二子玉川で開催されたノウフク・マルシェ2020【熊野孝文・米マーケット情報】2020年11月10日
桃源郷とはどういうところか知らないが、以前ひょっとしたらここがそれに近い場所なのかもしれないというところに行ったことがある。その場所とは、産業廃棄物の不法投棄など荒れ放題になっていた里山を国や自治体の支援も受け、NPO法人が再生したところで、きれいに整備された木漏れ日の射す竹林には竹で作った上総掘りの井戸やインディアンテントがあり、そのわきには棚田が作られていた。ここには月一回程度のペースで東京の障害者施設の子供たちが手伝いに来て、里山を綺麗にするだけではなく、農作業も手伝っていた。
11月6日に世田谷区の二子玉川でノウフク・マルシェ2020という催しが開催された。この催しは農水省が主催したもので、障害者が農業分野での活躍を通じ、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく取り組みである農福連携を推進して行くもので、その一環として、農福連携に取り組んでいる地域の農産物及びノウフクJAS商品の価値を多くの人にPRするためのものと趣旨が述べられている。開催にあたって主催者の農福連携等応援コンソーシアムの皆川芳嗣会長(農林中金総合研究所理事長)が挨拶に立ち、障害のある人は全国に1000万人いるが、活躍の場はまだまだ少ない。一方、農業や高齢化で担い手が減少している状況で、この2つを結び付けることによって大きな価値を生み出せ、地域の活性化に繋がる。農福連携プロジェクトをどんどん広めたいと述べた。
この後、スペシャルゲストとしてTOKIOの城島茂さんが登壇した。城島さんは、これまで農業に取り組んで来た実績から今年10月からTBSで放送がはじまった農福連携プロモーション番組「とれたて!笑顔」に出演、障害者と一緒に農作業で汗をかき、その模様を紹介している。城島さんは、番組での感想とともに「ノウフクJAS」を紹介、この認証マークは障害者が生産行程に携わって生産された食品であることを示すもので、一般消費者に向け「素晴らしく美味しく出来ています。多くの人に手に取って欲しい」とアピールした。また、前事務次官でこの取り組みを推進して来た末松広行農水省顧問も登壇し城島さんとトークセッションした。
コメ関連の出展社では、群馬県前橋市の社会福祉法人ゆずりは社会障害福祉サービス事業所「菜の花」が自然栽培米のコシヒカリやもち米を展示・販売した。同会の管理責任者小渕久徳さんによると5年前から障害者にコメ作りを手伝ってもらっており、除草の他、種子の箱播き、更には精米時の袋詰め作業まで手伝ってもらい「彼らなしにはコメ作りが出来ない」ところまで来ているという。同じく自然栽培でコメ作りを行っている青森県黒石市の㈱アグリーンハートの小笠原剛販売主任もステージで同社が耕作放棄され保全管理されていた安入地区で生産しているコメを紹介、除草剤を使わないため障害者に雑草取りを手伝ってもらっているほか真空パックに詰める作業も手伝ってもらっており、大きな戦力になっているという。農水省は農福連携の事例集を紹介しており、この中にも自然栽培で耕作放棄地を解消した事例が取り上げられている。
愛知県豊田市にある社会福祉法人無門福祉会は平成26年から、農作業の場として、市内の耕作放棄地の再生を開始。障害者が、農地を維持する役割を担う。平成26年から、無肥料・無農薬の自然栽培に切り替えたことで、農業に手間をかけることが就労意欲の向上につがなり、耕作面積と売上高が増加するなど、経営に効果があった。自然栽培への切替により、農業に手間をかけることで就労意欲の向上につながり、3年間で耕作面積が4ha増加。また、平成29年度の売上高は、3事業所合計で約6900万円。農業技術の高さが評価され、平成26年からは、市内の農業法人から農作業の請負を開始。障害者が作業に習熟することにより、イチゴポットの土詰めは、同じ時間で100ポットから700ポットへと7倍の処理が可能になったと記されている。
冒頭で触れた里山再生地で広い敷地を案内してくれた人は以前IT企業に勤めていた人で、精神を患い会社を辞めこのNPO法人で働くようになり回復、手掛け始めたのが竹を特殊な方法で加工し、それを自動車の素材にするという開発を進めていた。鶏卵場や野菜畑を取り囲むように太陽光発電パネルが張り巡らされ、売電事業を行っていたほか、水田作では車椅子の人でも乗用出来る田植え機まで作っていた。生産されたコメは不動産会社と提携、マンションの住人に水田オーナーになってもらい提供するということまで行っていた。
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