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【浅野純次・読書の楽しみ】第58回2021年1月18日

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◎片山善博『知事の真贋』(文春新書、880円)

コロナ禍に支持率急落で官邸が浮き足立つ中、知事のほうの通信簿はどうなのでしょうか。本書は知事の仕事と各知事の実力を詳細に分析していて教えられるところ大でした。
目立つ知事ほどやっている感が強い好例は小池都知事でしょう。情報公開は遅々として進まず、都政にはあまりに多くの問題があって、知事というより広報係長のような印象だったが、それで都の仕事を邪魔しなかったとすれば案外それでよかったのかも、と痛烈な皮肉が面白い。

吉村府知事については都構想の矛盾が鋭く指摘され、全国多くの知事の国依存、横並び意識など問題点が具体的に挙げられます。

ただし単なる批評でなく、地方自治の根幹に関わる指摘、例えば法律の読み方や行政のあり方、国との関係など自治省、鳥取県知事、総務相などを通じて国と地方に通暁している著者ならではの目からウロコの指摘がたくさんありました。

国政と同等に地方自治は大事です。本書は地方の住民に何ができるか、何をすべきかを教えてくれるとても良い教材と思います。

一方で、優れた仕事ぶりの知事も登場します。仁坂和歌山県知事もその一人。テレビにはあまり登場しませんが、的確な対応を知り、感服しました。

◎藤原辰史『縁食論』(ミシマ社、1870円)

縁食とは聞きなれない言葉ですが、著者の造語です。縁あっての縁。懐かしい縁側の縁でもあります。孤食の反対、そして共食でもない。孤食は今、日本の大問題の一つであり共食とは家族や仲間たちと気心知れて食べることです。

本書は「孤食と共食のあいだ」(副題)に縁食があると位置づけ、たとえ知らない同士でも緩やかな関係性の中で食事する場を構築しようと提言します。

飽食の時代と言われながら、食することのできない人たちがたくさんいます。だから炊き出しが行われ、子ども食堂が開設されているのでしょう。

ここで大事なのは、子ども食堂は食事のできない子どものためばかりでなく、同様の大人も一緒に、自由に(つまり話しながらでも、黙々とでも)食することができる点です。

著者は子ども食堂を全国に広めたいと言います。もちろんボランティアの力が不可欠ですが、こんな時代、ほんとにそうなってほしい、余剰野菜や果物が生かされれば何よりでは。そう、思いました。

◎長尾和宏『コロナ禍の9割は情報災害』(山と渓谷社、1320円)

テレビでコロナウイルスについての知識を日々吸収されておられる方に、だからこそ読んでほしい本です(私もワイドショーは見ますが、いつも疑いながら見ています)。

本書を読んで納得することは多々ありました。第1章「ステイホームは大問題」からしてそうです。「コロナを怖がり家に閉じこもる生活がメンタル不調、フレイル、生活習慣病の悪化を招く」、だからステイホームタウン。著者は「近場を歩くべし」と力説します。

歩いて自然免疫をつける。そうすればたとえ感染しても重症化しない。それがカギであることは疑いないのでは? 好中球やNK細胞など免疫の仕組みもよくわかりました。

警告、警鐘の番組ばかり見て「心は萎縮し、体は太る」のではなく、よく歩く、腸内細菌が育つ食事を心掛ける、肥満から脱却する、などで自然免疫力を強めよう、という著者の提案は理にかなっているはず。コロナ不安症候群の方、ぜひどうぞ。

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