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【森島 賢・正義派の農政論】野党の新型肺炎対策が見えない2020年3月2日

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【森島賢】

 新型肺炎が猖獗を極めている。それなのに政治に危機感がない。政府、与党にもないし野党にもない。ここは野党の出番で、政府の無策を攻め立てる絶好の機会だが、その機会を逃している。
 国会での議論を聞いていると、野党は政府の対策の端々だけを責めているだけで、野党が政権を奪って対応に当たればどうするか、という議論がない。
 だから、野党は国民を唸らせることが出来ない。報道各社の世論をみると、政府支持率は下がっているが、野党の支持率は上がらない。国民は、政府の対策の枝葉末節に不満をもっているのではない。政府の姿勢に対する、やり場のない根本的な不満をもっている。
 野党は、枝葉末節の追及ではなく、政府の対策を、その根幹のところで追及しなければならない。国民は、それを期待している。だが政治は、ことに野党はこの期待に応えていない。

 政府の対策の根幹のところに何があるか。政府は、感染者を隔離できる病床が充分にないという。それなのに、それを増やそうとしない。

 そのため、政府は何をするか。

 第1は、実際の感染者数をみようとしないで、政府が公認した人だけを感染者にする。いわば公認の感染者数にする。これでは公認されない、しかし実際の感染者は、隔離さえされない。だから感染源になって他の人に感染し続ける。

 そのために、政府は感染者か否かの検査を極端に制限している。政府は検査機器の能力が少なく、1日に3800人しか検査できないという。だが専門家は、この推定は極端な過少推計だという。しかも、実際の検査人数は960人である。能力の4分の1しか実際に使っていない。

 この検査に保険を適用できるようにして制限を緩め、実際の感染者数を正確に把握せよ、という25日の野党の山井和則議員の要求に対して、ようやく政府は来週中、つまり7日までに検討することにした。12日間かけて検討するというのである。

 その一方で、26日に安倍晋三首相は「ここ1~2週間が極めて重要な時期」といっている。つまり、重要という期間の大半を使って検討するというのである。その間に感染は広がっていく。これでは、大勢の実際の感染者は放置されてしまう。

 もう1つの問題は、軽症の感染者は自宅で療養せよ、という基本方針である。

 こんどの新型肺炎は、自覚症状のないような軽症の感染者も、強い感染力を持っているという。それなのに隔離しないというのである。理由は、隔離できる病床数が少ないからだという。

 これは、感染者だけでなく、その家族を犠牲にしても、隔離病棟の新設はしない、という冷酷な対策である。

 ちなみに、中国の武漢では、1000人規模の隔離病棟を2棟、1週間足らずの期間で新築したという。

 以上のように、政府の対策の根幹にあるのは、繰り返すが、隔離病棟を増やそうとしない政府の姿勢である。

 野党は、この根幹を批判しなければならない。そうして患者という究極の弱者の側に立って、もしも国民が野党に政権を移し、対策を任せれば、隔離病棟を抜本的に増やし、重症、軽症を問わず全ての感染者を、そこで安心して治療することを約束することである。

 ここで言いたいことは、野党が政権を奪取するまで、感染者は政府の対策を、そのまま認めて忍耐せよ、ということではない。

 野党の、この基本対策を国民と共に練り上げて、政府にその実現を迫ることである。練り上げるために、野党を中心にし、国民と共に「新型肺炎対策会議」を作って、検討を重ねることである。看板は新型肺炎相談所でもいいだろう。それは、やがて「よろず相談所」と書き換えてもいい。そしてそれは、次の総選挙で「野党統一選挙事務所」と同居することになるだろう。

 もちろん農業者は、野良着のまま、土足で出入りすることになるだろう。
(2020.03.02)


(前回  新型肺炎が招く医療崩壊の危機

(前々回 政治にAIを利用せよ


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