基本問題である。このような社会を、香港の民主派は手本にしたいのか。
 また米国は、「航行の自由作戦」と称して、中国の近海に軍艦を出動し、中国を威嚇している。もしも、中国が米国のフロリダ沖に軍艦を浮かべたら、米国は怒り狂うだろう。
 このように、米国型の自由には問題が多い。民主派は、これを無批判に受け入れ、手本にしようというのか。

 また、米国型の民主主義は、強者による強者のための民主主義である。米国国民なら誰でも大統領になれるというが、実際はそうではない。自分が強者であるか、あるいは強者の支持がなければ大統領になれない。選挙運動のために莫大な資金がかかるからである。
 このような選挙で選ばれた大統領は、1%の強者のための政治を行うことになる。これは99%の弱者のための政治ではない。だから99%の国民のための民主主義ではない。
 民主主義は「最大多数の最大幸福」だ、という。それでも、このような米国型の99%の弱者ではなく、1%の強者のための民主主義を手本にするのなら、そのことを自覚して、名前を「民主派」ではなく、「親米派」に変えたらどうか。

 香港の民主派は、名目が自由と民主主義なら、内実はどうでもいい、と考えているのか。
 そうだとすれば、ここには知性も何もない。ヒトラーでさえ独裁者ではなく、民主的な政治家になってしまう。彼は民主的な選挙で選ばれたのだから。そして、当時のドイツは民主主義の国になってしまう。
 また、ヒトラーは「国家社会主義ドイツ労働者党」の党首だから、名前だけみると社会主義者になってしまう。
 まさか、香港の民主派は、そのように考えているわけではあるまい。

 今後、香港の民主派がなすべきことは、彼らがいう自由と民主主義の内実を、中国全土に向けて明確に示すことである。米国の国旗を振り回すことではない。
 そうして、中国の全国民とともに、中国型の自由と民主主義を創造的に磨き上げることである。
 それを、世界中の農業者などの弱者が注目している。
(2019.12.02)


(前回 新しい朝鮮の生みの苦しみ

(前々回 5G問題から見える社会主義の優位


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