水田の機能を見直してみよう【原田 康・目明き千人】2020年11月19日
コメの需要量が減っていることから水田政策の見直しが始まっている。水田はコメを生産すると同時に国土、地域を守り更に食料自給率を上げるカギを握っているので水田の持っている機能を改めて見直しをすることが必要である。
棚田は都会の人たちの癒しの場所、観光客を呼ぶために農家が作っているのではない。ハンド・トラクターも使えないような急斜面の狭い田んぼを手作業だけで、先祖代々受け継いで維持をしているのは、この棚田が地域全体の生活を成り立たせているからである。山に降った雨を棚田がダムとして水をコントロールして下流の農地、住宅、工場、海へと流すことによって地域全体の役に立っているからである。宇沢好文氏が提唱をされている「社会的共通資本」、「一つの国ないし社会が、自然環境と調和し、優れた文化的水準を維持しながら、持続的なかたちで経済的活動を営み、安定的な社会を具現化するための社会的安定化装置」の見本が水田である。
更に、食糧自給率についてみると全体では38%であるが、コメはほぼ100%である。低い大きな理由は畜産物にある。家畜の飼料のトウモロコシ、大豆、小麦はほぼ全量を輸入しているので例えば鶏卵は、日本の鶏が産んだものであるが輸入飼料を差し引いたカロリーベースの自給率は13%となる。同様に毎日飲んでいる牛乳や乳製品も27%となる。畜産物全体の飼料の輸入品を差し引いた自給率は16%である。飼料の原料のトウモロコシ、大豆、小麦などはアメリカ、オーストラリア等からの輸入であるがこれらの国の農地面積の広さ、収穫時期の天候が安定をしていて雨や台風が無いなどの条件の違いから価格競争ではとても勝てない。水田は人が食べるコメだけでなく飼料用のコメも栽培できる。
日本の農業についての一般的な見方は小規模、家族農業で生産性が低く国際競争力がない、これを大規模化して企業的経営, IT技術による合理化が必要というものである。分かり易く言えば農家の努力不足ということだ。日本の気候、地勢、社会風土の中で農家が頑張っても限界がある。水田をGDPへの寄与度だけではなく社会的共通資本としての役割、機能を評価することである。難しい条件の中での稲作は「社会的共通資本」として国民の理解が必要だ。
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