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【坂本進一郎・ムラの角から】第28回 家族農業には永遠性がある2020年1月15日

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【坂本進一郎】

 家族農業に永続性はあるか? 「ある」ということがここでの答えである。なぜなら、今、世界の農場数の9割を家族農業か個人が占めている。そして世界の食料の8割を家族農業が生み出している。家族農業に人気がなければ、こんなに重宝がられないであろう。

 それなら人気の元は何か。それは第一に多くのの家族農業は地域密着型により家族で農業を運営しているが、その結果、自然のリズムを受け入れて農業を運営しているからである。地球温暖化で人々の不安が増している中ではいい試みだと思う。

 第二に人気の源は、便宜的に家族内無報酬が許されることである。特に、構成メンバーに他人の混じらない純粋に家族のメンバーの時、同じ作業なら、労働力の記帳は省略しても差し支えないだろう。また報酬をいくらにするか評価の伴う作業をしたときどう決めるのか。例えば、1人は委託苗代の交渉に行き外の4人は代掻きをしたとき、苗代の交渉と代掻きの質の違う作業をどう評価するのか。これらを数値に下ろすのは困難だ。決めることができるのはメンバーの間に信頼関係のある時だけだ。信頼関係が崩れたとき、家族農業も崩れる。
 それなら家族農業は新しいのか古いのか。その答えは断固として古くて新しいといえる。それなら、家族農業の起源はいつか。
 いつかは茫漠としてわからない。学説を追うしかない。私は今、中村吉治著『家の歴史』という本を持っている。なぜ持っているか。大学4年の時友人から「中村先生の講義は面白くないが、学界では有名な先生で講義を聞いた方がいい」と勧められ、卒業に必要な単位も取ったしそれなら聞いてみようという気になって講義を聞いた。講義は論理的でわかりやすかった。
 中村先生の主張点は集団を通して歴史を見ようとする点にある。しかし「集団が出現しただけでは人間の『社会』とはいえない」「組織ある集団となって初めて集団は社会として発展する」からである。例えば、もっとも単純な集団の場合を考えると、構成員による分業であろう。「壮年者は狩りや漁に出かけ、老幼は草木の採集をし、また男と女で仕事の分担をするというような組織活動である」。この場合、集団は生活に適合するか否かにより、集団の大きさが異なってくる。「つまり、集団は適当の数と質とを含めた構成でなければ存在できない」のである。ここに家族農業の走りが見られると思う。さらにここに消費の集団も加わる。消費はその集団にとって必ず来るものだ。それ故、構成員にとって家族農業は必要になる。
 家族農業が事件に巻き込まれたことがある。ローマ時代のグラックス兄弟の反乱だ。グラックスは貴族の大規模農場であるラティフンディウムを野放しにしてはローマは滅ぶ。ラティフンディウムを解体してコロヌス(家族農業)を創設すべきだと主張したが貴族に暗殺されてしまう。グラックス兄弟の夢は潰えたが、ここに家族農業が民衆に支持されていることがわかる。
 家族農業と言えば今思い出すこともある。満洲引き上げ後、母の実家で、農作業の手伝いをしていて垣根に赤い果実のなっているのに気が付き、竹棒で落としにかかった。ところがこの垣根は隣のものだということを知らなかった。そこで叔父に怒られた。しかし多くの農民は自給自足なので自然に生えているものは、採取してポケットに入れようとした。それが当時の風習だからだ。ただ、間違って隣のものを取ろうとして怒られたのである。

◆家族農業の10年

 今、2014年の国際家族農業年を経て、2019年から28年を国連の家族農業の10年とすることに決まった。何が目的なのか。農業規模でみると、新自由主義による格差拡大。それに伴う家族農業の存続の危機。しかも家族農業は地球の穀倉を担っている。家族農業の存続問題を引き起こすシステムを何とかしなければならない。次に地球規模でみると、資源の浪費がはなはだしい。このままでは地球はもたない。温暖化現象はその象徴なのであろう。地球の資源は有限だということを自覚しなければならない。これらの問題意識が結実したのが「国連の家族農業の10年」であろうかと思う。我々は生活者の視点で地球を見、考え行動しなければならないところまで来たようだ。


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