コロナの夜明けは近い【森島 賢・正義派の農政論】2020年12月7日
漆黒のコロナ禍の中に、ようやく薄明りが見えだしてきた。新技術で開発したワクチンの実用化が近づいてきたのである。
夜明けのない夜はない。コロナの夜明けは近い。
中国とロシアでは、すでにワクチンの接種を始めている。英国では、今週から接種を始めるし、米国は、今月中に始めるようだ。フランスなどの欧州諸国も、近く始めるという。
日本も、やがてワクチンの接種を始めるだろう。希望する全ての国民への接種は、まだまだ先になるが、春になれば、一部の国民への接種を始めるだろう。
コロナの夜明けは近い。しかし、いまは夜明け前の暁闇の中にある。そして、感染の急激な拡大は続いている。ここで、あらためて気を引き締めねばならない。
いま行うべきことは、当面する感染拡大の阻止である。それを怠ってはならない。その上で、新ワクチンの安全性を充分に確かめ、死者数の最小化を計ることである。それができれば、重症化も阻止できるし、重篤な副作用も軽減できるだろう。
上の図は、死者数という断面でみた、日本のこれまでのコロナ対策の失敗である。それを如実に示している。
これは、世界の他の地域と比べて、死者数が少ない東アジアと東南アジアについて、主要国・地域の人口100万人あたりでみた、コロナによる死者数である。
日本は、恥ずかしいことだが、最下位に近い第9位である。
なぜ、こんな恥ずかしいことになってしまったのか。それは、政治が対策を誤ったからである。
◇
日本のコロナ対策が失敗した原因は、象徴的にいえば、「三密」にある。
この考えは、コロナは自分で勝手に人から人へ動いて感染するのではなく、人たちが接近しているときに飛沫などをとおして感染するのだという。だから人と人との距離を充分にとれば、コロナは途中で下へ落ちてしまって、近くの人まで届かない。だから、人には感染しない、という理屈である。
では、上の図で日本より上位にある国々は、人と人との距離を、日本よりも充分にとったことが原因で上位になったのか。
そうではないだろう。
◇
「三密」は、このように、まことに、もっともらしい理屈ではあるが、しかし、感染の局所的な側面しか見ない一面的な理屈である。つまり、コロナ禍の全体像を見ていない。
こうした「木を見て、森を見ない」認識が、コロナ禍をここまで拡大し、多くの犠牲者を出してしまった。この点で、「三密」は社会的に有害な考えである。そしていま、この考えが社会の隅々にまで瀰漫している。
全体像をみて対策を行うのは、政府の責任である。しかし、「三密」の考えは政府の責任を追及しないで、国民にだけ責任を負わせようとする、反国民的な考えである。
そして、この考えが破綻したことを示したものが上の図であり、最近の感染の急激な拡大である。
◇
感染症対策の大原則は、早期検査と早期隔離、治療だという。そうして、市中の感染源を最小限に抑えることだという。
感染源を最小限に抑えれば、新規の感染者を最小限に減らすことができる。そうすれば、死者数を最小限に抑え込める。
この大原則を、日本は初めから行ってこなかった。そして、いまも行っていない。だから、多くの感染者が市中の到る所に放置されていて、感染源になっている。
上の図で示したように、日本はコロナ対策に失敗してきたが、その原因は、ここにある。市中にいる多くの感染者を減らそうとしなかったのである。失敗の結果、医療崩壊に陥ったいま、一部の人たちは、ようやくこの原因が分かってきたようだ。
◇
いまからでも、絶望的に遅い、というわけではない。コロナが終息するまで、感染症対策の大原則に従って、死者を最小限に抑えねばならない。
そのために、早急に行うべきことは、この大原則に従って、検査体制の拡充と、隔離、治療体制の拡充、整備を励行することである。GoTo何とやらは、その後でいい。
夏になれば、コロナの先行きが見えてくるだろう。それまで、コロナ対策に失敗した政治への怒りを溜め込んでおこう。やがて、その怒りを爆発させる機会がくる。来年10月までには、必ず総選挙がある。そこで厳しい審判を下そう。
そして、今後10年以内に襲って来るであろう新々型コロナを迎え撃って、無害化するための万全な政治体制を作っておこう。コロナとの共存は御免だ。
(2020.12.07)
(前回 論文を書くことは恥をかくこと)
(前々回 コロナ対策の非科学と無責任)
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