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塩化ビニール利用の始まり【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第133回2021年1月21日

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腐る、腐敗する、いやな言葉である。食えなくなる、使えなくなる、もったいない、処理にも困る。腐ったもののあの臭い、見た目、感触、吐き気すら覚える。

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腐らなければいいのに、子どものころから今まで何回そんなことを考えたろうか。

でも腐らなければ困る、腐らなければ、腐って分解しなければ世の中ゴミだらけになってしまう。さらに腐ってもらわなければ漬け物やチーズは食べられず、植物は育たず、人間など動物は生きることができなくなってしまう。

それはわかっている、わかってはいるけれどついつい腐らないものを求めてしまう。そこに出てきたのが塩化ビニールだった。

私が最初にビニールの農業生産面での利用を見たのは保温折衷苗代をつくっているときだった。前に書いたように(注1)、短冊状に種子を播いた苗代の湿った土の上に油紙を敷き、縄でそれを押さえて保温するのだが、その油紙が半透明のビニールに変わったのである。紙ではないからきわめて丈夫、濡れても破れない、腐らない、日光もよく通す、管理作業もしやすいとくる。しかもそれほど高価でもない。これで安定多收ならそれにこしたことはない。だから普及所の指導にしたがってみんなビニールに切り替えた。50年代に入ってすぐだったと思うのだが。

さらに生家の場合は、野菜の育苗のために春先利用した「温床」に用いる障子、これに貼る紙をビニールに替えている。それをちょっと説明してみたいのだが、前に本稿で説明している(注2)のでそれを参照しながら聞いていただきたい。

平均的な大きさの温床には4枚の障子(0.9×1.2メートルの長方形の桟の縦に四本の組子=竪子が入っている)を被せて保温するのだが、毎年春先に温床つくりが始まると、小屋に保管してあった障子(前年貼ってあった紙はきれいに剥がされている)を取り出し、桟と竪子に糊をつけ、白い紙を貼る。糊が乾いたら子どもの私の出番だ。紙に菜種油を塗るのである。大きめの割り箸の上の方に団子状に丸めた布きれをくくりつけ、その布団子に温めた菜種油を浸し、それを真っ白の障子に塗る。障子の紙は油色=茶色に染まる。一面茶色になったら終了、天日に乾かす。こうやって何十枚もの障子に塗る、このときの油のにおい、最初はいい匂いだが、だんだん臭いに変わってきて鼻がおかしくなる。

ずらっと並べられた障子の油が乾いたら使用可能だ。そしてキュウリ、トマト等の種を播いた温床の上を覆って保温、採光の役割を果させる。

このように油を塗った乾いた障子の上に雨が降ると水滴は球状になってもコロコロと転がり落ちるだけ、破れたりはしない。直接外気が入らず、太陽の光は直射ではないけれど軟らかく入るだけ、土の下に入っている堆肥・生ゴミの発酵熱が逃げていくのも防ぐ。

このように障子は大きな役割を果すのだが、やはり紙は紙、破れやすい(もちろん修復はするが)し、熱も逃げやすい。

ビニールはそんなことはない。しかもそれほど高価ではない。50年代に入って2~3年過ぎにはみんなビニール障子に切り替えたような気がする。

やがてビニールはいろんなところで使われるようになってきた。ビニールによるトンネル栽培、ビニールハウス、被覆、包装等々、さらには生活面でも使われるようになってきた。

しかし、ビニールも永久に使用できるわけではない。使っているうちに劣化してくる。再利用できないので廃棄しなければならなくなる。普通の廃棄物であれば放置しておいても腐って消滅するのだが、ビニールはなかなか腐らない、分解しない。当時のことだから農村部にはゴミ収集車も来ない。燃やせばいいけれども、燃えにくいし、煙の悪臭もひどい。やむを得ず屋敷裏にでもまとめて放置しておくより他ない。都市部でも不用になったビニールが放置される。

春先の強風が吹き荒れるころ、そうした捨てられたニールが吹っ飛び、列車の架線にひっかかって停電し、列車が停まるなどということがしばしば起こるようになった。いい迷惑だと思っていたのだが、それが地球環境汚染にまでつながるとは思いもよらなかった。

「腐る」という自然現象がいかに重要なものなのか、改めて感じさせられたものだった。でも当時は自然破壊、地球環境汚染などということはまったく考えなかった。社会的にも問題にしていなかった。

ビニールだけではなかった、化学肥料の多投、農薬の投入は田畑の生態系、自然生態系に悪影響を与える、それどころか破壊するという一面をもっていたのである。次回述べる予定でいる除草剤もそうだった。

農業が地球環境汚染の加害者になる、そんなことは当時考えもしなかった。

(注)
1.JAcomコラム・2020年6月25日掲載・拙稿「保温折衷苗代と誘蛾灯」参照

2.JAcomコラム・2020年11月12日掲載・拙稿「『温床』による自然エネルギーの活用」参照

酒井惇一(東北大学名誉教授)のコラム【昔の農村・今の世の中】

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