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【熊野孝文・米マーケット情報】家庭で料理をしないというショッキングな調査結果2020年1月28日

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【(株)米穀新聞社記者・熊野孝文】

 大手牛丼チェーンの売上が上向いたという新聞記事が出ていたので、久しぶりにその牛丼チェーンの店舗に足を運んでみた。とりあえず牛丼の並みとトン汁を頼んで席で待っていると対面に座った男性客が「頭盛り下さい」と注文した。頭盛りって何?と思って聞いているとご飯は普通で牛肉だけを大盛にして欲しいという意味だという事が分かった。

【熊野孝文・米マーケット情報】
 こうした事例を引き合いに出すまでもなく、食シーンは刻々と変化、そのスピードの速さにはついていけないというのが正直なところ。その変化の状況で最もショッキングだったのが、大手冷凍食品メーカーが新商品発表会の席で示した独自調査結果の内容。

 その調査とは、首都圏の女性を対象にした調査で、2018年と2019年の比較で、5ポイント前後ダウンした項目として「食の安全性には気をつかう」、「料理することが好きである」、「会話や雰囲気を楽しみたい」、「料理の味付けにはうるさい」があがっている。会話や雰囲気を楽しみたいという項ではダウンしたとは言え、まだ8割がそう思っているのでそれは良いとして、料理を作ることが好きである、料理の味付けにはうるさいという項目は5割を割り込んでいるのである。反対にアップした項目としては「料理する時間がない」、「お腹を満たすことが第一」などという項目があがっている。こうした調査結果からこのメーカーでは「食に対する関与やこだわりが薄れ始めている」と結論づけている。食い意地が張っている世代の著者としては食に関心がないなどということは考えられないのだが、そうした人が増えたということだけは認めざるを得ない。
 「食に関心がない」というのは生きものとしての人間の根源的な部分に危機感を感じるが、それは置くとして、調査は他にもあるのでそのことについても触れてみたい。
 その一つは女性と高齢者の就業率で2013年を境に両方とも急激にアップしている。同時に共働き世帯も急上昇した反面、専業主婦の割合が急激にダウン、「専業主婦という言葉は死語になった」とまで言っている。その結果どういうことになるかというと「家庭で料理を作らない」ということになってしまう。料理しないだけでなく皿を洗うのも面倒だということで、このメーカーは「お皿が要らないシリーズ」という冷凍食品まで出している。ついにそこまで来てしまったかという感じだが、このことは冷凍麺や冷凍米飯だけでなくパックご飯にも追い風になっている。
 パックご飯の購入比率は年を追うごとに上昇している。性別・年代別に1年以内にパックご飯を購入した比率では、最も高いのが20~34歳の男性で57.9%、次が50~64歳の男性56.4%、3番目が35~49歳の男性53.3%の順。男性がパックご飯を購入するというのは分かるような気がするが、次に多いのが50~64歳の女性で50.6%という高い比率である。この世代の女性のイメージとしては家でご飯を炊いている姿を思い描くが、そうした姿は過去のものになったということである。
 こうした女性層もターゲットにした「ちょっと少なめこしひかり」6食パックというリニューアル商品を3月1日から全国で売り出す。この商品はワンパック150gで従来商品に比べ30g容量が少ない。どこから150gという量が出て来たかと言うと、このメーカーが女性社員にご飯を茶碗に自由に盛ってもらい、その平均g数を計測したところ「153g」だったので、150gにしたとのこと。
 冒頭に記した「頭盛り」の牛丼のご飯のg数はどうなっているのかネットで検索してみると牛丼並み345g(ご飯260g、具材85g)、大盛430g(ご飯320g、具材110g)、特盛490g(ご飯320g、具材170g)になっているそうである。大盛と特盛のご飯の量が同じなのは気になるが、頭盛りを注文すると並みより100円高いが480円で食べられ、ワンコインで済む。価格だけをいうと発表会を開催したメーカーは3月1日から男性ワーキングシングルをターゲットにした1食300gの「Wチーズのチキンライス」「スパイシージャンバラヤ」「炎の炒飯」の3種類を新商品として販売する。店頭価格はいずれも1食198円。ウリは「この味! この量! この価格! 満足度120%、袋のままレンジOK」という文言が並んでいる。パックご飯と冷凍米飯でますます家庭でご飯を炊いて料理をする人が減りそうだ。


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(株)米穀新聞社記者・熊野孝文氏のコラム【米マーケット情報】

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