【小松泰信・地方の眼力】コロナが見せる風景2020年2月26日
2020年2月25日の衆議院予算委員会第六分科会において、新型コロナウイルスの政府の会議を欠席して、地元の新年会に出席した小泉環境相は、小川淳也氏(立憲民主党)の「謝罪」要求に応じなかった。
小川「反省はするが謝罪はしないという立場を貫かれているように受け止めている。これ、率直に謝罪した方がいいんじゃないですか」
小泉「謝罪をということだが、私が横須賀に戻った事実は謝ったところで変わらない。……してしまったことは変わらないので、これから同じようなことがないように、しっかり取り組みたい」と、すっとぼけたご回答。
例えば、コマツがコイズミを殴った。謝罪を求められたコマツが、「反省はしている。しかし謝罪しても殴った事実はなくならないから謝罪はしない。今後同じような行為をしないように努力するのみ」と言っても、世の中通りません。
◆洋七師匠、GAPと東京オリ・パラを斬る
そう言えば、小泉氏が自民党農林部会長の時に張り切って喧伝していたのが、GAP(農業生産工程管理)。
日本農業新聞の人気コーナー「島田洋七の笑ってなんぼじゃ!」(2月23日付)が、東京オリンピック・パラリンピックの選手村で使う食品をテーマにしていた。
洋七師匠は、まずGAP認証食材であることが義務付けられていることにツッコミを入れる。
「もちろん、安全で安心できる農産物を作ることは大事なこと。けど、この認証をもらうのには、多いものでは200以上にわたるチェック項目をクリアせんとあかん。認証を受けている国内農場数は全体数のごくわずかという状況らしい」、その理由は、「審査費用や登録料、それに時間も手間もむちゃくちゃかかるからや。そら、個人でやってる小規模な農家は、そんな認証取れへんよ」と、バッサリ。
返す刀で、「だいたいあんな暑い時期にオリンピックをやるのもおかしいわ。マラソンを無理やり札幌で開催したりせんと、もっと涼しい時期にずらしたらええやん。......ちっとも選手ファーストちゃうやん」とまで、斬り込む。
そして「『参加することに意義がある』というてた時代から、えらい遠いとこに来てしもたように思う。メダルの数を競うのもアホらしいよ。本来のオリンピックに立ち戻って、もっと選手のことを考えた大会になってほしいと思うよ」と、とどめを刺す。
偶然なのか合わせたのか、同じ紙面で論説もこのテーマ。
その趣旨は「五輪に向けた工夫や努力、挑戦を大会で終わらせず、次世代につなぐ日本の『食と農のレガシー(遺産)』づくりの契機にしたい」に凝縮されている。
まず茨城県が「県GAP第三者確認制度」を作り、認証農場を増やしてきたことを紹介し、「GAPは選手村などで使う食材の条件で、既にJAなど27団体・個人、延べ34品目が認証を取得した」ことを伝えている。そして大会期間中集まる選手や観客数が、1000万人超と見込まれることから、「一大商機に違いなく的確・迅速な対応が重要だ」が、一過性で終わらせるのは惜しいので、「東京五輪後を考える視点を持つことが大切」と、発破をかける。
洋七師匠と同じように近代五輪の父、クーベルタンの言葉をあげるが、残念ながら捻りがない。
「農業関係者は多様な形で主体的に関わってほしい」「東京五輪を通じて次代の農業に何を生かし、次代の担い手に何を残し、消費者に何を伝えるか考えることは重要だ」、最後は「日本の食と農にとってかけがえのない経験と財産になる」と、アベやモリが泣いて喜びそうな腑に落ちないオチ。おもろうない! 東京五輪と「日本の食と農のあり方」は無関係。
◆勉強して、「踊るあほ」役人で人生を終えるのですか
日本農業新聞(2月24日付)には、「日本の食と農のあり方」についての政策を提案する農水省が、農業政策に自由で柔軟な発想を取り入れることを狙って始めた、若手職員らから政策アイディアを募る三つの試みを伝えている。
(1)政策オープンラボ;政策立案を希望する職員が自らの構想を発表する場として、2018年度にスタート。アイディアが幹部職員に採択されると、業務時間の1から2割を調査や分析などの活動に充てることができるとのこと。これまで九つのプロジェクトが対象になったが、現時点で政策として採用されたことはないそうだ。
(2)政策のタネコンテスト;自ら思い付いたアイディアを自由に発表できる場。19年6月に始めてこれまで2回開催、38件の応募。「企画の能力を高めるということが、われわれ行政官には必要」と指摘し、政策立案の発想力を磨くことを課題にあげたのは、2回目に出席した末松広行事務次官。
(3)チーム2050;若手職員を中心に16年に発足した自発的勉強会。コンセプトは「50年の未来を見据える」。農家グループや経団連などの外部組織とも交流し、2月上旬には、JA全農との意見交換会を企画とのこと。「外部と幅広く対話し、柔軟な発想を養うことにつなげたい」とは同省政策課。
どれも、これも、悪いことではない。人間一生勉強。しかし次のような発言をする先輩官僚が上司だとすれば、この努力が浮かばれる日は遠い。
同紙(2月25日付)において、山田優氏(同紙特別編集委員)が伝える現役農水官僚らの内々話が興味深い。それによれば、「今の輸出政策の怪しさは重々承知しつつ、政権への忖度でものが言えない。逆に輸出と名付ければ、予算はたっぷりと降ってくるバブル状態。『同じあほなら踊らにゃ損だ』」と、自虐的に語る同省幹部もいたそうだ。
悲しいかな想定内。しかし冷静に考えてみよう。
「踊るあほ」には、それなりの処遇が期待される。それを佐川宣寿氏をはじめとする嘘つき官僚たちのその後が教えている。しかし、踊ったことが、農業、さらには第一次産業にもたらす災厄は長期に及ぶもの。場合によっては、取り返しのつかない事態をもたらすことも容易に想定される。矜持を捨てた、罪深き官僚を上司に持つ若き役人たちが、本当に学ぶべきは何か。それこそが問われている。少なくとも「オクハラ病」が完治しない限り、農水省に多くを期待することは出来ない。
◆コロナ拡大よりキャンセル料が怖いタロウ
またまた同紙(25日付)ですが、新型コロナ拡大で自民各派が集金目的の政治資金パーティーの開催に苦慮していることを伝えている。約3000人を見込む麻生派は「キャンセル料が高くつく」(幹部)として、現時点では開催に踏み切る構えとのこと。あの親分も、コロナ拡大より自腹切るのが怖いのか。あそうだ、全員マスクすればいい。反社の方々も堂々と来られますからネ。
「地方の眼力」なめんなよ
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