税金は毒まんじゅうと化す【小松泰信・地方の眼力】2020年7月1日
(1)給付金の全額に、不正受給の日の翌日から返還の日まで、年3%の割合で算定した延滞金を加え、これらの合計額にその2割に相当する額を加えた額の返還請求。
(2)申請者の法人名等を公表。不正の内容が悪質な場合には刑事告発。
とは、新型コロナウイルスの影響で売り上げが減った事業者に国が支給する「持続化給付金」の不正受給への対応。
中抜きで電通やパソナの持続化への貢献は不問に付すが、「国民を見たら不正行為者と思え」、ですか。
◆「黒いカバン」を思い出す
西日本新聞(6月30日付、長崎南版)には、記者が長崎市内の申請会場を取材した際、会場の担当者に運営する業者がどこなのか尋ねると、「上の方針で答えられない」といわれたそうだ。給付金の申請者にも取材と同じく基本的に明かしていないとのこと。「申請に使うのは確定申告や預金通帳の写しといった大切な書類。いくら国から委託されたとはいえ、素性も明かせない人に渡すのは、私だったら怖くてためらってしまう」と、記者は記す。特に、今の国ならなおさらだ。
こんなエピソードを見聞するたびに、泉谷しげるの「黒いカバン」(作詞岡本おさみ)を思い出す。「黒川のカバン」ではない。
黒いカバンを持った主人公に、警官が職務質問をする。やり取りのあらましは以下の通り。
警官;そのカバンをみせてもらいたい
ぼく;見せたくないですね
警官;おまえは
ぼく;あなたのお名前は
警官;それはいえない
ぼく;それは変ですね 人は会ったなら まして初対面なら お互に名のるのが最低の礼儀でしょう
警官;なに!・・・まあ今度だけは許してやる
といったので、ぼくも、今度だけは許してやるといってやった♪
◆配り方は河井夫妻に聞け
中国新聞デジタル(6月29日付)によれば、新型コロナウイルス対策で全国民に一律10万円を配る特別定額給付金で、広島市の給付率が17.5%(22日時点)にとどまっており、なかなか届かない現状に、広島市民から不満の声が上がっているそうだ。
広島市(対象世帯57万)の給付率は20政令市で9番目の高さ。最も給付率が高いのは熊本市(35万世帯、91.8%)で、最も低いのが大阪市(152万世帯、3.1%)。相対的に見れば特段の低さでは無いが、そもそも早急に給付されるべきものである。
市は、問い合わせが続くため、22日から給付時期の目安を市のホームページに掲載。申請書を処理する人員も従来の1.5倍にした。市総務課長は「市民の生活、命に関わる給付金であり、1日でも早く届けられるよう努める」と話している。
河井夫妻が気前よくお金をばらまいた広島県。その県庁所在地で、10万円給付がこんなに遅れているとは、皮肉なことである。
朝日新聞DIGITAL(6月30日21時36分)によれば、夫妻が公職選挙法違反(買収)容疑で逮捕された事件をめぐり、広島県議会議長で自民党県連副会長の中本隆志氏の怒りが、党本部に向かっているそうだ。
中本氏は、河井夫妻側に党本部が1億5000万円を支出したことを問題視し、加えて参院選公示前から安倍晋三首相の秘書が県内を回っていたとした上で、党公認の現職を応援していた企業に対し、「『今回は案里さんを』と頼んだのは間違いない」と断言。「中央と地方」の分断を招いたやり方に、「二度とこんなことはしてほしくない。なぜここまで身内に対してしたのか。憤り以上のものを感じる」と、怒り心頭。広島県政界は「底なし」の混乱状態といえよう。もちろん、原因と責任は自民党にあり。
◆恐怖の源
中国新聞デジタル(6月24日配信)によれば、この買収事件は安倍案件。そのことを教えてくれたのが、繁政秀子氏(取材時広島県府中町議、6月29日辞職)。
繁政氏は、参院選公示前の昨年5月、案里氏の選挙事務所で、克行氏から呼ばれ、現金30万円が入った白い封筒を渡された。気持ちの悪さを感じてすぐに「いただかれません。選挙できんくなる」などと断ったが、「安倍さんから」と言われ、押し問答の末に受け取ったそうだ。自民党支部の女性部長として、「安倍さんの名前を聞き、断れなかった。すごく嫌だったが、聞いたから受けた」と振り返っている。
たぶん安倍氏は、「河井氏が勝手に自分の名前を語ったもの。もしも、そうだったら、これはもう、私は総理大臣も、それはまあ、間違いなく、総理大臣も国会議員も辞めるということは、はっきり申し上げておきたい」って、いうかな~。
斎藤美奈子氏(文芸評論家、東京新聞7月1日付、本音のコラム)は、森友案件、加計案件をこの事件に類似した事例として取り上げ、「首相の名前が脅しの切り札になる国。ほとんどホラー映画である」と、斬る。やはり演者はアホラーですか。
同紙によれば、6月30日に、両容疑者にも期末手当がそれぞれ約319万円支払われたそうだ。止められまへんな~。
さらにその記事の隣には、30日に開かれた自民党総務会で、党本部が河井案里氏陣営に1億5000万円提供したことについて、出席議員から経緯を明確にするよう意見が出たことが紹介されている。
鈴木俊一総務会長は「何らかの形で、党員が抱いている疑問や不満に答えなければならない」と語っているが、広島県民はじめ国民に対しても説明責任を負っている。何故なら、政党助成金となった税金が、買収資金に変態した可能性があるからだ。
◆JAグループは大丈夫!?
中国新聞デジタル(6月30日配信)によれば、JAグループ広島の政治団体は昨年7月の参院選で落選した溝手顕正氏を推薦し、案里容疑者を「支持」した。会見で団体の会計責任者である横山英治専務理事は「県域の中でバランスを取って支持した。このようなことになり非常に残念だ」と語っている。
河井克行・案里謹製の「毒まんじゅう」を有り難くいただいたJA関係者がいないことを願うばかりだ。
何せ、「お金を配らなければ地方議員の皆さんとか、みんな協力してくれないから、みんなやってるんだから配りなさい」と、言われたことを金子恵美氏(元自民党衆議院議員)が各種メディアで語っている。現政権と懇ろな組織は腐敗する。
「地方の眼力」なめんなよ。
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