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ユリコアラート【小松泰信・地方の眼力】2020年7月8日

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【小松泰信・(一社)長野県農協地域開発機構研究所長】

「投票するに当たって、最も重視する基準は何ですか」との問いに対して、最も多いのが、「政策」25.2%。これに、「リーダーシップ」21.3%、「新型コロナウイルス感染症対策」14.6%が続く。これは東京新聞が、6月26日から28日に東京都内の有権者を対象に実施した「東京都知事選 世論調査」(回答者数1030人)の結果。同紙6月30日付が結果概要を報じている。

komatsu_honbun.jpg◆問われる東京都民の見識
「東京都知事選 世論調査」の結果概要において、さらに次の2点に注目した。
(1)「小池百合子知事の4年間の都政をどう評価しますか」という問いに対しては、「評価する」22.8%、「どちらかと言えば評価する」57.8%、「どちらかと言えば評価しない」11.6%、「評価しない」6.9%、「分からない・無回答」0.9%。大別すれば、8割の人が評価している。
(2)「東京都の新型コロナウイルス感染症対策を評価しますか」という問いに対しては、「大いに評価する」10.4%、「ある程度評価する」60.3%、「あまり評価しない」23.0%、「全く評価しない」5.3%、「分からない・無回答」1.0%。大別すれば、7割の人が評価している。
タイミングよく、ベストセラー『女帝 小池百合子』(石井妙子著、文藝春秋)を読んでいた者にとっては、目を疑う高評価。思わず、「これはフジテレビと産経新聞による世論調査では?」、と思った次第。
選挙結果は、東京新聞の世論調査に偽りなし。落選した山本太郎氏(れいわ新選組代表)に「いやー、強かった。百合子山。高かった百合子山、という感じです」と言わしめた、『女帝』の名を汚さぬ圧勝。
でもそれでいいのだろうか。
初当選時の「七つのゼロ」という公約は、ほとんど達成されていない。カタカナ好きならではの「東京アラート」も、立候補前日に科学的根拠不明の解除。それを待っていたかのように連日100人を超える感染者。どこを見ての評価なのか、都民の見識に疑問を禁じ得ない。
「いやいや、小池氏には都民にしか分からない良いところがあります。そもそも、都民が選ぶ都知事ですから、地方の方は関係ないです。余計なケチは付けないで!」と、お怒りになる方もいるはず。しかし、東京都はこの国の首都です。都知事の言動は全国に、そう地方に否応なく影響を及ぼすのです。その逆の場合、すなわち道府県知事の言動が東京都にどれほど影響を及ぼすか、と比べればご理解いただけるはず。

 
◆地方紙の社説が見た小池再選
小池再選を地方の立ち位置から論じた社説の中で、最も核心を突いているのが北國新聞(7月7日付)。
タイトルはズバリ「小池都政2期目 地方創生をどう進めるか」。
まず、都知事選を「首都の望ましい姿を問い直す機会でもあった」と位置付ける。そして「全国知事会は、一極集中の危険性が明確になったとして『新次元の分散型国土』の形成を提言したところである。しかし、小池氏はそもそも東京一極集中の是正に反対の立場」だったので、「地方創生という国全体の課題に東京都はどう取り組むのか、小池氏の考えを聞かせてほしい」とする。
東京都が2015年に策定した「東京と地方が共に栄える、真の地方創生を目指して」と銘打った総合戦略で、「▽五輪を機に受注機会を地方に拡大▽東京から地方の魅力発信▽各地と連携して外国人観光客誘致など、さまざまな共栄策を打ち出している」ことを紹介しうえで、「戦略の最大の狙いは、東京の活力を高めることであり、首都機能の移転などは眼中にない」と、斬る。
さらに、「都の税収減になることから、自治体間の財政格差是正を目的にした法人税改革やふるさと納税制度に一貫して背を向けている。昨年7月、富山市で開催された全国知事会議で、東京一極集中の是正に向けた地方創生の取り組みをうたった提言に小池氏が反発し、文言が一部修正されたことは記憶に新しい」と、追及の手を緩めない。
そして、「小池氏は公約で『グレーター東京』(大東京圏)なる構想も掲げている。権限と財源セットの地方分権をめざすと強調しているが、政府方針に反して東京圏のさらなる拡大を意図しているようにも解釈できる。コロナ禍で芽生えた地方分散の流れを阻むことがあってはならない」と、とどめを刺す。当コラム、思わず快哉(かいさい)を叫ぶ。
山陽新聞(7月7日付)は、「一極集中がさらに進み、地方にも大きな影響を与える首都の選挙としては、論戦があまりに低調すぎたと言わざるを得ない」と、地方との関係性に自覚が乏しい選挙戦に失望の意を表す。
新型コロナウイルス感染者が選挙告示後に増え始め、終盤には連日100人を超えたことをとりあげ、「東京で感染が広がれば、地方に波及するのは間違いない。都だけの問題ではない。心して取り組んでもらいたい」と、注文を付ける。
そして、「コロナ禍では、首都の過密が感染防止にとって大きなネックになっている。(中略)分散型の国土づくりを含め、首都を取り巻く問題は国政にとっても最大の課題である」として、首都のかじ取り役が担うべき重責への自覚を求めている。
神戸新聞(7月7日付)も「東京の施策は地方の将来にも影響する。役割の重さを自覚し、実績で力量を示してもらいたい」とする。
西日本新聞(7月7日付)は、「新しい対策や標語には熱心だが、以前の政策検証はおざなりになりがちだ。パフォーマンス優先という批判も根強い」と苦言を呈し、「首都の行政は地方自治をリードする模範の面もある。着実な実行と説明責任を尽くす姿勢で都政を展開してもらいたい」と、課題を提示する。

 
◆地方は東京とソーシャルディスタンスをとれ
「公約は少しも果たそうとしない。その典型は築地市場の豊洲移転である。あれほど記者会見で『築地にも市場機能を残す。五年後には希望する仲卸業者さんが築地に戻れるように都がお手伝いをする』と語りながら、『言っていない』の一言で済ましてしまう。(中略)しかも、自分の心変わりを認めず、豊洲移転を自分の決断だとはされぬように、判断を下したのは農水省や都の専門家会議であると責任を押しつけた」とは、『女帝』終章からの抜粋である。
当コラム、これだけでも、知事の任に値しない人間と判断したが、現実は大きく違っていた。366万人もの都民が信じて、託したとすれば、都民にも選んだものとしての責任を果たしていただかねばならない。ユリコノウイルスが都外に流失し、地方を汚染させないように、都内に封じ込み、徹底した監視下のもとで知事の重責を果たさせることである。
もちろん地方も、東京都とこれまで以上のソーシャルディスタンスを保ち、徹底した感染予防策を講じなければならない。
「地方の眼力」なめんなよ

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小松泰信氏のコラム【地方の眼力】

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