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【熊野孝文・米マーケット情報】究極のコメ付加価値商品とは?2019年12月17日

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【(株)米穀新聞社記者・熊野孝文】

コラム 米マーケット市場 見出し画像.jpg 今売り出し中のディスカウントストアーの中には、米卸から5kg1480円で仕入れた精米を1498円で販売しているところがある。以前からスーパーの三大白物特売商品と言えば、卵、砂糖、コメであったが、最近はそうした譬えも聞かなくなったと思っていたら相変わらずコメを特売商品に仕立ててこうした売り方をしているスーパーもある。消費量が落ちたとはいえ、コメの特売は消費者にとっては魅力で、そのコメ売り場は20mにもなるという。

 付加価値が付けづらいコメは客寄せのために価格で勝負という商品になりやすい。なんとかコメに付加価値を付けてこれまでに様々な試みがなされ、現在でも続いている。無洗米や加工した玄米商品はその類で、消費者から一定の支持を得ているが、何倍もの付加価値が付くわけではない。冷凍米飯やパックご飯もスーパーでの売価を見るとよくこの安値で売れるなと感心することこそあれ、価値に見合った売価だとはとても思えない。ところが倍どころか何百倍もの付加価値を付けたコメ加工品を販売しているところもある。

 それは化粧品の世界で、古くはヌカ石鹸や清酒から抽出した成分で化粧品を作って販売しているところや最近ではコメを使った「お米マスク」という商品もある。この商品は「米発酵液」(肌荒れを防いでみずみずしく整える)、「コメヌカ油」(天然由来のオイルで若々しいお肌をサポート)、「コメヌカエキス」(お米の美容成分でツヤのあるお肌をサポート)、「米セラミド」(水分保水力があり肌のバランスを整える。グルコシルセラムド)などと記されている。販売元に売れ行きを問い合わせると薬局などのほか通販でも好調だとの答えが返って来た。コメの成分に着目した商品開発をしている会社の中には米ぬかを原料にしたサプリメントを商品化しようとしていることもある。使用する米ぬかは完全有機が証明されるものでなければいけないというので、そうしたぬかを出荷できる大手有機米専門店にまで行った。まだ商品にはなっていないが、おそらくTVの通販番組で大々的にPRするのではないかと予想している。

 サプリメントも何十倍もの付加価値が付きそうだが、極めつけは何といってもバイオエタノールだろう。コメを原料としたバイオエタノールと言えば石油代替製品が思い浮かぶが、以前年間2200tものコメを原料に使う計画だというので新潟まで行き、そのコメを生産している生産者からどんなコメが使われているのか見せてもらい試食までした際、意外に美味かったことが記憶に残っている程度で、あまりにもコストパフォーマンスが悪すぎたのか事業を止めてしまったところもある。なにせ㎏350円のコメを20円で売らなくてはいけないのでトウモロコシで出来てもコメでは負担が大きすぎる。

 エタノールを燃料の代替品にしようとするとこうなるが化粧品に使えば話が違って来る。そうした製品を作っている女性経営者から同社の商品がアメリカでオーガニック認証を得たという連絡があったので行ってみた。
 同社は岩手県奥州市で自治体や生産者の協力を得て休耕田に無農薬でコメを作ってもらい、そのコメを原料にエタノールを精製、これを化粧品会社に販売する事業を始めた。単に無農薬だけではオーガニックの認証は得られないので、原料のコメを有機認証してもらい、さらに精製過程でも認証を得なければならないためアメリカで認証を得るためには「本当に大変だった」と言う。今回、USDAが同社のエタノールにオーガニック認証を認めたことにより、化粧品や子供用防虫スプレーなど幅広い分野での活用が見込まれるほか、近年、国連のSDGsなどもあり、化粧品、香水や雑貨などでサスティナビリティやトレサビリティが求められている中で大きな需要が期待されるとしている。アメリカやEUではオーガニック化粧品の認証機関もあり、その市場規模が拡大している。

 ただし、日本で作ったものの認証を得るには特定の認証機関から認証を得る必要があり、その経費も嵩む。さらに1tのコメからは500リットルのバイオエタノールしか抽出できないので製造コストも嵩む。しかし、そのエタノールを使ったオーガニック化粧品は150mlという小瓶でも2000円以上の売価が付けられる。さらにはエタノールの搾りかすもオーガニック認証を得ているため石鹸も作れる。
 オーガニック化粧品の市場規模は有機食品の市場規模と変わらないぐらいの金額になっており、コメには大きな可能性がある。


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(株)米穀新聞社記者・熊野孝文氏のコラム【米マーケット情報】

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