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【鈴木宣弘・食料・農業問題 本質と裏側】国家私物化特区――様々な接点2020年1月9日

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【鈴木宣弘・東京大学教授】

 獣医学部問題が議論になった1年以上前に、その構造をすでに指摘していたと後からネットで話題になったのが、2016年5月19日の内閣委員会「国家戦略特区一部改正案」の参考人質疑であった。一部は、すでに本コラムで過去に紹介したが、TPPや食料自給率に関する議論も含めて、TPP11と日米協定という展開になった今も、本質はまったく変わっていないので、 議事録から前回より一層多くの箇所(太文字は筆者による)を紹介する。

 なお、この委員会で議論されたのは、H県Y市の国家戦略特区で農地買収を例外的に認められた企業の案件であったが、その企業(M氏が元会長で社外取締役が人材派遣業大手の会長T氏とLファーム展開のN氏=有能なMTNコンビ)は農・林・水(水道も含む)すべてを「制覇」している。なぜなら、当該企業と、人や国の山を盗伐してハゲ山にしてバイオマス発電で儲けて植林義務もなく「食い逃げ」できるようになった企業と、洋上風力発電のために人の漁業権を無理やり補償もなしに強奪できるようにしてもらった企業と、S県H市の水道事業に参入した企業グループのひとつは、同一企業である。
 以下の議論からは、様々な人と人との「接点」も読み取れる。

○山本太郎君 (略) 鈴木先生にも石破大臣と同じ質問をさせていただきたいと思います。今回のように、農業を国家戦略特区に含めることで、地方創生、地方に暮らす人々の繁栄、豊かさにもつながっていくとお考えになりますでしょうか。(略)

○参考人(鈴木宣弘君)(略) 私の理解では、国家戦略特区は岩盤規制に穴を空ける突破口だというふうに定義されていると思います。【端的に申し上げれば、特区は政権と近い一部の企業の経営陣の皆さんが利益を増やせるルールを広げる突破口をつくるのが目的】ですから、地方創生とは直接結び付いていないと思います。むしろ、地方創生には逆行します。
 なぜならば、地域の均衡ある発展のために維持してきた相互扶助的なルールは、まさに、今だけ、金だけ、自分だけの一部企業が地域で利益を得るためには障害となります。そこで、それらを既得権益、岩盤規制との名目で崩し、既存の人々、農家の皆さんのビジネス、お金が奪われていきかねません。既存の業者や農家の方々が多く失業し、地域コミュニティーも崩れていく可能性があります。つまり、地域全体としては衰退する可能性があるということを考えなきゃいけないと思います。

○山本太郎君 (略) 鈴木先生はTPPの問題に関しましても大変お詳しい方です。国家戦略特区はTPPの問題にもつながっているんでしょうか、先生の御意見をお聞かせください。

○参考人(鈴木宣弘君) 日本でも、TPPに関連してあっせん利得罪の議論がありましたけれども、TPPを推進するアメリカの共和党の幹部は、巨大製薬会社から2年で5億円もの献金を得て、TPPで新薬のデータ保護期間の延長を要求しましたように、TPPには巨大なあっせん利得罪の構造が当てはまります。結果的に、TPPは政治と結び付く一部の企業の経営陣が利益を増やすルールを押し付け、広げていくことが大きな目的でありますから、これは国家戦略特区の思想とも同じです。(略) 大店法が撤廃され巨大店舗が進出して、日本中の商店街がシャッター街になったことは御案内のことと思います。そして、ある程度もうかると撤退して、町を荒廃させてきました。同じようなことが更に広範な分野で、TPPと特区の相乗効果で進む危険を考えなければいけないと思います。

○山本太郎君 (略) TPP協定が発効すれば農業分野は一体どのぐらい損害を被るのかというのを先生の御試算で教えていただけますか。

○参考人(鈴木宣弘君)(略) 農業分野の生産損失額が当初試算の3兆円から約20分の1の1700億円に減るわけはありません。前代未聞の数字操作と言えます。国内対策を先に出して、影響がないように対策をするから影響はないと主張をしているだけで、全く根拠はありません。
 例えば、政府は、酪農では加工原料乳価は最大キロ7円下がると言っておりますが、酪農家の所得も生産量も変わらないと言います。生クリーム向けの生乳に補給金を付けると7円の下落が相殺されるでしょうか。畜産クラスター事業を強化すれば生産費が7円下がるでしょうか。可能だと言うのであれば、その根拠を示すべきだと思います。
 我々が価格下落による生産量の減少率を過去のデータから推定して計算し直しますと、政府試算の約七倍の1.3兆円となりました。ここから価格下落を相殺するのに必要な差額補填額を計算すると、年間8千億円の追加予算が必要となります。10年続ければ8兆円です。そんな予算は準備されているでしょうか。するつもりもないと思います。

○山本太郎君 (略) 日本のあるべき食料自給率について、鈴木先生にお伺いできますでしょうか。

○参考人(鈴木宣弘君)食料自給力という概念が重要であることは、私もそのとおりだと思います。つまり、今結果としての食料自給率が、インフラがしっかりあってそれによってもたらされているということですから、もし食料自給率が極端に低くなれば、そういう状況でいざというときに輸出規制があったときに、じゃ急に物が作れるかということです。ですから、そういうふうなインフラをきちんと維持して自給率を維持しておかないと、今回の基本計画のように、いざとなれば校庭で芋を作ればいいという議論になってしまうわけですよね。それは、だから、その点はちょっと違うと思います。
 食料自給率向上という政策目標は、事実上日本では放棄されたんだと思います。TPPも国家戦略特区も、先ほど申し上げたとおり、一部の企業の利益ということが考えられていますから、それによって多くの農家が失業して、全体として、国民に安全、安心な食料を供給し続けるという安全保障の概念はそこにはありません。食料自給率は下がり、まさに食料自給力も下がるということになると思います。
 片や、アメリカやヨーロッパのことを考えてみないといけないと思います。ブッシュ元大統領は、食料自給できない国を想像できるか、それは国際的圧力と危険にさらされている国だと演説し、アメリカの大学では、標的は日本だ、日本人の直接食べる食料だけでなく畜産の餌穀物を全部アメリカが供給すれば日本人が完全にコントロールできるといって、アメリカはお米を一俵4千円で輸出していますが、一俵1万2千円との差額は全部政府が払って、そして生産と輸出を振興していると、これが食料戦略というものです。
 あるいは、農業所得に占める補助金の割合は、日本では15.6%ですけれども、EUではそれが95%前後です。これだけのことをやって、そんなの産業かと言われるかもしれませんが、命を守り、環境を守り、国境を守る産業は国民が支える、これが当たり前なんですよね。
 それが当たり前でないのが日本だということを今考え直さないと、日本農業が過保護で衰退した、欧米は競争で発展したというのは間違いです。食料戦略があるかないかの違いだということを考えませんと、このまま、過保護な日本農業を競争にさらせば自給力が付くんだといったら、誰も、インフラも何もなくなってしまいますよ。それが本当に自給力を高めることになるのか。政治は国民の命を守る責任を放棄してはならないと思います。(略)

○国務大臣(石破茂君) 鈴木先生と私が農林水産大臣のときに毎日みたいにいろんな議論をさせていただき、政策づくりに当たっていろんな御示唆をいただいてまいりました。今のブッシュ元大統領の話なぞというのは非常に改めてしみじみと思い返したところであって、山本委員から安全保障についても御言及いただいて大変に有り難いことだと思っておるところでありますが。(略)

○参考人(鈴木宣弘君)1割の農地だけが非常に大きな企業で利益を得ても、その他ほとんど9割の地域農業が衰退するようなことにもしなったら、それは日本の地域創生にはなりませんし、安全、安心な食料を国民に提供し、国民の命を守ることもできなくなります。その点を考えた政策が必要だと思います。
 そういう意味では、私は、石破大臣が農水大臣のときにやっていただいたように、農政改革会議に、もう反対から賛成から、もうあらゆる方々の意見をきちんと聞く会議をつくって、そして総合的に何が必要かを決めました。今の産業競争力会議とか規制改革会議は、一部の利害関係者だけで決められる構造になっております。これをまず改善していただきたい、これをお願いしたいと思います。(略)

○山本太郎君 (略) 石破大臣、期待しております。是非、ブレーキを掛けていただきたいと思います。ありがとうございます。

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