【浅野純次・読書の楽しみ】第55回2020年10月19日
◎辻元清美 『国対委員長』(集英社新書、990円)
国会論戦で活躍する著者についてはよくご存じでしょう。一昨年、立憲民主党が結成されると国会対策委員長に抜擢されますが、それからの2年間、予想を超える悪戦苦闘の日々が待っていました。
各党には国対委員長がいますが、中でも最大野党の委員長と与党側の2人が差しで向かい合ってのエネルギーやら口舌やら腹芸やらが、国会運営の太宗を決めていくといっても過言ではないことがわかりました。
その駆け引きたるや並大抵のものでなく、脅したりすかしたりは毎度のこと。議案を通したい、はたまた委員会を開きたくない与党に、どうやって野党の言い分を通すか。知恵の働かせどころです。
そこには立法府を正しく機能させたいという正義感も感じられます。そして人間性が重要です。与野党で思想信条は異なっても、なるほどと相手に思ってもらえるためには言葉を大事にした信頼感が重要らしい。議席数だけで物事が決まってしまいかねない国会にあって、国対が大事なことがよくわかります。
語り口は嫌味がなく、政治家にありがちな宣伝臭がありません。与党(森山裕氏)との丁々発止や双方の人間味なども楽しめるし、山崎拓氏との対談もとても良かった。気持ちよく読めた一冊でした。
◎青山透子『日航123便 墜落の新事実』(河出文庫、880円)
群馬県御巣鷹山に日航ジャンボ機が墜落して35年。60代以上でなければ知ることもない歴史的事件ですが、3年前に話題を呼んだ本が今回、文庫化されました。この機会に一読をお薦めします。
著者は日本航空の元スタッフで、事件で亡くなったアテンダントの同僚の墓碑銘の意味も込められています。群馬県の小中学生たちの目撃情報などに刺激されて調査を重ねて書き上げた力作です。
地元の人々が衝撃音や炎などから墜落を確信しNHKなどに連絡したのにいつまでも行方不明と報じられたこと、日航機をファントム2機が追尾していたこと、機体や遺体が異常に炭化していてガソリンとタールの臭いが充満していたこと、など不可思議な事実がつづられます。
何があったのか。自衛隊が絶対に隠したかった事実があったのではないか。当時は中曽根首相の時代でしたが政治家たちも納得のいかない言動に終始しました。こんな大事件の真相を闇に葬り続けてよいのか。著者の執念には頭が下がります。
◎本間真二郎『感染を恐れない暮らし方』(講談社、1650円)
書店の店頭は新型ウイルス関連の本であふれ返っています。医学書から文明論、そしてハウツー本まで。選択に迷う人も多いでしょうが、パンデミックの時代の生活はどうあるべきかという点で、私の最も気に入った壮大な一冊をご紹介しましょう。
著者はウイルスやワクチンの専門家で、今回の新型ウイルスについても最新の知見をもとに明快に説明しています。
今回のウイルス感染が落ち着いても、変異したもの、新種のものが今後も次々に現れて結局、私たちは長い付き合いを余儀なくされるだろう、というのが、基本的な結論です。
ですからワクチンはもぐら叩きのようなもので、大事なことは自らの免疫力、抵抗力を高めることだと。ではどうするか。ここが本書のユニークなところで、食事、医療、薬、呼吸法、運動など私が長く実践しているところと共通する点が多々あり、励まされました。参考にしたい本です。
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