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【小松泰信・地方の眼力】打てる手は打て2020年4月1日

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【小松泰信・(一社)長野県農協地域開発機構研究所長】

 共同通信社は全国の有権者を対象3月26日から28日に世論調査を行った(対象者2013人、回答率51.3%)。
 新型コロナウイルスに関連する問いへの回答概要は次の通りである。
 「今後の感染拡大」については、「広がる」74.5%、「収まる」21.1%。
 「最も望ましい緊急経済対策」については、「消費税率の引き下げ」43.4%、「現金給付」32.6%、「商品券給付」17.8%。

地方の眼力・本文用画像(小松泰信先生)◆3密ならぬ3ミス
 現状:売上は、3割程度減。損益分岐点をうろうろしている。他の飲食店に比べたらいい方かもしれないが、今のままなら悪くなるのは明らか。従業員の雇用は継続している。しかし、いつまで雇用を継続できるかは分からない。
 営業自粛要請:売上もしくは人件費などに関する補償があれば、要請に応えて休業する。しかし、何の補償もないのに休業はできない。なぜなら、売上が無いのに、給料は支給しなければならないから。当然潰れる。
スピード不足:安倍首相は決断力不足。判断に時間がかかりすぎ。会見でも具体的なことは何も決まっていない。経営判断をするための情報不足。舵取りができない。
 助成金:社会保険労務士に問い合わせたら、平時における助成金の支払いは5~6ヶ月後。最短でも3ヵ月後。今回もこのペースだとすれば、入金された時には潰れている。実効性なし。
 以上が、飲食業を営む息子へのヒアリング概要。
 要約すれば、迅速性なし、具体性なし、実効性なし、3拍子揃った、3密ならぬ3ミス対策。


◆地方紙が伝える現場の悲鳴
 西日本新聞(3月29日付)は、「地域経済を支えてきた訪日外国人客はクルーズ船の運航停止などで2月は半減し、3月以降はさらに落ち込む見通しだ。九州でも観光地のホテルや旅館、貸し切りバス会社、飲食店、小売店などから悲鳴が上がる。......。この事態が長引けば、事業停止に追い込まれる中小零細企業や力尽きる個人事業主が続出する恐れがある。そこに手を差し伸べ、雇用や生活を守るセーフティーネットこそが今求められる」として、「雇用調整助成金の要件緩和や運転資金の融通、収入が途絶えた個人事業主への当面の生活資金貸し付けといった、目の前の危機を乗り切るための対策」を強調している。
 神戸新聞(3月30日付)は、「死者数が急増し市街地封鎖に至った米国では、2兆2千億ドル(約237兆円)規模の経済対策法が成立した。所得制限を設けた上で国民に最大1200ドル(約13万円)を給付する。ドイツなども相次いで巨額の対策を講じている」と、米独の迅速な対応を紹介し、「国民生活を支えるのは財政の重要な役割」とする。
 また「国民への現金給付」を柱のひとつにあげ、迅速性と公平性を考慮して「財源を有効に活用できる枠組みを練り上げてもらいたい」と要望するとともに、「雇用の維持は社会不安の抑制にも直結する」ため、「解雇や雇い止めなどの横行」への監視強化を求めている。
 中国新聞(3月30日付)も、「政府の見通しでは、緊急対策を盛り込んだ補正予算案が国会で成立して、予算措置をすると、現金給付は5月中になる。そこまで困窮者たちを待たせるのか。急ぐべきである」と、迅速な対応を求めている。
 また、「業績が悪化している中小企業への支援も待ったなし」として、「融資枠の拡大で、資金繰りに苦しむ中小企業の救済を図らなければならない」とするとともに、3月下旬の厚生労働省の調査で約900人が解雇されたことから、「従業員を解雇せず休業にとどめた企業に助成金を支給する『雇用調整助成金』制度を幅広く活用してもらう必要がある。補助率のアップをはじめ制度の拡充や、手続きの簡素化など」を求めている。
 さらに消費税についても、「半年や1年に限って税率を下げたり停止したりすることも含めて、メリットやデメリットを検討すべきだ」と、踏み込んでいる。
 沖縄タイムス(3月31日付)は、沖縄県の米軍嘉手納基地において米兵2人の感染が判明しているにもかかわらず、「基地の外に出たかなど直前の行動は明らかにされていない」ことに疑問を呈する。現在、米国は「パンデミック(世界的大流行)の中心地」であるとして、「米兵の立ち寄り先に不特定多数が集まる場があったのなら情報を積極的に開示すべきだ。国内事例として県との情報共有が不可欠である」と、米軍基地を抱えるが故の重い課題を指摘する。


◆言行不一致内閣は信用でき内閣
 その沖縄に菅義偉官房長官が3月29日に訪問したことを、TBS NEWS(TBSの動画ニュースサイト、3月29日17時16分)が報じている。
 菅氏は、観光業界や経済団体の関係者との意見交換に際し、「この場をしのぐことが次のV字回復・反転攻勢につながるので、皆さんから忌憚(きたん)のない意見を言っていただくと大変ありがたい」と語っている。また、那覇市の国際通りを視察し現地の方と交流している。
 その頃、多くの東京都民、さらに首都圏民は外出の自粛要請に従っていた。臨時休業せざるを得ない業者も多数存在した。そんな時も時、都市封鎖の必要性が取り沙汰されている東京から、内閣官房長官がノコノコ沖縄に行き、マスクもせずに3密状態の意見交換会に出席したり、不要不急の町歩きをしている姿は、言行不一致内閣のスポークスマンの面目躍如そのもの。


◆悪い予想は良く当たる
 特に、安倍政権においては、悪い予想はよく当たる。冒頭で紹介した共同通信社の世論調査で4分の3の人が、今後の感染拡大を予想している。だからこそ、「緊急」の名に値する対策が求められている。
 AFP=時事(4月1日5時14分配信)によれば、米軍の空母「セオドア・ルーズベルト」の艦長が国防総省に対し、空母内で新型コロナウイルスの感染が拡大し状況が制御不能になっているとして、乗組員の隔離に向けた迅速な支援を要請した。
 毎日新聞(4月1日8時58分)によれば、陸上自衛隊秋田駐屯地(秋田市)に勤務する20代の男性隊員が新型コロナウイルスに感染した。陸上自衛隊で初の感染確認。
 もう、瀬戸際で食い止めることはできなかったことを素直に認め、出し惜しみすることなく打てる手は打つ。それしかない。
 「地方の眼力」なめんなよ

 

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

小松泰信氏のコラム【地方の眼力】

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