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【リレー談話室・JAの現場から】温暖化への緊急対応2020年3月9日

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【JCA 客員研究員 伊藤 澄一】

 この2月に今年11月の気候変動枠組条約締約国会議(COP)の開催国イギリスから「COP26特使」が日本にやってきた。

◆COP26特使の要請
マートン特使の来日は、石炭火力発電を国内と途上国向けに推進している日本の方針転換と再生可能エネルギー投資への要請であった。とくにCO2のより高い削減目標と排出ゼロに向けた計画をもってCOP26に来てほしいとインタビューに答えた。

昨年12月のCOP25で、小泉進次郎環境大臣は苦渋の演説をした。「国際社会からの日本の石炭政策に対する批判は認識している」、「日本の石炭姿勢に進展はないが、自分も多くの日本人も気候対策の必要を信じている」と語った。会場の識者は、今までにない姿勢は感じられ、その無念さを滲ませた演説は印象的であったと報告している。

2015年のCOP21での画期的な「パリ協定」は、すでに産業革命前より1℃上昇した世界の平均気温を2℃未満(できれば1.5℃)に抑えるためのCO2削減の大枠合意で、2020年からの実施である。だが地球の温暖化は急速に進み、パリ協定による各国の目標数値を積み上げても足りない。2030年には1.5℃に達してしまうという。昨年の国連気候変動会議やCOP25では、各国にこの2月中に新たな削減目標の報告を求めている。その動きとして、日本にはパリ協定に基づく、2030年までのCO2の26%削減目標(2013年比)の緊急の引き上げ要請となったものだ。

◆エネルギー革新
日本のエネルギー政策(E政策)は安全性を大前提に、安定供給、経済性、環境保全の3点だ。電源構成別の推移は、以下のとおりである。(東日本大震災は2011年)

電源構成別の推移


 大震災後の日本のE政策は、石炭火力をベースに天然ガス(LNG)に依存している。原子力はゼロになったが一部再稼働した。再生可能エネルギー(再生E)は、増加傾向だが少ない。10年後の2030年は石炭火力とLNGを漸減して、原発再稼働と再生Eの主力化を目指している。課題の石炭火力発電所は大震災後に50基の新設計画のもと、15基が稼働、15基の建設工事が進む一方で、13基がコスト問題や住民の反対運動などで中止となっている。

 日本のE政策、とくに石炭火力の見直しは急務となっている。CO2の排出量は石炭100に対して石油は80、LNGは50程度である。これらの化石燃料は自給・コスト・CO2の面で課題がある。原子力は国民が支持しない。CO2排出0の太陽光・風力、バイオマス・小水力などは自給的かつ分散型の地域資源であり、太陽光なども数年で石炭火力のコストを下回るとされ、投資拡大が加速するだろう。

 識者によれば「世界トップ10%の人々が排出するCO2は全体の半分を占めるが、下位半分の人々が占める排出量はわずか10%に過ぎない。トップ10%の人々がヨーロッパの平均的な個人と同じ程度のCO2排出量にまで削減すれば、全世界のCO2排出量を1/3に減らすことができる」という。パリ協定離脱のアメリカ、CO2排出量占率28%の中国、そしてインド、ロシアに次ぐ日本(3.5%)などの大国・先進国は、温暖化による気象危機に責任がある。

 SDGs運動とも連動して、世界のビジネスも脱炭素社会を前提とした競争になっていく。炭素関連企業の排除、炭素産業への投資引きあげも始まるという。グレタ世代が世界市民として社会の中核となるとき、彼女らに支持されるか否かが経済や企業活動、さらには政治と民主主義の行方を決めるだろう。温暖化への緊急対応とSDGs運動では、地域分散型の農業など第一次産業と協同組合の役割が大きく、世界との同時テーマになっていく。

 東日本大震災から9年。日本は気象危機と南海トラフ地震などの天と地の巨大リスクに直面している。命だけは守ろうという事態だ。今それが起きたらという心の訓練だけは続けていきたい。

 

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