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財務省の資料で分かった飼料用米ダントツ県の栃木と茨城【熊野孝文・米マーケット情報】2020年9月15日

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【(株)米穀新聞社記者・熊野孝文】

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財務省が作成した農林水産関連予算資料の中には飼料用米について詳しく記したものがある。それによると平成30年度の支援状況は771億7500万円になっている。内訳は戦略作物助成金が643億300万円、当初配分の産地交付金が74億9500万円、追加配分が53億7700万円である。都道府県別で最も多くの支援額を得ているのが栃木県で86億4700万円、次が茨城県の82億2800万円で、この2県がダントツに多く、いわば飼料用米県と言える産地になっている。意外なのは畜産県である宮崎、鹿児島の支援額が少ないことで、宮崎県は5億1300万円、鹿児島県は8億6500万円で、栃木、茨城に比べると10分の1程度しかない。

30年度は水田活用の直接支払い交付金として2986億円を支給しているが、この内飼料用米に支給された額の割合は26%を占めている。772億円もあれば畜産農家に輸入トウモロコシをタダで提供出来そうなものだが、水田作を守るためにそうした政策は採用されない。財務省主計局主計官は令和2年産農林関係予算についてと題して以下のように記している。

「令和2年産予算の主な内容としては、まず、主食用米が過剰に市場に出回らないよう飼料用米等への作付誘導がなされているが、この原資となる水田活用の直接支払交付金において、飼料用米支援を見直して削減した。その上で、農業の成長産業化に向け、農業者が国内外の消費者ニーズに合った作物を生産し、所得向上を図ることができるよう(1)農林水産物・食品の輸出環境整備(2)高収益作物の生産支援(3)新規就農者の確保、といった取組みを進めるものとしている。あわせて、引き続き水産改革に取り組むとともに、CSF(豚熱)・ASF(アフリカ豚熱)などの家畜疫病への対応強化を実施することとしている」。飼料用米への支援を削減した部分をどこに回したかと言うと「高収益作物(野菜・果樹)・コメ輸出へ」100億円振り向けた。こうした予算の組み替えにより主食用米から高収益作物や輸出用への転換が進み、主食用米の需給が均衡すれば良かったのだが、現実は供給過剰になり2年産米の価格がハシリから大幅に下落している。

先週開催された与党の農業基本政策検討委員会に提出されたJAグループの資料には以下のように記されている。

水田活用米穀の品目ごとの状況は、飼料用米を除き、需要をほぼ満たしており、主食用米からの切替えは、飼料用米を中心に推進せざるを得ない状況にあるとし、品目別の状況として、加工用米は(1)飲食店の営業時間制限や巣籠り等により、主要用途の日本酒の消費が大幅減(2)コロナ禍以前の問題として、主要輸出先の韓国への日本酒輸出も激減(3)日本酒以外の用途である米菓・味噌なども、外国産米に席捲されている状況(4)地域で流通する加工用米も行き場をなくす可能性大。輸出用米は(1)海外市場では、コロナ特需も一段落するなど日本国内と同様の需要傾向(2)巨大マーケットである中国向けの輸出規制緩和に期待(3)流通経費が嵩み、結果的に農家への品代は低廉。米粉用米は(1)均質化した古米を使用する製造実態から、多くの製造メーカーは在庫を抱えている状況(2)中小規模の製造メーカーが多く、追加購入する経営体力に乏しい。飼料用米は(1)トウモロコシの代替品として需要拡大の可能性が高い(2)トウモロコシの国際相場に左右されるため、販売価格は不安定(特に直近は価格暴落)。

各項目にはお天気マークが付けられており、「晴」は飼料用米だけで、他は雨か曇りマークになっている。結局、主食用米の供給量を削減するには飼料用米に向けるしかないという事を言いたいのだろう。

飼料用米を生産している稲作生産者の中には徹底した低コスト栽培を実践すべく、飼料用米については直播して、肥料・農薬も散布しない生産者もいる。そうした栽培方法で生産した飼料用米は10アール当たりで2俵しか生産されなかったと申告し、最低の助成金10アール当たり5万5000円を受け取っている農家もいる。この生産者にとってはこうしたやり方が最も収益が上がるという考え方。こうした生産者は例外だろうと思われるかもしれないが、飼料用米は、多収品種での生産を奨励されていながら全国平均の反収は主食用米より低いのだから例外とは言い切れない。本当に飼料用米生産政策が日本の水田を守ることになるのか根本から検証して方向を変えなければならない時期に来ている。

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(株)米穀新聞社記者・熊野孝文氏のコラム【米マーケット情報】
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