【リレー談話室・JAの現場から】2020年-SDGsと協同組合2019年12月18日
時代の大きな節目を感じる2019年であった。それぞれの協同組合が「それぞれ」のことだけに傾注しがちな日常から一歩出て、「協同組合」の自覚と役割をもって連携しないといけないことを学んだ。
◆ローマ教皇とグレタさん
ローマ教皇が11月に残した日本での一連のメッセージが100年後に聖書の一章に付け加わることになるかもしれない...。そんなことを思わせるような、例えば、長崎での次の言葉であった。
「ここは、核兵器が人道的にも環境にも悲劇的な結末をもたらすことの証人である町です。そして、軍備拡張競争に反対する声は、小さくともつねに上がっています。軍備拡張競争は、貴重な資源の無駄遣いです。本来それは、人々の全人的発展と自然環境の保全に使われるべきものです。今日の世界では、何百万という子どもや家族が、人間以下の生活を強いられています。しかし、武器の製造、改良、維持、商いに財が費やされ、築かれ、日ごと武器は、いっそう破壊的になっています。これらは途方もないテロ行為です」
日本は核戦争の犠牲となり平和利用のはずであった原発の災禍をも引き起こした唯一の国である。その日本からのローマ教皇の発信であり、あまりにも率直で真摯な語りかけにあらためてこころ動かされた。今だけ、金だけ、自分だけの空虚さがただようが、本当は世界に向かって日本が発信しなければならない言葉でもあった。
さらに、国連で世界の政治家、経済人に向けて激しい言葉で環境保護を訴えた16歳の少女グレタさんの次のスピーチは、全世界において経済繁栄の先端を走り続け、彼女を孫や子とするような大人世代をも撃つものであった。
「あなたたちは空っぽの言葉で、私の夢と子ども時代を奪い去った。...人々は苦しみ、死にかけ、生態系全体が崩壊しかけている。私たちは絶滅に差し掛かっているのに、あなたたちが話すのは金のことと、永遠の経済成長というおとぎ話だけ。何ということだ」
◆動き出したSDGs運動
核軍縮と温暖化防止、自然エネルギーへの加速、さらには貧富の格差是正は、地球に棲みついて繁栄した人類のさらなる持続性の必要条件となっている。だが、核軍縮に向けて被爆国の主張をするでもなく、原発再稼働に向けて動き出し、温暖化による異常な自然災害の頻発に向けた具体策をもたず、貧富の格差では先進国のトップクラスにあるなど厳しい現実の中にある、それが日本の姿である。
2019年にそのような地球と人類に灯った赤信号を指摘する二人の人間の発言を世界の人々とともに目撃したのだが、その記憶も首相の観桜会騒動から「五輪イアー」への喧騒で薄れはじめている。
政治や経済の無作為の作為ともいうべき傲慢がもたらした現実を転換するために、すべての人々の共同の取り組みがSDGs(持続可能な開発目標)運動といっていい。なぜなら運動の根底に「我々は貧困を終わらせることに成功する最初の世代になり得る。同様に、地球を救う機会を持つ最後の世代になるかもしれない」との認識があるからだ。子や孫のその先まで豊かに暮らしていけるように、現世に生きる私たちが自らの居場所で努める17の行動目標が環境(6・13・14・15)、社会(1~5・7・11・16)、経済(8~10・12)の3分野にあり、17の〈パートナーシップで目標達成しよう〉という道筋だ。
11月には『1時間でよくわかるSDGsと協同組合』(家の光協会。JCA監修)が出版された。協同組合をベースにSDGsを読み解いた国内初の学習書である。わかりにくさが指摘されていたSDGsがすっきりと理解できる80頁の小冊である。グレタさんが訴える13の〈気候変動に具体的な対策を〉では、「温暖化に影響が大きいCO2の排出量1位は中国、2位は米国。この2国で43%を占める。日本は5位(3.5%)で全国の生協で具体的な取り組みが進んでいる」ことなどを解説している。協同組合人の2020年のSDGs運動に本書が役立つと思う。
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
春の彼岸の主役は沖縄のキク【花づくりの現場から 宇田明】第55回2025年3月13日
-
輸入小麦 政府売渡価格 4.6%引き下げ 4月から 農水省2025年3月13日
-
地域外から後継経営者 新たな集落営農へ 北陸農政局がシンポ2025年3月13日
-
英語版みえるらべる愛称「ChoiSTAR」に決定 持続可能な農業を後押し 農水省2025年3月13日
-
トマトのコナジラミ類 多発のおそれ 令和6年度病害虫発生予報第10号 農水省2025年3月13日
-
二回あった正月【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第332回2025年3月13日
-
「91(きゅういち)農業」の普及促進 労働力支援に6万8000人 全国労働力支援協議会2025年3月13日
-
JA中古農業機械展示会に約240人が来場 コスト低減の一助に JA全農おおいた2025年3月13日
-
イチゴ新品種「とちあいか」などで"新生栃木"をアピール JA共済マルシェ2025年3月13日
-
「丹後コシヒカリ」をプレゼント 「京都のうまいもん」X(旧Twitter)のフォロー&リポストで JA全農京都2025年3月13日
-
バイオ炭の農地施用による炭素貯留量 簡便に算出する手法開発 農研機構2025年3月13日
-
令和6年能登半島地震・能登豪雨災害へ募金2億1182万3596円を活用 コープデリ2025年3月13日
-
環境配慮と十分な結束保持力 誘引結束機テープナー用「生分解テープ」新発売 マックス2025年3月13日
-
愛媛宇和島みかんを限定ケーキで「四国 宇和島 みかんフェア」開催 カフェコムサ2025年3月13日
-
ドジャースとパートナーシップ契約締結「八海山」が公式日本酒に Hakkaisan2025年3月13日
-
「健康経営優良法人2025 ホワイト500」に2年連続で認定 クボタ2025年3月13日
-
役員人事 マルトモ(4月1日付)2025年3月13日
-
令和7年度宮崎県職員採用試験「みやざき新時代」担い手を募集2025年3月13日
-
保冷グッズ「Natural Season 真空パネルクーラーボックス」発売 コメリ2025年3月13日
-
百戦錬磨が運営する旅行予約サイト「STAY JAPAN」を事業譲受 雨風太陽2025年3月13日