特定地域づくり事業協同組合の概要とその運営【JCA週報】2020年7月27日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹JA全中代表理事会長、副会長 本田栄一 日本生協連代表理事会長)が、各都道府県での協同組合間連携の事例や連携・SDGsの勉強会などの内容、そして協同組合研究誌「にじ」に掲載された内容紹介や抜粋などの情報を、協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、「特定地域づくり事業協同組合の概要とその運営」です。
協同組合研究誌「にじ」2020年夏号の特集「協同組合が担ってきた公共の領域が大きく揺さぶられる時代にあって、今何をすべきか」において、全国中小企業団体中央会 事務局長の及川勝氏の報告を紹介します。
協同組合研究誌「にじ」2020年夏号
特定地域づくり事業協同組合の概要とその運営
-人口急減地域の移住・定住雇用確保等過疎地域の再生を担う-
1.はじめに
![及川 勝 全国中小企業団体中央会事務局長](https://www.jacom.or.jp/column/images/colu20072701_1.jpg)
全国中小企業団体中央会事務局長
(略)コロナの終息後は、社会や暮らし方は相当違った風景になっていくと思われる。本稿では、人口急減地域の定住雇用の確保を図る協同組合の概要とその運営について述べる。
2019年12月1日現在、我が国の総人口1億2615万人に対して65歳以上の人口は、3593万人に上り、高齢化率は実に31.4%である。出生率が全国で最も低い東京の過密化とそれ以外の過疎化が併存しながら、日本全体は人口減少により衰退している。人口急減地域において地域社会が維持できないという極めて深刻な状況にある。こうした中、「地域人口の急減に対処するための特定地域づくり事業の推進に関する法律」(以下「法」と略)が、議員立法として成立し、令和元年12月4日に公布、令和2年6月4日に施行された。同法は、地域人口の急減に直面している地域において、地域社会及び地域経済の重要な担い手である地域づくり人材が、安心して活躍できる環境の整備を図ることが喫緊の課題であることから、特定地域づくり事業を推進し、併せて地域づくり人材の確保及びその活躍の推進を図り、もって地域社会の維持及び地域経済の活性化に資することを目的とする(法第1条)。
2.対象地域
「地域人口の急減」とは、一定の地域において地域社会の維持が著しく困難となるおそれが生じる程度にまで人口が急激に減少した状況をいう(法第2条第1項)。真に地域づくり人材の不足している地区においてのみ認定・設立されるよう、「地域人口の急減に直面している地域」として、(1)過疎地域自立促進特別措置法に基づく過疎地域であること、(2)過疎地域と同程度の人口減少が生じている地域であることとした。(略)
3.地域づくり人材
「地域づくり人材」とは、地域人口の急減に直面している地域において就労その他の社会的活動を通じて地域社会の維持及び地域経済の活性化に寄与する人材をいう(法第2条第2項)。(略) 。特定地域づくり事業協同組合の派遣職員として雇用される地域づくり人材として、具体的には、(1)地方への移住を希望する都市部在住の若者等、(2)地域おこし協力隊として活躍し、任期を終えた者、(3)組合の地区内に居住している若者、等を挙げている。(略)
4.特定地域づくり事業協同組合
(1)認定基準
「特定地域づくり事業協同組合」とは、第3条第1項の認定を受けた事業協同組合(中小企業等協同組合法(以下「中協法」と略)第3条第1号に規定する事業協同組合をいう。)である(法第2条第3項)。人口急減地域内の限りある労働力を相互に融通し合うための担い手は、事業者の組織集団が相互扶助的に事業の提供を行う事業協同組合という組合形態がふさわしいと考えられた。(略) 。組合員の資格は規模に基づく形式的要件だけでなく、実態的な要件で判断される。このことは、農業協同組合、森林組合等の関係事業者団体(特定地域づくり事業協同組合の地区内の事業者を構成員とする団体。後述するように、特定地域づくり事業に限らず、特定地域づくり事業協同組合の職員の住居及び良好な子育て環境の確保のための取組等への協力が期待されている。)など多様なステークホルダーの加入を促すと期待される。ただし、市町村自体は組合員にはなれないことに留意する必要がある。(略)
(2)特定地域づくり事業
特定地域づくり事業協同組合が行う「特定地域づくり事業」は、その地区において地域づくり人材が地域社会及び地域経済の重要な担い手として、その能力を十分に発揮することができるよう、地域づくり人材がその組合員の事業に従事する機会を提供する事業を行う(法第10条第1項)
(略)特定地域づくり事業には2つの大きな柱があり、一本は(1)地域づくり人材がその組合員の事業に従事する機会を提供する事業(マルチワーカー(季節ごとの労働需要等に応じて複数の事業者の事業に従事)の労働者派遣事業、無料職業紹介事業等)と、もう一本は(2)地域づくり人材の確保及び育成並びにその活躍の推進のための事業の企画・実施(移住支援事業等)である。事業を廃止するときは、廃止しようとする日の30日前までに知事に届け出が必要となる(法施行規則第7条)。
(以下略)
協同組合研究誌「にじ」 2020夏号より
https://www.japan.coop/wp/publications/publication/niji
※ 報告そのものは、是非、「にじ」本冊でお読みください。
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