【浅野純次・読書の楽しみ】第51回2020年6月15日
◎毎日新聞取材班『公文書危機 闇に葬られた記録』(毎日新聞出版、1650円)
モリカケ問題や桜を見る会では、公文書が決定的に重要なこと、日本の政官界が公文書をまるで軽視していることが白日の下にさらされました。黒川東京高検検事長の人事でもコロナウイルスをめぐる政策決定でも、公文書がつくられていないのは大問題です。
公文書なくして政策の歴史的検証はなしえないし、それ以前に権力の暴走を国民が防ごうとしても手掛かりがありません。であるのに、なぜ日本ではこれほど公文書が軽視され続けるのか。
毎日新聞の記者たちが取材していく中でわかったのは、政治家も官僚も公文書を残して責任をとりたくない、とくに官僚は政治家への忖度からあえて火中の栗を拾うことなどしないという事実です。
官僚に話を聞いても木で鼻をくくったような回答ばかりで、取材は難航しますが、それでも一歩ずつ真実に近づいていきます。
それに比べ鳩山友紀夫、福田康夫、前川喜平各氏とのインタビューは明快で問題の本質が浮かび上がります。
今、霞が関では膨大なメールがやりとりされていますが、すべて私文書扱いとなっていて、秘匿され、消去されています。これでは権力監視など容易ではありませんが、地味だけれどとても重要な問題に迫った力作です。
◎オリバー・ストーン、鳩山友紀夫ほか『もうひとつの日米戦後史』(詩想社新書、1155円)
オリバー・ストーン(映画監督)、鳩山友紀夫(元首相)、ピーター・カズニック(アメリカン大学教授)、木村朗(鹿児島大学教授)の各氏が対談した本書は、米国史の意外な真実を知るに格好です。
戦後のGHQ主導の教育と、さらにその後も日本の指導者の米国追従によって、私たちは間違った米国像を刷り込まれていると著者たちは警告します。
「終戦を早めるために原爆を投下した」は事実でなく、対ソ戦略上、米国の利益のために投下したのだという話から本書は始まります。
アフガニスタン、クリミアなどをめぐる裏話や、9・11で誰が得をしたのか、も重要です。「米国の良心」だと米側2氏が絶賛するヘンリー・ウォーレス(戦前戦中の副大統領)も知っておく価値があります。
オバマやヒラリーの評価が低いのも興味深い。ではトランプは。「軍産複合体」によって国が動かされていることへのストーンたちの警戒心は強烈で。とにかく米国を見る目が変わってくるであろう、異色の対談集です。
◎松原始『カラスは飼えるか』 (新潮社、1540円)
カラスの好き嫌いでいうと、生ゴミ荒らしなどで嫌いな人は9割くらいでしょうか。でも本書を読むとぬれぎぬが多くて、かわいそうな気がしてきます。
幼少からカラスが大好きで修士、博士課程でカラスをやり、学位をカラスで取得した著者のカラス愛は尋常なものではありません。
カラスは食べたことはあっても、なぜか飼ったことはないそうですが、カラスは意外に人なつっこく、ペット並みにかわいくなり、飼うとカラスロスを生じかねないと著者は警告します(なおカラスはおいしくないとか)。
カラスの知能、習性、好物、天敵から悪だくみまで、カラスのほぼすべてが語られていてとても興味深い。特にカラスは悪賢いという定説に関する著者の分析はとても新鮮です。
本書の特徴は話が鳩や鷹、フクロウ、カササギなどと勝手に広がっていくことで、それがどれも面白い。ですからカラスが嫌いでも、鳥好きの人には絶対のお勧め本ということになります。
重要な記事
最新の記事
-
【人事異動】JA全農(2025年1月1日付)2024年11月21日
-
【地域を診る】調査なくして政策なし 統計数字の落とし穴 京都橘大学教授 岡田知弘氏2024年11月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】国家戦略の欠如2024年11月21日
-
加藤一二三さんの詰め将棋連載がギネス世界記録に認定 『家の光』に65年62日掲載2024年11月21日
-
地域の活性化で「酪農危機」突破を 全農酪農経営体験発表会2024年11月21日
-
全農いわて 24年産米仮渡金(JA概算金)、追加支払い2000円 「販売環境好転、生産者に還元」2024年11月21日
-
鳥インフル ポーランドからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
鳥インフル カナダからの生きた家きん、家きん肉等の輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
JAあつぎとJAいちかわが連携協定 都市近郊農協同士 特産物販売や人的交流でタッグ2024年11月21日
-
どぶろくから酒、ビールへ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第317回2024年11月21日
-
JA三井ストラテジックパートナーズが営業開始 パートナー戦略を加速 JA三井リース2024年11月21日
-
【役員人事】協友アグリ(1月29日付)2024年11月21日
-
畜産から生まれる電気 発電所からリアルタイム配信 パルシステム東京2024年11月21日
-
積寒地でもスニーカーの歩きやすさ 防寒ブーツ「モントレ MB-799」発売 アキレス2024年11月21日
-
滋賀県「女性農業者学びのミニ講座」刈払機の使い方とメンテナンスを伝授 農機具王2024年11月21日
-
オーガニック日本茶を増やす「Ochanowa」有機JAS認証を取得 マイファーム2024年11月21日
-
11月29日「いい肉を当てよう 近江牛ガチャ」初開催 ここ滋賀2024年11月21日
-
「紅まどんな」解禁 愛媛県産かんきつ3品種「紅コレクション」各地でコラボ開始2024年11月21日
-
ベトナム南部における販売協力 トーモク2024年11月21日
-
有機EL発光材料の量産体制構築へ Kyuluxと資本業務提携契約を締結 日本曹達2024年11月21日