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(212)細部から全体を見る【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2020年12月25日

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2020年最後のコラムになりました。早いものです。
さて、先週、先々週とコロナの影響を受けた米国のレストラン業界の話を書きましたが、先々週の最後に記した「世代規模での業界の才能、知識、企業家精神が失われつつある」ということが引っかかっています。「世代規模」「才能」「知識」は直感的に理解しやすいのですが、「企業家精神」の喪失、これを今年の最後に少し記してみます。

そもそもこのフレーズは全米レストラン協会による2020年12月7日付のプレスリリースを紹介したもので、原文は末尾に記載したアドレス(※1)のとおりである(なお、文章の最後にof がダブっているのは恐らくタイプミスのため、下記からは削除した。)

Only 48% of these former restaurant owners say it is likely they will remain in the industry in any form in the months or years ahead. Our nation is losing a generation of industry talent, knowledge and 【entrepreneurial spirit.】(太字は筆者)

ここで気になる点は3つある。第1は、【元レストラン・オーナーの48%だけ】が数か月か数年先に、何らかの形であれ業界に残るだろう述べていること、第2は、この点、他業界はどうかということだ。さらに第3は、【「起業家精神」】を失いつつある...とは具体的にどういうことか、である。

第1の点、調査結果をそのままに受け止めてみよう。数か月と数年ではかなり時間的に差があるが、それでも事業継続は極めて厳しいと考えていることに違いはない。そこで問題は、第2の点、他業界の傾向はどうかという点になる。

そのようなことを考えてウェブを漁っていたところ、興味深い記事を目にした。

米国の中小企業経営者向けに実施された同様の調査である。英語に「align」という単語がある。これは辞書では「...を一直線に並べる、整列させる」とか組織やグループなどを「提携させる、連合させる」という意味がある。

中小企業が次々と起業される米国では、こうしたスモール・ビジネスのオーナーや関心を持つ人が推薦できる相手をオンラインで紹介するネットワークとして、Alignableという会員数550万人以上のグループ(運営はAlignable Corporation)がある。これは同社の調査センターが実施した米国スモール・ビジネスの第4四半期収益について、9201人のオーナーに尋ねた調査のようだ。その結果は、48%のオーナーが年末までに閉鎖の可能性があると答えているという。2か月前の42%が一気に上昇したようである。英語の元記事は下記の※2で読むことができる

なお、全米レストラン協会の調査対象は既に述べたように合計約6250(6000+250)であったし、Alignableは9000なので母数は異なるが、小規模なレストラン・オーナーが両者に属するということは十分に考えられる。「48%」は偶然の一致かもしれない。筆者にはこの両者がどこまで重複しているのかは不明なため、そのあたりは割り引いて頂きたい。わかることは、いずれにせよ、現実はかなり厳しい...ということだけである。

さて、最後の第3の点、「起業家精神」の喪失について、少し記しておきたい。スモール・ビジネスが消失しても人々のニーズは存在する。従来、地域に根付いた形で活動していたレストランを含むスモール・ビジネスが、コロナの影響で続々と閉鎖に追い込まれるとどうなるか、である。誰かが、必要な機能を担わなければならない。

例えば、筆者も最近は、直接書店で本を購入するよりは、パソコンや携帯の画面から必要な本を確認し、クリックだけで済ます行動が中心になってきた。コロナの影響で非接触型の活動が盛んになれば、こうした動きは益々促進されるであろう。

地域創生や地域再生という言葉の影で、それを支える我々ひとりひとりが実は日常生活の何気ない「ワンクリック」を無意識に重ねることで、本来は地域に残るはずであった膨大な需要が、実は「クリック⇒配送」という巨大な仕組みを持つ別の組織にシフトしていることを理解しておいた方が良いかもしれない。

* *

年の瀬にあたり言えることは、来年以降もこの傾向は継続する可能性が非常に高いということくらいかもしれません。農家も経営者である以上、「才能」「知識」、そして「起業家精神」は不可欠です。これらが喪失した時には単なる雇用労働者になります。

米国で起こったことが常に日本で起こるとは限りませんが、仮に同様のことが日本で本格的に起こるとしても多少の時間差はあると思います。そのタイムラグの間に、1人1人がしっかりと今後を考える年になりそうです。

それでは皆さま、良いお年をお迎えください。

※1:https://restaurant.org/downloads/pdfs/advocacy/nat-l-restaurant-assoc-ltr-to-congress-12-7-2020.pdf 

※2:https://www.alignable.com/forum/alignable-48-of-small-businesses-risk-closing-for-good-new-poll


本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
三石誠司・宮城大学教授のコラム【グローバルとローカル:世界は今】

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