協同組合が担ってきた公共の領域が大きく揺さぶられる時代にあって、今何をすべきか【JCA週報】2020年6月29日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹JA全中代表理事会長、副会長 本田栄一 日本生協連代表理事会長)が、各都道府県での協同組合間連携の事例や連携・SDGsの勉強会などの内容、そして協同組合研究誌「にじ」に掲載された内容紹介や抜粋などの情報を、協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、「協同組合と教育:その歴史と課題」です。
協同組合研究誌「にじ」2020年夏号の特集「協同組合が担ってきた公共の領域が大きく揺さぶられる時代にあって、今何をすべきか」の座長をお願いした田中夏子氏(日本協同組合学会 前会長)の特集改題を紹介します。
協同組合研究誌「にじ」2020年夏号
「協同組合が担ってきた公共の領域が大きく揺さぶられる時代にあって、今何をすべきか」
田中 夏子 協同組合研究者
(略)
◆特集の意図
![田中 夏子氏](https://www.jacom.or.jp/column/images/colu20062902_1.jpg)
あらためて本特集のねらいについて述べたい。新自由主義的なグローバル市場経済が展開する現代、日本においても、市場に委ねるべきでないもの(=いのちと暮らしを支えるコモンズ)が続々と市場競争の論理に組み込まれていく流れだ。各種の自由貿易協定への参加と併行して、「成長産業化」「競争力強化」の名のもと、多くの領域で制度改変や規制緩和・撤廃が急速に同時進行している。まさに「経団連ビジョン2020」の集大成の時期といえ、直近のものだけでも種子法廃止、水道法改訂、漁業法改訂、森林営管理法、種苗法改訂(見送り)、度重なる食や農薬使用の安全基準の緩和等、立て続けだ。もとより、農林漁業や食等の公共的領域=コモンズは、市場化や全面的な成長産業化に馴染まないため、協同組合等、非営利的な担い手が支えてきたが、いわゆる「官製市場の開放」政策では、非営利的なこれまでの支え手に対して、不本意な上からの「自己改革」を迫る流れも強固だ。
こうした制度・政策の急速な転換が意味するものは何か。特にこのことが、私たちの社会にどのような影響をもたらしつつあるのか。影響がすぐに現れるとは限らず、その問題性の検証は難しいものの、だからこそ、よくよく目を凝らしていく必要がある。まずは各領域で生起している事柄を把握すること、その上で、領域横断的にこの転換の意味と、協同組合陣営のあり方を模索していくことが必要ではないかとの思いから、本特集の企画に至った。
特集前半では、農業、漁業、そして食をめぐる制度改革やグローバルな競争激化の流れと、それらが生産現場、生活現場にどのような影響をもたらしつつあるのかについて、展開いただいた。
また、特集後半では、「公共の縮小」政策のもと、ますますの財政難を強いられる地域社会が、協同の力を駆使して下からの公共を作る、その実践的な取り組みと、そうした実践を支える制度的可能性について論じていただいた。
(略)
◆本特集を通じて
今回の、世界を揺るがした(まだ揺るがし続けている)新型コロナ感染症は、世界をひとくくりにしてより速く、よりコンパクトに、より効率的に...という「時間・空間の最大限の圧縮」にまい進してきた私たちの社会のあり方に大きな疑問符を投げつけ、グローバルな規模で人、資本,モノ、サービスが駆け巡ることのリスクが明確となった。しかしながら、冒頭紹介した「グローバル化」は、単に迅速さとコンパクトさを意味するだけではない。お金も人手もかけ、議論を積み上げて作り上げていく公共領域の存在が、蔑ろにされ、そこにわずかでも「市場化」の余地があれば、それを見逃さずに「成長産業化」し、その見込みがなくなれば撤退するという手法は、私たちがコモンズにおいて備えるべき耐久力を削いでいく。
感染症という、身近な脅威との手探りで緊張度の高い日々の闘いと、気候危機という世代をまたぐ息の長い闘いとの、2つの大きな難題を背負って、私たちは、今、生きている。あわせてこれら危機や困難な状況の長期化は、貧困と排除・差別を益々深刻化させており、こうした事態に、協同組合が運動と事業をもって向き合っていくことの必要性が高まっていることも、本特集解題の最後に確認しておきたい。
協同組合研究誌「にじ」 2020夏号より
https://www.japan.coop/wp/publications/publication/niji
※ 論文そのものは、是非、「にじ」本冊でお読みください。
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