コロナ災禍と我が経営 島根県農協青年組織協議会会長・(有)アグリみと 草野拓志 通販で新たな販路を開拓【リレー談話室・JAの現場から】2020年5月25日
会長職2年目に入ったところですが、今回のコロナウィルスの猛威、緊急事態宣言により島根県県青協も、会議の自粛、研修会の自粛、活動の自粛をしており、実質活動が停滞しているところです。
私自身の農業経営においても、このコロナウィルスによる一連の騒動の影響は大きく、学校給食、飲食店に収めるはずだったお米、野菜の納品の取りやめ、感染防止のため、イチゴ狩りの無期限中止など、本当に大変な状況になりました。3月の段階では休校といっても4月にはなんとかなるだろうと楽観的に考えていましたたが、4月7日の緊急事態宣言を発令でとうとう大変なことになりました。
何か手をうたなければ、どうすればいいだろうと考えた時に、コロナの影響で安全に買い物に行けない主婦のため、また買い占めなどで都市部は野菜が品薄になっているため、食品宅配事業が伸びているというのを思い出し、すぐにオンラインショップのサイトを開設し運営を始めました。
当初はお米、葉物野菜、イチゴの販売でしたが、認知度の低さとショップとして品目も少なかったのでなかなか売れませんでした。どうすれば通販が売れるだろうと考え、大手の野菜通販や口コミ評価の高い宅配事業のリサーチや商品の取り寄せを行い、研究や課題を検討しました。お客さまに喜んでもらえる商品をと、ひたすら考えブラッシュアップしました。
そしてオンラインショップを始めて10日目に「お米と旬の野菜詰め合わせセット」という商品をつくり、販売を始めました。この商品はお米と旬の野菜が12、13種類、こだわり卵、イチゴが入り、生産農家お薦めの簡単レシピや地域情報を入ったお米野菜セットです。
自社だけでは多種多様な野菜を揃えることは難しいので地元直売所と連携し、こだわり農家さんの野菜を集めていただき、自社のお米、野菜、イチゴと抱き合わせで一つの商品にします。
最初は付き合いのあったお客さん数名からの注文でしたが、紹介やSNSでの投稿を重ねて少しずつですがお客さんが増えています。そして嬉しいことに、一度目を注文したお客さんからの二度目のリピーター注文が入り始めました。本当にありがたいことですし、人の繋がりの大切さを感じています。
この商品が売れることで、販売に困っていた自社も、自粛で来店が減って困っていた地元直売所も自宅待機で買い物に困っていたお客さんも、全てが得する「三方良し」の商売になると思います。自分が作った商品がお客さんに選ばれるの本当に嬉しいことです。オンラインショップをはじめて一番嬉しかったのは、東京のおばあちゃんのお客さんからお礼のメールが来たことです。
このお客さんの野菜セットには「うど」を入れたのですが、うどの酢味噌和えのレシピや酢味噌の作り方を調べて書いたレシピを同封したら「うどの酢味噌和えがとても美味しかったです」とのことでした。当たり前のことですが忘れがちなこと、商売とは相手の期待に応えることなのだとこの一件を通して考えさせられました。
野菜が美味しいことはもちろんですが、レシピやこだわりなど野菜プラスアルファの情報を付け加えることがお客さまの満足に繋がります。お米、野菜セットを始めて売れ行きは順調ですが、通販事業を始めたからといって経営が改善したわけではありませんが、結果としてコロナウィルスの状況により通販事業を始めて販売先が出来たのも事実です。
松下幸之助の「好況良し、不況なお良し」の格言にもあるように、好況はとてもいいことですが不況の中でどう考え、どう動くか、自身の経営と向き合い見つめ直すチャンスがあるのだと思います。
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