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儲けるだけ儲けて「食い逃げ」できるコンセッション方式【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】2020年10月15日

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【鈴木宣弘 東京大学教授】

所有権を国や自治体に残したまま、民間企業が儲けられるだけ儲けて「食い逃げ」して、後始末は、住民や国民に押し付けることのできるコンセッション方式は、国有林の「盗伐」合法化や水道事業の「民営化」にも使われた。

企業においしい仕組み

コンセッション方式は、施設・資源の管理は国や自治体、つまり国民に最終責任を持たせ、利益を出せる運営権を民間企業に持たせるという手法だから、利益を出せる時には営業を続け、利益を出せなくなれば投げ出すということになる。事故や災害でインフラに故障や支障が生じたら、その復旧は管理者が国や自治体なので、運営で得られた民間企業の利益からではなく、国民の血税で復旧する。利益が出なくなって民間会社が撤退した後は、これもまた国や自治体が引き取るということになる。つまり、特定企業はリスクは取らずに利益だけ得る、尻ぬぐいは住民、国民、税金になるという構図である。

「国有林野管理経営法」の改定(2019年)では、国有林について、所有権は国にあるが、一定期間(最長50年)、民間事業者に樹木を採取する権利(樹木採取権)を創設する(設定料と樹木料は支払う)。伐採する権利は付与し、再造林する義務はない。植林は、国民の税金から負担するというのである。こんな「おいしい」話はない。

水道事業の民営化にも、委託される予定のオトモダチ企業の一つから職員が役所に派遣され、自身への委託の検討をしていたという、あからさまな利益相反があった。S県H市の水道事業の民営化に参画するのも、急展開で企業が農地を買えるようになった国家戦略特区に手を挙げ、漁業法の改定後銚子沖の洋上風力発電に参入しようとし、民有・国有林の盗伐で儲けるのは同じ企業(下記のT氏が社外取締役)である。海も、企業が権利を奪って儲けるだけ儲けて、海は汚し、水産資源管理はしないのだから、ツケは国民に押し付けることになり、構造は似ている。

誰が決めたか~林野庁は蚊帳の外、司令塔は未来投資会議

これらは典型的な「利益相反」という点でも共通している。国有林の「盗伐」合法化の提案をした未来投資会議の議員は、盗伐で利益を得る企業の取締役だった。未来投資会議の議事録(2018年5月17日(木)15:10~16:00)の議事録の次の箇所をまず読んでいただきたい。

(T議員)林業については、齋藤大臣を中心に、農水省、林野庁は大変頑張ってくださっている。多くの改革分野で、さまざまな傾向が出ている中、そして、困難が増している中で、林業は成長産業の新たな光だと言っていいと思う。今の政策をぜひ進めていただいて、本日も御議論をしていただきたいと思う。加えて、今後、国有林などの分野で、いわゆるコンセッションのような考え方を導入して、大胆に改革の仕組みをつくることが不可欠ではないかと思う。私が会長をしている推進会合での取りまとめを、本日の資料9の1枚紙で提出しているので、お目通しをいただきたいと思う。ぜひとも長期・大ロットで、国有林などの伐採が可能となるような、法的措置がとられることをお願いしたいと思う。

林政審議会施策部会(2018.11.13)の議事録

そして、注目されるのが林政審議会会長の発言である。「1つは、今回のこの案件というのは、その前の森林経営管理法の際にも少しあったのですが、かなりトップダウンで政策の枠組みが決まってしまったというのが現実にあると思います。もちろんそれが林野庁内部でのさまざまなニーズや、それからこれからやりたいことと合致している部分があるというところも認めるところですが、もう少し具体的に言うと、これは恐らく内部の方は絶対に言えないと思いますので、私は首を切られても全く問題ないので言わせていただきますが、未来投資会議というのが官邸にあって、その委員の竹中平蔵氏が、何回にもわたって国有林の改革について主張されてきたというのは、ホームページ等を見ればわかることです。特に国有林を特定した意見書も出されています。その結果というのが、成長戦略そのものに反映しているというのは、これはどなたがちょっと調べられてもわかることです。竹中氏は経済全般もしくは国の政策全般の専門家であるということはよく知っています。当然、大臣も経験された方で、国会議員も経験された方ですから。ですが、こと、森林や林業や山村については、やはりいわゆる専門の方ではないと私は思います。そういう専門の方でない方が、かなりこういう突っ込んだ戦略を出してきて、それを受けて我々が、もしくは林野庁、農林水産省が新たな政策を検討しなくてはならない状況というのは、やはり転倒していると私は思います。正しい政策のあり方ではない。つまり、ボトムアップのやり方ではないと感じています。ただし、それでは林野庁はどうするのか。林野庁を責めてもしようがないのは事実なので、それは国民が今の政権を選んだわけですから、それについて政策を審議する我々としても、それをある意味で前提としなきゃいけないということは認めます。それが1点です。そうなると、せいぜいなるべく拙速は避けて議論を積み重ねたいという気持ちがあります。(以下略)」

学問、学者の「独立」問題

見事な発言である。そして、「私は首を切られても全く問題ないので言わせていただきますが、」に注目されたい。つまり、普通は、こういう発言をすれば、学者も審議会委員をクビになるのが普通である(この方はクビにならなかったが)。そもそも、普通は、座長的な委員については、任命前の「身体検査」で批判的な発言や研究発信が見つかればハネられる。

日本学術会議には、私も2006年から2014年にかけて2期8年関わったが、内閣府所管で国の予算が出ているとは言え、提言などを議論する会議の旅費も手当ても一銭も出なかった。それだけ「独立性」の高い組織のメンバーが、政府の政策に批判的だからと言って任命拒否されるというのは、研究者も逆らうべからずという強いメッセージである。

ただ、では、様々な場面において「独立した研究」とか「学問の自由」があるかというと、政府の政策に批判的であれば、役職(少なくとも政府関係の委員会の役職、場合によっては大学の役職)からも、研究資金からも遠ざけられる傾向は普通にあるのではないだろうか。「自由な学問」や発言を続けることは、すでに、それだけの覚悟がいることなのだと思われる。

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

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