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国民の命を賭けるCOVID‐19対策【森島 賢・正義派の農政論】2020年9月14日

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COVID‐19の新規感染者の数は、政府発表の数字をみると、当面する山を越えて高止まりしている。この数字は、検査を極端に制限して、実態を隠蔽している数字だが、山を越えたことは確かだろう。この山は何番目の山か。
感染研の遺伝子解析によれば、第1の山は武漢由来で、ほとんど山の形にならずに終息した。第2の山は欧州由来で、いまは第3の山で東京由来だという(中日新聞HP8月25日)。
この山は、いつまで続くのか。その後に第4の山は来るのか。来るとして、いつ来るのか。そして、いつまで続くのか。これらをいち早く察知して、社会に警鐘を鳴らすことが、感染症学者の責務である。だが、政府の近くには、そういう人はいないようだ。
今日、新しく自民党総裁になった菅義偉氏は『ワクチンは来年前半までに、全国民に供給できる数量を確保することを目指して』いるという。ワクチンができれば、感染は終息する。それを、目指すのはいいが、来年前半という超楽観的な予想が外れたときは、どうするのか。ここには、国民の命が賭かっている。
最悪の事態を想定して、対策を用意しておくことが、政治の最高責任者のなすべきことである。

人口1000人当たり医師数

さて、上の表は、先進国クラブといわれるOECDの各国について、人口1000人当たりの医師数を示したものである。日本は35か国の中で、最下位に近い30番目である。ドイツやイタリーの約半分である。これでも日本は先進国なのだろうか。
政治の最重要課題は、いうまでもなく国民の生命を守ることである。しかし、日本の政治は、この課題を軽視している。生命を守るための医療体制を脆弱なままにしている。そうして、恥を世界中に曝け出している。
このことが、COVID‐19問題の中で露わになった。

政府は、たえず医療崩壊の危機を言い立てて、国民を脅している。医療崩壊を避けるためとして、国民に社会活動の自粛を要求し、営業の縮小を要求している。
だが政府には、その前に行うべきことがある。それは、医療体制の拡充と整備である。
しかし、政府は、それを怠り、検査数を減らすことで、いわば政府公認の感染者数を減らしている。そうすれば、隔離し治療すべき人数を減らすことができて、医療崩壊を回避できる、というわけである。
しかし、その陰で、多くの実際の感染者が市中にいて、感染者であることを知らずにいる。だから多くの国民は、息をつめて罹病の不安におののいている。また多くの国民は、すでに感染しているかもしれないと思い、感染源になって市中感染を広げることを、密かに懼れている。

明後日には、菅総裁が新しい政府の首相になるようだが、新しい政府は、国民に対して来年前半まで我慢せよ、と言いたいのだろう。だが専門家は、それまでにワクチンを全国民に供給できる可能性は、極めて小さいという。また、秋から冬にかけて、感染の大波が押し寄せることを予想する専門家も多い。

新しい政府が、まず初めに行うべきことは、来年前半までに終息する、などという怪しげな想定のもとで、危険な賭けに乗ることではない。この賭けには、国民の命が賭かっている。
そうではなくて、早急に、検査体制と隔離・治療体制を拡充し、整備することである。
特措法を改正するかどうか、などという些末な議論に耽っているときではない。

いまは、国難といわれるほどの危機の中にある。検査機器や隔離施設や治療機器の整備は、それほど困難ではない。国費を使えばいい。国難なのだから、必要な国費の支出を惜しんではならない。
困難なのは、医師など医療のための人員の拡充である。いまは、それが前掲の表でみたように、極めて少ない。だが、医師などを急に増やすことはできない。これは医療体制の問題である。どうすればいいか。

いま、COVID‐19の終息のために貢献したいという医師や看護師など医療関係者の高貴な意志が、充分に生かされているか。そうした体制になっているか。
国難にあたって、政治が早急になすべきことは、彼らの崇高な意志を尊重した医療体制の整備である。
そうすれば、市中に感染者がいなくなるから、安心して以前と同じような社会活動ができる。国民に社会活動の自粛を求める必要はなくなる。休業の要請も不必要になる。経済は甦る。
それだけではない。この体制は、数年後に襲ってくるかもしれない次の新々感染症対策に生かせるだろう。そして、多くの国民の血と汗で贖ったこの体制は、貴重な政治的遺産として後世に伝えられ、永く讃えられるだろう。

(2020.09.14)

(前回  対立するCOVID-19対策

(前々回 生命軽視のCOVID-19対策


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