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「新たな日常」まで指図するな【小松泰信・地方の眼力】2020年7月22日

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【小松泰信・(一社)長野県農協地域開発機構研究所長】

「『新しい生活様式』という言葉に抵抗を感じる一人」の水島広子氏(精神科医)は、東京新聞(7月18日付夕刊)の「紙つぶて」において、「ワクチンもない今、生活の形態が変わることはやむを得ない」が、「人生において重要なことは『ウイルスの感染拡大を防止すること』だけではない」とする。そして、「あまりに公的に『新しい生活様式』と言われると、生き方や価値観を押しつけられている感覚になる。この全世界的な出来事を経て、どのように生きていくかは、衛生問題に限らず、それぞれが考えていく性質のものだと思う」と記している。

komatsu_honbun.jpg◆エッ?「新たな日常」
7月17日、「経済財政運営と改革の基本方針2020~危機の克服、そして新しい未来へ~」(骨太方針2020。以下「骨太」と略す)が経済財政諮問会議での答申を経て、閣議決定された。

37ページにわたる本文において、「新しい生活様式」というフレーズは4回出てくる。それも「」なしで。代わりに「」付きで頻出するのが「新たな日常」。もくじを除いた本文中に35回(内、見出し12回、文中23回)も出てくるキーフレーズである。ところが、最初に出てくるのは、「新たな日常」に近似した「ニューノーマル」というフレーズ。これは3回。

Google翻訳は、"new normal"を「新しい通常」、"new normal life"を「新しい通常の生活」と和訳する。

第1章の2.ポストコロナ時代の新しい未来、において、
――各国ともポストコロナの「ニューノーマル」の在り方を模索する競争を展開している状況の中で、(中略)今回の感染症拡大で顕在化した課題を克服した後の新しい未来における経済社会の姿の基本的方向性として、「新たな日常」を通じた「質」の高い経済社会の実現を目指す。すなわち、変化を取り入れ、多様性を活かすことにより、リスクに強い強靱性を高めながら、我が国が持つ独自の強み・特性・ソフトパワーを活かした「ニューノーマル」のかたち、「新たな日常」を構築していく。
と、「ニューノーマル」と「新たな日常」が同義であることを示した上で、「それを通じて、付加価値生産性を向上させるとともに、成長の果実を広く分配する中で、誰ひとり取り残されない、国民の一人一人が『包摂的』で生活の豊かさを実感できる『質』の高い持続的な成長を実現していく」と、高らかに宣明する。
めざすのは、つぎの3つが実現した社会とのこと。
○個人が輝き、誰もがどこでも豊かさを実感できる社会
○誰ひとり取り残されることなく生きがいを感じることのできる包摂的な社会
○国際社会から信用と尊敬を集め、不可欠とされる国
もちろん非の打ちようのない理想社会ではあるが、その実現のためには、「感染症拡大への対応と経済活動の段階的引上げや激甚化・頻発化する災害への対応を通じて国民の生命・生活・雇用・事業を守り抜くとともに、『新たな日常』の実現を目指す必要がある」そうだ。しかし、その実現が大変なことは言うまでもない。
また、新型コロナ対策としての性格が強かった「新しい生活様式」が、高次元の「新たな日常」にまで展開されねばならない理由や、その道筋について明らかにはなっていない。

 
◆付け焼き刃の骨太に用はない
それでは、北海道新聞と中国新聞の社説が「骨太」をどのように論評しているのかを見る。

真正面から斬り込んでいるのが、北海道新聞(7月18日付)である。
「『新たな日常』『ポストコロナ時代』―。スローガンばかりが踊り、付け焼き刃の印象が拭えない。これのどこが『骨太』なのか」には、冒頭より胸のすく思い。
「遅れているデジタル化や人口密集のリスクに切り込むのはもっともではある。ただ、これらはこれまでも骨太方針などに盛り込んだのに、遅々として進まなかった。その原因を検証することなく場当たり的に目玉政策に据えても、掛け声倒れに終わりかねない。求められるのはあらゆるリスクに対応できる社会への変革だが、総花的な方針からは安倍政権のそこに向かう意志が感じられない」と、厳しく迫る。
「行政のデジタル化」についても、「背景にある書面主義や縦割り組織などが変わらなければ、変革は望めまい」とする。
「検査・医療体制の充実やワクチン開発の加速などをうたうが、目先の対策で既出のものだ。必要なのは、人員も予算も減らしてきた感染症対策の脆弱(ぜいじゃく)な体制を今後どうするのかという視点である」として、将来像が見えないことを嘆く。
中国新聞(7月19日付)は、東京一極集中の是正を取り上げ、「地方の側が繰り返し訴えてきた問題である。人口密集による感染リスクを今回、誰もが肌で感じたに違いない。地方の就労環境の整備やテレワークの定着といった後押しくらいでは、新味にも本気度にも欠ける。コロナ禍で、世界中の政治から経済から、一人一人を取り巻く社会環境が一変しつつある。国民の間に横たわる不安は、何も拭えていない」と、厳しい指摘。
さらに「時代の転換点に立っている現在地を自覚しつつ、長い目で先行きを見通していく姿勢は欠かせない。にもかかわらず、今回問われているはずの長期戦略が見当たらない。一体、どうしたことだろう」と嘆息し、「骨太方針はもはや、役割を終えたのではないか。それは違うともし政府の側が言うなら、導入後20年の成果と課題を検証しておく必要があろう」と、現政権が忌避する検証作業を求めている。
その上で、「利益至上主義の目立ったグローバル経済や大都市への人口集中といった現状の見直しは今をおいてあるまい」として、国民が安心でき、納得のいく針路の提示を求めている。

 
◆そもそもコロナ対策が評価されていません
共同通信世論調査(7月17~19日実施、回答者1041人、回答率49.7%)において、政府の新型コロナウイルスへの対応の評価を問われて、59.1%が「評価しない」と回答。毎日新聞と社会調査研究センターが実施した世論調査(7月18日、回答数1053件)において、同様の問いに対して、60%が「評価しない」と回答。図らずも両世論調査で6割が評価していないことが分かった。

評価されていない、当然信頼されていない政権から、耳触りの良い言葉で、ポストコロナ社会を語られても、共にいばらの道を歩んでいこうという気にはならない。
まして、生き方や価値観を押しつけられるのは、断固拒否。
「地方の眼力」なめんなよ

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

小松泰信氏のコラム【地方の眼力】

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