【小松泰信・地方の眼力】アベ地獄2020年3月4日
「弱っちゃったよ。キャンセルが続いてさ。ウチだけじゃないとは思うけど。これ一ヶ月続いたら、金借りて、しのぐしかないかな」と、窮状を語るのは飲食業を営む息子。かける言葉に窮して「経営者の腕の見せ所だな」と、取って付けたような言葉しか掛けられない自分が情けない。嗚呼、無能。
しばらくして、彼から「トイレットペーパーが無い。有るならとりあえず買っといて」という電話。買い出しから戻った妻の第一声は、「どこにもなかった」。嗚呼、紙様。
◆子分たちにも伝わらない「思い」って何
「トイレットペーパーやティッシュペーパーの原材料がマスクに使われるとのデマが元で、買い占めに走る動きが県内でも出ている。安倍晋三首相は新型肺炎の拡大を受けた29日の会見で、自らが決断した全小中高校の臨時休校について、子どもの集団感染を起こさないためとして、国民に理解を求めた。その上で、拡大防止へ『あらゆる手段を尽くす』と繰り返した。首相が適切なリーダーシップを発揮することは必要だが、まずは自身の独断が混乱を招いたことを深く反省すべきだ。今回の失態を教訓に、国民を置き去りにすることなく、感染の終息へ着実な対策を講じてもらいたい」と、猛省を促すのは新潟日報(3月1日付)の社説。
当コラム、これまでの所業の数々から、安倍氏の言動は一切信用しない。故に、「私の責任で万全の対応を取る」「結果責任から逃れるつもりは毛頭ない」といった彼の「思い」は、「嘘つきがまた嘘を重ねてら~」ってレベル。
その証拠に、感染拡大を抑えるために彼が大規模イベントの自粛を呼び掛けた2月26日に、首相補佐官である自民党の秋葉賢也氏は地元で政治資金パーティーを開いていた。それも、政府の専門家会議が自粛例に挙げる立食形式で。
毎日新聞(3月3日付)によれば、安倍首相は秋葉氏を直接注意するとともに、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部の会合を欠席した小泉進次郎環境相、森雅子法相、萩生田光一文科相の3閣僚に対しても、菅義偉官房長官を通じて注意したそうだ。
また、政府の対策本部が「感染しやすい環境に行くことを避ける」などとした基本方針を取りまとめた2月25日夜、妄言やヤジで資質に問題を抱える杉田水脈衆院議員が政治資金パーティーを開催。そこに、西村康稔経済再生担当相、北村誠吾規制改革担当相、竹本直一科学技術担当相の3人が雁首を揃えていたことも認めた。
要するに、安倍氏の「思い」は子分たちにも伝わらぬ「軽い」代物。
◆東京事変、自粛大変
東スポWeb(3月2日、17時10分配信)は、政府の要請を受けて、芸能界でもEXILEやPerfumeらが次々とライブを中止・延期する、自粛ムードの中、椎名林檎さんがボーカルを務める「東京事変」が2月29日、東京国際フォーラムでのライブを"敢行"したことを取り上げている。注目すべきは、次の指摘。
「公演を中止・延期したら、それこそ生活が成り立たず、倒産・破産に追い込まれる人がいることも忘れてはいけない。芸能関係者は『今回のようなライブを自粛した場合、保険が下りる可能性は低い。となると、体力のある芸能プロダクションならば何とかしのげるだろうが、小さいプロダクションとなると、キャンセル料などを払っていたら体力的にもたない。潰れるところも出てくるのでは』。これからも難しい判断を迫られるケースは増えていくはずだ」
自民党の皆さん、とくに安倍一族の皆さん「隗より始めよ」。わかるかな?
わかんねーだろうな~バカだから。
◆ハナはどうなる、ミルクはどうする
日本農業新聞(3月3日付)は一面で、洋花を中心に相場の下落が続いていることへの不安の声を紹介している。
「式は来年を見据えての延期が多く、見通しが立たない。注文は当初の半分ほどになるかもしれない」(東京の仲卸業者)。
「市場は閑散として物が余っている。生け花の展示会も中止が相次ぎ、......枝物やギフト関係も厳しい」(東京の生花卸)。
「洋花をはじめ今後の販売に打撃が大きい」(JAあいち経済連花き課担当者)。
「今のところ計画通りの出荷を続けているが、今後の価格動向が心配だ」(浜松市ガーベラ生産者)。
西日本新聞(3月3日付)も学校給食の牛乳を納入している地場メーカーが、頭を抱えていることを伝えている。
12万本分を受け持つ永利牛乳(福岡県太宰府市)は、出荷先の7割が学校給食。「経営的に大打撃だが、それだけでなく乳牛を育てる酪農家にまで影響が及ぶのは必至だ」(長谷川敏社長)という。福岡県の場合、学校給食の牛乳納入は、大手2社と地場3社で分担。夏、冬、春の長期休暇の際は、酪農団体とも連携した計画生産により需要減に対処しているとのこと。乳牛は搾乳を止めると乳房炎を起こして死ぬ恐れが高くなるため、生乳の生産調整は難しく、乳製品加工に回す分を調整して需給バランスを取るのが通例。しかし、今回のように、少なくとも......約3週間分の需要が全国一斉になくなる事態は想定しておらず、加工部門での即座の受け入れは困難。行き場を失った生乳は廃棄せざるを得ない状況になりかねないそうだ。「学校給食への安定供給という使命感で、廃業した同業の受け持ち分まで努力して引き受けてきた業者も多い。先行きが心配だ」とは長谷川氏。
◆やはり不備でずさんな「一律休校」
東京新聞(3月3日付)は、「専門家から意見聴かず」「文科相には知らせずに」「高精度検査数伸ばせず」「専門家会議議事録なし」の四拍子揃った政府対応の不備を告発している。
まず、安倍晋三首相が休校要請の是非について「直接専門家の意見を聴いていない」と語り、萩生田光一文科相は、「全ての準備をすることにはかなり無理があった」と配慮不足を認めた。
加藤勝信厚労相によれば、検疫所など公的機関とは別に民間や大学などで行える検査が、現在の1250件から、3月10日に1845件まで増える程度で、高精度で検出するPCR検査の受け入れ能力は大きく伸びないとのこと。
さらにこれまで3回開かれた政府対策本部の専門家会議のうち、2回は議事録を作成していなかった。
2月29日の記者会見で安倍氏は、「率直に申し上げて、政府の力だけでこの闘いに勝利を収めることはできません。最終的な終息に向けては、医療機関、御家庭、企業、自治体を始め、一人一人の国民の皆さんの御理解と御協力が欠かせません」と語った。
四拍子揃った、不備でずさんな「一律休校」や自粛要請で大きな痛手を被っている国民に、何を理解し、どのような協力をしろというのか。1時間にも満たない会見で、質問を求める多くの挙手を無視して私邸に逃げ帰る輩。彼を信じる者に待ち受けるのは、アリ地獄ならぬアベ地獄。そこに落ちたくないのなら、彼とその子分たちに政治の世界から去っていただくしかない。
「地方の眼力」なめんなよ
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