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(188)新型コロナウイルス感染症と米国の食肉生産【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2020年7月10日

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【三石誠司 宮城大学教授】

今回の豪雨で被害を受けた皆様に心からお見舞い申し上げます。皆様の安全が確保され、一刻も早く通常の毎日が戻ることを願って止みません。
今週は新型コロナウイルス感染症と米国の食肉生産、とくに、いわゆる赤肉(牛肉と豚肉が中心)の生産動向について春先以降の状況を簡単にまとめてみました。

米国ジョンズ・ホプキンス大学のサイトによると、2020年7月8日時点で新型コロナウイルス感染症の感染者数は1178万人、死者54万人と推計されている。感染者数で見た場合、1位の米国は299万人、2位ブラジルが167万人、そして3位がインドで72万人であり、米国とブラジルの感染者数の多さが群を抜いている。
両国の"主食"は食肉である。現代の食肉生産は高度に統合されており、影響は様々なところに生じている。ここでは米国を見てみたい。
米国の場合、既に3月には感染者数が世界最高になり、食肉工場だけでなく清掃業や造船業、倉庫労働やスーパー、公共移動機関など、人々の生活に密接に関係する不可欠な現場で働く人達の中から自らの安全と健康に対する懸念が広まり、危険手当のような形での賃上げ交渉や設備の充実、あるいは休暇の充実などが行われてきた。
4月下旬時点で、米国内では大手を含む10以上の食肉工場が閉鎖され、例えば豚肉の場合、米国全体の4分の1、牛肉は全体の1割が生産停止状態という報道がなされている。この結果、米国内の食肉価格は急速に上昇するとともに、大手食肉企業からは近い将来の食肉不足の懸念が唱えられるようになった。
5月に入るとステーキや小売肉価格が10~30%の値上げという記事が報道されるようになった。さらに、毎日の食卓に必要なスーパーの精肉売り場の品不足だけでなく、米国のシンボルでもあるハンバーガーチェーンなどでも深刻な影響が出始めたのである。
さて、それからほぼ2か月が経過した去る6月25日、米国農務省は5月の家畜「と畜」状況を発表した。ようやく3月以降3か月の数字が揃ったため、ここで大きな推移を眺めてみたい。以下は5月の数字の抜粋である。

・牛肉生産量は前年比20%減、肉牛のと畜は前年比23%減、そして平均体重は前年に比べて51ポンド増(1ポンド=0.453kgとして約23kg、以下同じ)の1367ポンド(約619kg)
・豚肉生産量は前年比15%減、肥育豚のと畜は前年比17%減、そして平均体重は前年比7ポンド(約3kg)増の294ポンド(約133kg)

この他にラムやマトンなどもあるが、赤肉全体として見た場合、5月の生産量は前年比18%減少である。
また、今年の3月以降の米国の赤肉生産量を前年と比較したものが下の表である。数字は感覚的につかみやすくするため、表示は全てトンに換算している。

米国の赤肉生産量推移


ざっと見ると、昨年の米国はこの時期に牛肉・豚肉ともに各々毎月100万トンを生産していたことがわかる。牛肉・豚肉合計でみた場合、3か月で約600万トンである。それが今年の場合、3月は昨年を上回るものの、新型コロナウイルス感染症が本格化した4~5月は赤肉合計で約70万トン減少し、3か月合計では42万トンの減である。
6月の数字が出れば最も影響を受けた4~6月の合計数字が明らかになるが、感覚的には赤肉全体で100万トンを超える減少でも不思議ではない(それで4~6月が約2割弱の減となる)。現代の統合化された生産システムの下では、いきなり生産を止めることも容易ではないが、止めたものをすぐに元に戻すこともまた大変である。
日本同様、経済活動が回復しつつあるとはいうものの、米国の感染者数動向は日本や欧州各国とは大きく異なる。これは感覚的なものだが、仮に今後半年間、この傾向が継続すれば追加で200万トン、1年なら400万トンの減少を意味する。食肉の供給、そして国際貿易に与える影響は極めて大きい。
参考までに記せば、2019年の日本の年間牛肉輸入数量は62万トン(豪州29万トン、米国24万トン他)、豚肉は96万トン(米国25万トン、カナダ23万トン他)である。これを考えると、米国の生産量減の長期的影響を考えざるを得ない。

*   *   *

わが国では3~4月は自粛に伴うインバウンドや外食需要の減少で大きく低下した食肉価格も、ようやく最近は回復基調にあるようです。新型コロナウイルス感染症、そして冒頭で述べた豪雨被害からの一刻も早い回復とともに食肉価格の回復をも改めて強く願いたいと思います。


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三石誠司・宮城大学教授のコラム【グローバルとローカル:世界は今】

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