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【小松泰信・地方の眼力】日本経済まで沈没させる気か2020年2月19日

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【小松泰信・(一社)長野県農協地域開発機構研究所長】

 共同通信社は全国の有権者を対象に2月15、16日に世論調査を行った(対象者2038人、回答率50.5%)。「新型コロナウイルスの感染拡大による日本経済への影響」への質問に対して、「懸念している」38.5%、「ある程度懸念している」44.0%、「あまり懸念していない」12.1%、「懸念していない」4.8%の回答。懸念の有無で大別すれば、「懸念有り」82.5%、「懸念無し」16.9%、となっている。

地方の眼力・本文用画像(小松泰信先生)◆GDP 年6.3%減 経済「危険水域」に

 2月17日の夕刊各紙は、内閣府の発表に基づき、2019年10~12月期の国内総生産(GDP)において、消費税増税や自然災害によって、大幅なマイナス成長に陥ったことを伝えている。消費税増税対策にもかかわらず、駆け込み需要の反動減を防げず、20年1~3月期も新型肺炎の影響で、訪日中国人観光客の支出の減少が成長率を押し下げ、中国での生産活動や消費の低迷による日本企業の対中輸出や設備投資の減少を予想する。さらに、日本国内でも外出などの自粛ムードが広がり、消費を冷やすことを想定し、日本経済が「危険水域」に入り込みつつあるという認識を示している。


◆緩やかに沈みつつある

 日本経済新聞(2月18日付)の社説は、「日本経済は予断を許さぬ局面を迎えた」と危機感を募らせ、「今回は足腰の強さが問われる」とする。「当面、新型肺炎がインバウンド需要の激減にとどまらず、国内消費の手控えにもつながるのは必至だ。中国経済や国際物流の混乱に対応した、懐の深い代替戦略の成否も企業業績を左右する」が、「世界経済が一気に腰折れすると過度に悲観するのは時期尚早」とのこと。「米国は消費や雇用が力強い。劇的に進む経済デジタル化への期待感は揺らいでおらず、株式相場はなお高値圏を維持し、金融緩和の余地を残している。中国当局も景気のてこ入れへ政策総動員で臨むだろう」というのが、その理由。その上で、「新型肺炎の周到な封じ込め」を喫緊の課題にあげ、「企業経営者と政策当局者の実力」を問うている。
 毎日新聞(2月18日付)の社説は、「昨年7~9月期の成長率は0%台と増税前から消費が振るわなかった」として、「増税に加え、台風や暖冬が影響した」とする政府の説明に異を唱えている。さらに、「消費底上げが後回しになってきたアベノミクスの問題点を直視すべき」とするとともに、「新型肺炎の影響が広がり、最近はマイナスが続くとの厳しい見方が増えている」ことを紹介する。そして、「春闘で賃金を積極的に上げる」ことで、消費下支えを担うことを企業に求めている。
 産経新聞(2月18日付)の主張は、「いまだに政府が景気認識を『緩やかに回復している』としたまま」であることに違和感を禁じ得ないとし、「実体経済の変調を踏まえて従前の景気認識を改め」、万全の対策を大胆に講じることを求めている。
 読売新聞(2月18日付)の社説は、政府が「緩やかに回復している」との景気判断を維持しているものの、「主要な経済指標から算出される景気動向指数の基調判断は、5か月連続で『悪化』を示す」としたうえで、「賃金や設備投資が抑えられ、内需が冷え込む事態は避けねばならない」とする。


◆悲観的にならざるを得ない地方経済

 「消費税増税、気候変動、米中対立のトリプルパンチが効いた。新型肺炎の影響も出始める中、雇用への波及を全力で防ぐべきだ」とする東京新聞(2月18日付)の社説は、「雇用については大企業の経営者に強くくぎを刺しておきたい」として、「景気状況に動揺し、足元の決算対策に向けた安易なリストラや下請けへのコスト転嫁を行うことは経済全体を収縮させるだけだ。より高い視点に立った経営判断」を求めている。
 北國新聞(2月18日付)の社説は、「北陸は製造業の生産が弱含み、日銀の地域経済報告(さくらリポート)で景気判断が引き下げられた。石川県経営者協会が会員企業のトップに行った今年の景気見通しに関するアンケートによると、昨年と比べて『良くなる』と回答した企業は、全体の9.5%にとどまり、過去10年で3番目に低い数字だった」とした上で、「今年の1~3月期も新型肺炎の影響などでマイナス成長が続く可能性がある。景気の減速感はこの先、より鮮明になってくるのではないか」と、地域経済の実態に基づいた悲観的予想を立てている。
 政府が、「昨年末に組んだ大型経済対策の効果が4~6月には出てくると期待している」ことについても、「4月から『働き方改革』の残業規制が中小企業にも適用されると、残業代は減るだろう。そうなれば個人消費が落ち込み、経済対策の効果が相殺されてしまいかねない」として、「さらなる景気の落ち込みに備え、東京五輪後を見据えた新たな経済対策を検討すべき局面」とする。
 さらに、厚生労働省が発表した毎月勤労統計調査(速報)によれば、昨年の労働者1人当たりの給与総額が、「月平均で前年比0.3%減」、「名目賃金から消費者物価指数を除いた実質賃金も前年比0.9%減とマイナスに転じている」ことから、「給与総額がマイナスに転じた理由は、大企業だけとはいえ、残業代の削減が響いたからではないのか」とする。そして、「世帯収入が増えなければ、GDPの6割を占める個人消費は冷え込み、景気は上向かない。消費税増税と働き方改革という二つのマイナス要因がGDP悪化の背景にある」とする。
 南日本新聞(2月18日付)の社説も、「働く50代男女の80%超が『定年後も働かなければ不安』と感じ、ほとんどの人が老後の生活資金を理由に挙げた」という民間調査結果から、消費の弱さの背景として、「社会保障などに対する国民の根強い不安」をあげている。さらに、「金融庁の審議会が昨年、老後に2000万円の蓄えが必要とする試算を公表したこともあり、消費者心理を冷え込ませたと考えられるだろう」とする。政府に対しては、「国民の将来不安解消とともに、内需拡大につながる方策が欠かせない」と提言する。


◆もうお前は詰んでいる

 冒頭で取り上げた世論調査の続き。安倍内閣について、「支持」41.0%、「不支持」46.1%。「支持」する理由は、「経済政策に期待できる」が10.0%。「不支持」の理由は、第1位が「首相が信頼できない」37.1%、第2位が「経済政策に期待が持てない」25.2%。彼の経済政策、つまりアベノミクスには多くの人が期待していない。
 さらに、「カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備を進めてよいか」については、77.5%が「見直すべきだ」とする。「『桜を見る会』に関する安倍晋三首相の説明」については、84.5%が「説明は不十分」とする。
 「モリ・カケ・サクラ」など、さまざまな疑惑で「もうお前は詰んでいる」。このままでいくと、日本経済までも詰ませて、日本を沈没させること必至。彼に引導を渡すべき時が来たようだ。遅いぐらいだが。
 「地方の眼力」なめんなよ



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小松泰信氏のコラム【地方の眼力】

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