今年の漢字とノーベル平和賞――「三密」超え「明日」への希望【記者 透視眼】2020年12月14日
やはり今年の漢字は「密」に。今春以降のパンデミックを思えばうなずく。記者の「透視眼」でのぞけば、こんな〈暗闇〉の一方で〈明日〉への希望の火も灯る。ノーベル平和賞には国連世界食糧計画(WFP)。改めてコロナと食料と平和を考えるきっかけにしたい。
米国〈コロナ敗戦〉第二次大戦超す
新型コロナウイルス感染拡大が止まらない。特に深刻なのは米国だ。1日の感染者数が20万人ペースで増え続け、1日当たりの死者数も3000人を超えた。米大統領選は、ほんの半年前までトランプ有利の見方が根強かったが、現職大統領敗退の大きな要因はコロナ対応だろう。まさに〈コロナ敗戦〉と言っていい。
米国コロナ禍は一つの節目を迎えた。米ジョンズ・ホプキンス大調べの米国内死者数が29万2141人と、第二次世界大戦時の米国死者数29万1000人余をついに超えた。今週14日の週は30万人台を積み上げている。
米国にとって国民の命は何よりも大切で、象徴とされてきた〈数〉がベトナム戦争。米国が初めて敗れた戦いで、この時の米兵の死者は5万8220人。この〈数〉を超すことは自国の存亡に関わる重大事と受け止められてきた。
だがコロナ死はその対ベトナム戦の5倍を超す。しかも日米が死闘を交えた先の大戦死者数もついに超えた。バイデン次期大統領は「100日計画」と3カ月強でコロナ対策の目途を立てたいと強調している背景もそこにある。
漢字は「感じ」
さて今年の漢字は「密」。2位は「禍」、3位「病」。むろんコロナ禍を反映した。
嘆いてばかりではいられまい。半年前の5月初めに目にしたホッとする話題を思い起こす。「コ+ロ+ナ=君」と会えない思いを詠み希望をつなぐ短歌にした。イラストレーターのタナカサダユキさんがイラスト入りでSNSに投稿した。
〈しばらくは離れて暮らす コとロとナ つぎ逢ふ時は 君といふ字に〉。なるほど。〈君〉を分解すればコ・ロ・ナ。当コラム読者も手のひらになぞってみることをお勧めする。ガッテン、そして少し笑みがこぼれるはずだ。漢字は「感じ」だとつくづく思う。今年の感じ「密」を踏まえ、さて来年はどう前に進もうか。
国連WFP「食料は平和への道」
いつもにも増して暗い師走だが、WFPのノーベル平和賞受賞にちょっと勇気をもらう。そう感じたかも多かろう。1900年代初頭に設けられ120年近い歴史を持つこの同賞はいわくつきである。平和賞はダイナマイトを発明しノーベル賞創始者のアルフレッド・ノーベルの遺言に基づく一つ。
他の授賞式はスウェーデン・ストックホルムだが同賞だけは隣国ノルウェー・オスロ。紛争が絶えなかった両国の平和と融和を願い、わざわざオスロで開く。こんな趣旨からいくと今回のWFPの受賞はふさわしい。10日の授賞式でビーズリーWFP事務局長は「われわれは食料が平和への道だと確信している」とスピーチ。コロナ禍で飢餓人口が増えている実情も憂いた。来年創設から60年を迎え、国連食料農業機関(FAO)が設立に関わる。だから本部はおなじローマにある。
四半世紀前の1996年秋のローマでの出会いを思い出した。史上初の世界食料サミット。ローマのレストランで関係者と夕食を共にしているとたまたま隣席にWFPの日本人スタッフら。「飢餓と食料問題の実情を知りたいなら途上国のどこでも案内しますよ」。さらにこう付け加えた。「ただし身の安全の保障は分かりません。紛争地区はどこに地雷が埋まっているか分かりませんので」と。
「透視眼」で見ると、今もWFPは体を張って〈命の糧〉を飢餓最前線に届けようとしている姿が映る。〈食料=平和〉。この言葉を年末に当たりかめしめたい。(K)
重要な記事
最新の記事
-
【座談会・どうするJAの担い手づくり】JA鳥取中央会・栗原隆政会長、JAみえきた・生川秀治組合長(1)2025年9月18日
-
【座談会・どうするJAの担い手づくり】JA鳥取中央会・栗原隆政会長、JAみえきた・生川秀治組合長(2)2025年9月18日
-
【座談会・どうするJAの担い手づくり】JA鳥取中央会・栗原隆政会長、JAみえきた・生川秀治組合長(3)2025年9月18日
-
【JA全農の若い力】家畜衛生研究所(3)病気や環境幅広く クリニック西日本分室 小川哲郎さん2025年9月18日
-
【全中・経営ビジョンセミナー】伝統産業「熊野筆」と広島県信用組合に学ぶ 協同組織と地域金融機関の連携2025年9月18日
-
【石破首相退陣に思う】米増産は評価 国のテコ入れで農業守れ 参政党代表 神谷宗幣参議院議員2025年9月18日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】協同組合は生産者と消費者と国民全体を守る~農協人は原点に立ち返って踏ん張ろう2025年9月18日
-
「ひとめぼれ」3万1000円に 全農みやぎが追加払い オファーに応え集荷するため2025年9月18日
-
アケビの皮・間引き野菜・オカヒジキ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第356回2025年9月18日
-
石川佳純の卓球教室「47都道府県サンクスツアー」三重県で開催 JA全農2025年9月18日
-
秋の交通安全キャンペーンを開始 FANTASTICS 八木勇征さん主演の新CM放映 特設サイトも公開 JA共済連2025年9月18日
-
西郷倉庫で25年産米入庫始まる JA鶴岡2025年9月18日
-
「いざ土づくり!美味しい富山を届けよう!」秋の土づくり運動を推進 富山県JAグループ2025年9月18日
-
日本初・民間主導の再突入衛星「あおば」打ち上げ事業を支援 JA三井リース2025年9月18日
-
ドトールコーヒー監修アイスバー「ドトール キャラメルカフェラテ」新発売 協同乳業2025年9月18日
-
「らくのうプチマルシェ」28日に新宿で開催 全酪連2025年9月18日
-
埼玉県「スマート農業技術実演・展示会」参加者を募集2025年9月18日
-
「AGRI WEEK in F VILLAGE 2025」に協賛 食と農業を学ぶ秋の祭典 クボタ2025年9月18日
-
農家向け生成AI活用支援サービス「農業AI顧問」提供開始 農情人2025年9月18日
-
段ボール、堆肥、苗で不耕起栽培「ノーディグ菜園」を普及 日本ノーディグ協会2025年9月18日