COVID‐19危機の中で狂気の食糧減産【森島 賢・正義派の農政論】2020年10月19日
菅義偉政府は16日、COVID‐19危機のなか、その終息も見えない状況の下で、主食である米の減産を提案した。減反の10万ヘクタールという大幅な追加が必要、というものである。さっそく、全中(全国農業協同組合中央会)の馬場利彦専務は、「過去にない数字だ」と指摘している。
この政府案に対して、全国の農村では、大きな不満が渦巻いている。COVID‐19危機の中にあるいま、国民の生活に不可欠な食糧を、安心して調達できるようにすることは、農業者の社会的責務である。農業者は、この責務を果たすために充分な米を生産しようとして、安い米価にもかかわらず、懸命な努力を重ねている。
しかし政府は、生産量を減らせ、という。狂気の沙汰としか言えない。正気なら、危機下では生命の維持に必要な食糧である米は、増産すべきではないのか。
政府が提案した減反強化の主な理由は、COVID‐19危機の影響で、米の需要量が減ったからだという。
たしかに目先をみれば減ったのだろう。飲食店の営業自粛が続き、外食が減ったからだろう。だが、今後もいまの勢いで減り続けるのだろうか。そうはならないだろう。
ここには、市場原理主義の、「いま」だけしか見ない、という刹那的な考えがある。
これを批判する考えの1つは、COVID‐19危機のなか、目先のことに捉われず、食糧の安定供給は重要だ、とする考えである。しかし、政府はこの考えを採っていない。
もう1つの批判点は、いまのCOVID‐19が、いつ終息するのか、を考えていないし、終息しても、次のウィルス感染症が世界に大流行するかもしれない、とする長期的な予想と備えがない。
◇
はじめに、食糧の安定供給を考えよう。
いまは、COVID‐19危機という非常時である。この非常時に対する食糧の備えは、寒々としている。政府は政府の責任で、平時でも、非常時に備えて、食糧を備蓄しておかねばならない。それは、古今東西をみても、例外なく政府の最重要な責任である。
だが、いまの日本の政府は、この責任を果たしていない。
主食である米の備蓄量は、僅か46日分しかない。毎年9日分だけ備蓄して、5年経つと放出する、という呑気な方式である。石油でさえ251日分の備蓄があるというのに、である。
米は石油と違って、1年に1回しか生産できない。だから、せめて石油なみに9か月くらいの備蓄がないと、国民は安心していられない。
◇
もう1つの批判点は、COVID‐19危機に対する今後の見通しの甘さである。政府は、来年前半には終息する、と考えている。それまでの緊急避難と考えている。だが科学者は、これを超楽観的とみている。
政治家の危機に対する姿勢は、最悪の事態が長い間つづいても、国民を不安に陥れないことである。楽観的な予想は、厳に戒めねばならない。だが、いまの政府は、その逆である。
いまのCOVID‐19が終息しても、それに続くようにして、次の新しいCOVIDが襲ってくるかもしれない。
2002年には、SARS―COVが襲った。
2012年には、MERS-COVが襲った。
そして2019年には、COVID‐19が襲ってきた。ほとんど、10年ごとにパンデミック(感染爆発)になっている。
今後、新しいパンデミックが頻発すると予想すれば、それに備えておかねばならない。
◇
食糧供給についての備えは、備蓄の拡充である。それは、非常時の備えというだけではない。食糧生産の拡充は、農村振興の王道である。
もしも、予想が外れて、せっかくの備蓄米が不要になっても、それは、むしろ喜ばしいことである。それは、無駄ではない。国民の安心を得るための費用であり、農村を振興するための費用である。
そして、備蓄米が何年か経って古米になれば、家畜の飼料にすればいい。やがて食肉になり、食糧になる。米は二重の役割を持って備蓄食糧になる。
家畜のことを英語ではlivestockというが、それは生きた(live)備蓄(stock)という意味なのである。
(2020.10.19)
(前回 学術会議問題は暗黒社会への入り口)
(前々回 科学を無視する菅政権)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(136)-改正食料・農業・農村基本法(22)-2025年4月5日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(53)【防除学習帖】第292回2025年4月5日
-
農薬の正しい使い方(26)【今さら聞けない営農情報】第292回2025年4月5日
-
【人事異動】農水省(4月7日付)2025年4月4日
-
イミダクロプリド 使用方法守ればミツバチに影響なし 農水省2025年4月4日
-
農産物輸出額2月 前年比20%増 米は28%増2025年4月4日
-
(429)古米と新米【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年4月4日
-
米国の関税措置 見直し粘り強く要求 江藤農相2025年4月4日
-
「@スポ天ジュニアベースボールカップ2025」に協賛 優勝チームに「令和7年産新米」80Kg贈呈 JA全農とやま2025年4月4日
-
JAぎふ清流支店がオープン 則武支店と島支店を統合して営業開始 JA全農岐阜2025年4月4日
-
素材にこだわった新商品4品を新発売 JA熊本果実連2025年4月4日
-
JA共済アプリ「かぞく共有」機能導入に伴い「JA共済ID規約」を改定 JA共済連2025年4月4日
-
真っ白で粘り強く 海外でも人気の「十勝川西長いも」 JA帯広かわにし2025年4月4日
-
3年連続「特A」に輝く 伊賀産コシヒカリをパックご飯に JAいがふるさと2025年4月4日
-
自慢の柑橘 なつみ、ひめのつき、ブラッドオレンジを100%ジュースに JAえひめ南2025年4月4日
-
【役員人事】協同住宅ローン(4月1日付)2025年4月4日
-
大企業と新規事業で社会課題を解決する共創プラットフォーム「AGRIST LABs」創設2025年4月4日
-
【人事異動】兼松(5月12日付)2025年4月4日
-
鈴茂器工「エフピコフェア2025」出展2025年4月4日
-
全国労働金庫協会(ろうきん)イメージモデルに森川葵さんを起用2025年4月4日