コロナ禍で健康に生き抜くために JCA客員研究員 伊藤澄一【リレー談話室・JAの現場から】2020年11月2日
コロナとの共存
コロナ災禍により世界では10月末時点で感染者累計が4560万人を超え、死者も120万人に迫るなど感染拡大の一途にある。西欧では再びロックダウンなどの行動制限に入っている。WHO(世界保健機関)は、世界人口の1割が感染していると警告を発している。日本でも10月末に感染者が10万人を超え、死者は1755人となった。第2波ピークの7月末からそれぞれ2.9倍、1.7倍の勢いとなっている。世界の7月末ピークの数値で10月末を見ると2.7倍、1.8倍と同様の推移であり看過できない。今後、北半球は本格的な冬を迎える。
世界が抱える三大感染症がエイズ、マラリアそして結核である。新型コロナは第4の感染症として加わることになる。日本人にとっての感染症は、何といっても結核である。結核は世界で毎年1000万人が罹患し150万人が死亡する難病である。日本では昨年1万5600人が罹患し2200人が死亡している。現時点で二つの感染症の趨勢を見ると、年間の死者数はほぼ似た数値になり、感染者数は新型コロナが結核の8~10倍になりそうだ。
また、新型コロナは、治癒に向けた知見や治療・予防法が結核ほどには確立していない点で、当面の脅威である。それでも、この半年余りの科学や医療の知見は目覚ましく、結核のように新型コロナも人間とのせめぎ合いとなる適度な共存関係になるのかもしれない。
免疫力を養う
山中伸弥先生などの研究者が指摘するファクターX論がある。なぜ、日本では新型コロナウイルスの死亡率が低いのか。その仮説として、(1)マスク着用・手洗い・うがい・消毒・入浴などの生活習慣、(2)3密(密閉空間・密集場所・密接場面)の回避、(3)何らかの遺伝的要因、(4)結核予防のBCG接種の影響などが指摘されている。現在、感染予防の世界共通の認識となった(1)、(2)の徹底は、微粒子のマイクロ飛沫感染と手指などからの接触感染を抑えることが実証されている。
日本では結核やインフルエンザ予防の徹底した取り組みが(1)の生活習慣となり、それがこの度の新型コロナの感染予防にも大きく寄与している。結核といえば、戦後、国を挙げて質の高い日本型BCGワクチンの集団接種に取り組んできた。それが新型コロナにおけるもう一つのファクターXであるとするなら、結核撲滅への永年の取り組みはコロナ災禍に対しても、想定外の福音となる。現在、世界の科学者がエビデンスを求めて研究しており、その解明を待ちたい。
一方で、早期かつ100%のワクチン開発は難しいとされ、日ごろの国や地域社会での備え(公助・共助)と、私たち一人ひとりの心がけ(自助)が必要となる。免疫学の宮坂昌之先生は、日々の生活で健康を管理して免疫力(細菌やウイルスと協調して身体を守るシステム)を高めに維持することが大切だと指摘する。そのために食事のバランス、農作業やウォーキングなどの適度な運動、睡眠、日光浴、定期的な健診、禁煙、ストレス回避などに努めるよう呼び掛けている。
人類には細菌・ウイルスとの共存共生の歴史がある。それを究明する免疫論が注目の科学となっている。JAグループが取り組んでいる健康寿命100歳プロジェクトは、宮坂先生の指摘と見事に重なる。この運動は、高齢者の心と身体の免疫力を維持・強化する自助のメニューでもある。
今冬は地方・高齢者への感染拡大と重症者の増加が懸念されている。島国日本の水際対策の緩和も課題となっている。まさにコロナ第3波における公助、共助、自助の総力戦が始まっている。
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