【JCA週報】JAグループ職員教育の歴史的変遷2019年12月9日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹JA全中代表理事会長、副会長 本田英一 日本生協連代表理事会長)が、各都道府県での協同組合間連携の事例や連携・SDGsの勉強会などの内容、そして協同組合研究誌「にじ」に掲載された内容紹介や抜粋などの情報を、協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、「JA グループ職員教育の歴史的変遷」です。
協同組合研究誌「にじ」2019年秋号に寄稿した当機構常務の藤井晶啓の報告を紹介します。
協同組合研究誌「にじ」2019年秋号「協同組合と教育」
JAグループ職員教育の歴史的変遷
藤井 晶啓 日本協同組合連携機構 常務理事 企画総務部長事務取扱
1.はじめに:JAグループ職員教育の特徴
JAグループは単協である600強のJAに正職員約20 万人、臨時職員約4万人が在籍する。その特徴は3点ある。
第1は、事業の多様性に応じて、職員教育プログラムが多岐にわたる点である。JAグループは総合事業を営んでおり、営農・生活指導事業、経済事業、信用事業、共済事業、厚生事業など多様な事業を行っている。このため事業毎・業務毎に教育プログラムを準備する必要がある。また、JA職員の常識としての共通知識も求められる。
第2は、各JAの教育制度が類似している点である。単協による具体的な違いはあるが、ほとんどのJAで教育制度の前提となる人事制度は職能資格制度をもとにした職能資格体系で構成されており、また職能資格の内容が似通っている。そして、人事制度と教育制度とは連動前提で設計されている。例えば、昇格には自己啓発としての資格認証試験の合格が前提条件となり、昇進後には階層別研修の受講が待っている。
このように人事制度と教育制度がJA間で似通った理由は「合併」にある。多くのJAは合併を契機に人事制度をそれまでの年功序列型から職能資格制度に転換した。その際に県中央会から大規模JA を想定した人事制度及び教育制度のひな形が提示された。このため、合併JAの人事制度及び教育制度が類似することとなった。
第3は、職員教育を県域の中央会・事業連が主導してきた点である。
本来、自JAの職員をどう教育するかは経営主体であるJA が判断し実施するものである。しかし、ほとんどの単協が小規模であった農協の発足当初から事業横断的な基本教育については中央会が、事業毎の専門教育については事業連が県内の職員研修を主導していた。当時、単協側にとって中央会・事業連の要請に応じて職員を派遣することと自農協の職員教育とは同義であった。
県域主導型は、教育品質の安定・向上と規模の経済というメリットがある。その一方で、中央会・事業連依存になりやすいというデメリットもある。そのため現在の大規模合併JAのなかには、JA自己完結型の職員教育を志向する動きがある。
(略)
9.さいごに
(共同開発・分散実施の今後)
改正農協法のもと令和元年(2019)9月末には全中は一社化し、県中は連合会化する。JA職員の基本教育は全中・県中の共同開発・分散実施で支えてきたが、今後の基本教育プログラムの品質は、これからの全中・県中それぞれの教育部門の体制が確保できるかに依拠する。仮に中央会体制がぜい弱化した場合、単協主導型の基本教育が現実的に可能なのか、事業連主導が強まる専門教育との混線克服などJA負荷は大きくなる。
(対話型組織開発)
先駆的な企業では2005年頃からファシリテーションに着目していた。それらの企業では実際にファシリテーションスキルを研修で学んだ個人が実際に職場で実践しようとしたものの、多くの障害があったと報告されている。このため、現時点では個を対象にした人材育成から、対話を通じて職場や組織全体に働きかける「対話型組織開発」へと振り子が揺れつつある。
協同組合は人の組織である。わが国の人手不足は一時的なものではないのだから、人を大事にする協同組合らしくJAを支える職員を大事にする経営でありたい。
それは、ハイパフォーマー育成を狙い、逆に多くの人を疲労させる直線的で効率一辺倒のマニュアル主義による人材育成ではなく、職員と組合員とが対話のなかでわが地域・わがJAの今後を展望し、ジグザグであっても必要な人材を長い目で育成する協同組合らしい人材育成と組織開発との組み合わせではないだろうか。
協同組合研究誌「にじ」 2019秋号より
https://www.japan.coop/wp/publications/publication/niji
※ 論文そのものは、是非、「にじ」本冊でお読みください。
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