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再生可能エネルギー振興の建前と本音【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】2021年1月7日

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環境に優しく、農家収入の増加にもつながる再生可能エネルギーは推進されるべきという一般論は正しいが、それを大義名分にして、「今だけ、金だけ、自分だけ」のオトモダチ企業の儲けのために、農林水産業と地域・環境・国土を破壊する蛮行が横行しようとしている。

まず、儲けさせたいオトモダチ企業がいて、再生可能エネルギー振興などを大義名分にして、既存の農林漁家が守ってきた資源を取り上げて乱用できるような法改正を規制緩和の名目で進めようとしている構造があることを見抜かなくてはならない。

そもそも、種子法の廃止、農業競争力強化支援法、種苗法改定、漁業法改定、森林の2法などの一連の政策変更の一貫した理念は、間違いなく、「公共政策や共助組織によって維持されてきた農林漁家の営みから企業が自由に利益を追求できる環境に変えること」である。

木質バイオマス発電をして儲けたいオトモダチ企業のために、憲法違反との内閣法制局の制止も聞かずに、人の山、国の山を勝手に伐って利益は自分のものにして、植林もしなくていい(植林は森林環境税で負担する)ような法の制定・改定が強行された。

銚子沖で洋上風力をして儲けたいと言う同じオトモダチ企業のために、海の資源を守ってきた漁家の財産権(漁業権)を強制的に補償もせずに取り上げて、営利企業に付け替えることができるとする、これまた憲法違反の法改悪が行われた。

これらの再生可能エネルギー振興の実態は、「今だけ、金だけ、自分だけ」のオトモダチ企業の儲けを増やすための制度変更なのであり、再生エネルギーという資源・環境に優しいはずの事業でありながら、目先の自己利益追求に走り、資源・環境の破壊につながりかねない。これでは本末転倒である。もちろん、農業生産と両立させる形で農家の副収入の増加につながるケースも多々ある(本来はそうあるべき)ことは強調しておくが、それをカムフラージュ的に使い、農林漁家から資源利用の権利を剥奪するなら、農林漁家の利益の増加になるわけもない。これが基本的構造である。

「国家私物化特区」でH県Y市の農地を買収したのも同じ企業だが、今度は、企業の農地取得を全国で全面的に認める全面展開を国家戦略特区諮問会議のT氏が要請している。T氏はY市の農地取得に関わった企業の社外取締役である。これを「利益相反」という。露骨な利益相反は慎むべきと筆者が某紙にコメントしたら、「よく言ってくれた。しかし体は大事にした方がいい」という心遣いの電話が立派な方から夜中にあった。

企業の農地取得と農業委員会の任命制は関連している。そうした企業の関係者が全国市町村の儲けられそうなところを選んで農業委員になることを模索しているという。農業委員会は農地転用許可の権限を持っているから、取得して転用して、環境に優しい利用の名目で再生可能エネルギー事業で環境を破壊しつつ、儲けられる間だけの「食い逃げ」的な事業が展開される可能性がある。

「攻めの農業・林業・漁業」の本質は、既存の農林漁家を農地・山・海から引き剥がし、ビジネスとお金を奪い、特定のオトモダチ企業が儲けの道具にするだけだから、かりに、少数の「今だけ、金だけ、自分だけ」の企業が短期的に利益を増やしても、地域も、国民も、資源・環境も、国土も疲弊し、社会は持続できなくなる。これ以上は許容できないレベルにきているように思われる。

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

鈴木宣弘・東京大学教授のコラム【食料・農業問題 本質と裏側】 記事一覧はこちら

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