BHC、パラチオン、セレサン石灰の登場【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第132回2021年1月14日
ジクロロジフェニルトリクロロエタン、高校の化学の授業で先生が冗談まじりにで教えてくれたDDTの正式名称、他のことはすべて忘れているのになぜかこれだけは今でも印象的に覚えているのだが、このころ(1950年代前半)にはDDTにかわってBHCが殺虫剤として使われるようになっており、農業生産にも利用されるようになっていた。
私の記憶に残っているのは生家の畑での使用である。お盆が終わると東京市場向けの白菜の播種が始まる。きれいに整地して畝立てした畝の上に、藁打ちに使う木槌の下の方でトンと軽く突いて丸い円形の浅い穴をあけ(一尺間隔ではなかったろうか)、そこに3~4粒の種を撒き、さらにその上にBHCの粉をほんのちょっぴり撒いて土をかぶせる。こうすると幼苗を食べに来た虫が死んでしまう、あるいは寄ってこないので、本当に助かるのである。この種撒きの作業はちょうど夏休みの最後の頃なのでよく手伝わされたのだが、結婚したばかりのころの家内がその手伝いをしたことがあり、木槌による穴あけが面白かったと今でも話すのだから少なくとも1960年ころまではやっていた。
これは効き目があった。欠株はまったくといっていいほどなくなった。そして生育もそろい、管理や収獲、出荷もしやすくなった。
稲作でもこのBHCを散布したと思うのだが、記憶にない。覚えているのはパラチオンだ。これはメイチュウなどの駆除にものすごく効き目があると父から話を聞いていたのだが、大学院入試の面接試験で病理の教授からパラチオンの功罪について質問があった。そこでこう答えた、メイチュウやウンカなどの害虫の駆除が功で、罪は人体などに悪影響をおよぼすことだと。
研究室に帰ってきてその話をしたらこう冷やかされた、パラチオンの害は魚を殺すことだ、先生の好きな釣りができなくなる、こう答えたらもっと採点がよくなったろうにと。そういえばそうだとみんなで大笑いしたものだった。
でも、後で私が考えたのは次のことも話せばよかっということだった。パラチオンでもっとも利益を受けたのは九州で、三回も被害を与えるメイチュウが駆除される上に早播き早植えが可能になり、さらに台風の被害を回避することができたからだ、これから収量が上がっていくだろうと。実際に九州の反収は急上昇し、なかでも佐賀県などは1965、66(昭40、41)年と2年連続で米の反収日本一に輝くことになった。これについてはまた後で述べたいと思っている。
いま虫害の話をしたが、もう一つ大きな問題は病害である。化学肥料を多く投入すると稲が過繁茂、弱体化してまして病気が発生しやすくなる。稲作ではとくにイモチ病が大きな問題だった。東北などの寒冷地はこの被害を受けやすく、冷害に加えてのイモチ病で収穫皆無にすらなった。
病害に対する薬剤としてはボルドウ液が戦前からあり、白い粉を水に溶かすと青色に変わり、それを手押し式のポンプに入れ、肩にかけて噴霧して防除したものだったが、生家では畑の野菜にだけ使い、田んぼには使わなかった。費用対効果を考えたのだろう。
戦後ボルドウ液がまた出回るようになったころ、1950年ころだったと思うのだが、イモチによくきく薬としてウスプルンが使われるようになった。種子消毒用として使っていたのではなかったろうか。なぜかこの名前も記憶に強く残っている。
その2~3年後聞いたのはセレサン石灰という名前だった。イモチ病に対する効果がきわめて高い、適期に散布すると被害は抑えられるという。
実際に、1954(昭29)年の冷害でセレサン石灰を適期に施用した田んぼでは被害を軽減することができた。
セレサン石灰、東北地方などイモチ多発地帯にとってこれはまさに救命主であり、増収のための多肥にとっても不可欠となった。
多肥多收にとって後残る問題は除草だった。
重要な記事
最新の記事
-
コスト考慮した価格形成 関係者に努力義務 不十分なら勧告・公表 農水省2025年2月10日
-
農林中金 純損失1兆4000億円 第3四半期決算2025年2月10日
-
【田代洋一・協同の現場を歩く】山形・農事組合法人魁 助成金頼り後継不安 ソバ転作で水田守る2025年2月10日
-
日本カーリング選手権 男女日本代表チームに副賞の米など贈呈 JA開催2025年2月10日
-
「佐賀牛×Art Beef Gallery 佐賀牛ローススライス「ベルサイユのさが」限定パッケージ」販売 JAタウン2025年2月10日
-
フェアな値段を考える「値段のないスーパーマーケット」開店 農水省2025年2月10日
-
南海トラフ地震に備え炊き出し訓練「あったかごはん食堂」開催 生活クラブ愛知2025年2月10日
-
完熟きんかん「たまたま」&日向夏「宮崎ひなたフルーツフェア2025」開催中2025年2月10日
-
JAと連携 沖縄黒糖と北海道小麦の協同「産直小麦の黒かりんとう」発売 パルシステム2025年2月10日
-
牛乳の魅力発信「牛乳って、いいな。動画コンテスト」を初開催 関東生乳販売農業協同組合連合会2025年2月10日
-
福島県産食材を活用 YouTubeチャンネル「ふくしま給食ものがたり」公開2025年2月10日
-
季節限定「とびきり大粒ヨーグルト 白桃&アロエ」新発売 北海道乳業2025年2月10日
-
福島のトップブランド米「福、笑い」食味コンテスト 受賞者決定2025年2月10日
-
国産の桃の果汁そのまま「国産白桃ストレートジュース」デビュー 生活クラブ2025年2月10日
-
地産全消「野菜生活100 本日の逸品 愛媛せとか&伊予柑ミックス」新発売 カゴメ2025年2月10日
-
「女性のための就農お悩み解決セミナー」24日に開催 埼玉県2025年2月10日
-
「ACAP消費者志向活動表彰」移動スーパー「とくし丸」が消費者志向活動章を受賞2025年2月10日
-
寺田心とインフルエンサーも登場 ミルクランド北海道 新CM第2弾公開 ホクレン2025年2月10日
-
山口県内初のコメリパワー「長門店」23日に新規開店2025年2月10日
-
【人事異動】JA三井リース(4月1日付)2025年2月10日