コロナ無策【森島 賢・正義派の農政論】2021年1月25日
緊急事態のなかで、政府はどんな対策をしようとしているか。その内容をみると、国民に対して外出の自粛と営業の自粛を要求するだけだ。大声で要求するだけで、政府自身が行うべきことを何もしない。国会に対しては、自粛の要求に従わない人への罰則、などという提案さえ行っている。
こうして政府は、緊急事態から脱することができなかったとき、自粛が不充分だったとして、その責任を国民に押し付けようとしている。
ここでは、国民の自粛はどうでもいい、と言いたいのではない。緊急事態だから、それは必要だろう。だが、緊急事態の中で、政府が責任をもって為すべき重要なことが他にある。
それは、感染拡大を阻止することに最大の目的を据えて、そのために医療体制を整備することである。検査体制を拡充して、市中にいる感染者を見つけ出し、隔離体制と治療体制を整備して感染者を市中から隔離すれば、市中の感染源が減って感染拡大を阻止できる。
これは、感染を根元から絶つ、という方法で、感染症対策の基本だが、政府のコロナ対策は、これを怠ってきたし、いまも怠っている。無策なのである。
政府の対策は、感染者を市中に放置して、神の怒りを鎮め、自然に抗体ができて自然に治るのを待つ、というものである。つまり、無策である。
それまでの間、多くの感染者が犠牲になる。Googleの予測によれば、コロナ発生以来の死者の総数と同じ程度の数の死者が、今後4週間に出てくるという。これが、無策の結果だろう。
そもそも、なぜ緊急事態に陥ったか。政府は、医療が逼迫しているからだという。実は、逼迫どころか崩壊しているのである。医療を受けられずに死に至る感染者が続出している。こんなことは、文明国なら、あってはならぬことである。
では、なぜ崩壊したのか。政府は、感染者が増えたからだという。だが、この考えは一面的である。
物事には需要と供給の両面がある。医療崩壊の原因は、供給を増やすこと、つまり医療体制の拡充と整備を充分に行わなかったからである。感染拡大の原因が科学的にみて充分に解明されていないいま、政府が行うべきことは、検査と隔離・治療の体制の整備である。国民に危機感を煽って、非科学的な説教を垂れることではない。
◇
ここでは、自粛はどうでもいい、と言っているのではない。目先の危機から脱出するには必要なことだろう。ここでは、政府のコロナ対策に、医療体制の拡充がないことを指摘したい。
医療現場のことを言っているのではない。現場の医師や看護師など、医療関係者の昼夜を分かたぬ懸命な努力には頭が下がるばかりである。ここで言いたいことは、彼ら、彼女らの努力に、充分に応えていない医療体制についてである。これは政治の問題である。
◇
緊急事態のなかで、政府が行うべきことは、医療体制の整備である。医療が崩壊するからといって、いまの医療体制を守ることではない。崩壊するからといって、感染者を見つけ出し、隔離して手厚く治療することを怠り、市中に放置することではない。
医療体制を整備すれば、市中に感染者がいなくなるから、外出の自粛は不必要になる。経済活動の自粛も不必要になる。
だが政府は、こうした対策を採ろうとしない。
◇
具体的にみてみよう。
政府は検査体制を拡充し、整備をしようとしない。世界の各国で採用している検査のプール方式やドライブスルー方式は不正確だなどと、非科学的なことを言って、検査体制の拡充と整備をしようとしない。
応用科学で誤りが絶対ゼロというのは、似非科学的である。似て非なるものなのだ。誤りが確率的なものなら測定を繰り返せばいい。誤りが非確率的で構造的なものなら、測定法を改良すればいい。
だが、似非科学者には、この認識がない。だから、不正確と言い続ける。そうして、科学への信頼を損ね、科学の進歩を妨げている。
政府は、このような非科学的な根拠で、検査を怠り、未検査の感染者を市中に放置し、感染拡大の感染源にしている。これは、感染拡大の阻止に逆行している。
なぜ、こんなことがまかり通っているのか。
◇
感染者を多く見つけ出してしまうと、感染者を受け入れる医療体制が崩壊するからだという。ここでも、主客転倒がまかり通っている。
そうではなくて、医療体制を拡充すればいいのだ。感染者を医療するために医療体制があるのだ。医療体制の崩壊を防ぐために感染者がいるのではない。
いまは、医療体制が脆弱なので、医療が必要な感染者が隔離と治療を受けられずに、自宅で療養させられている。そうして、家庭内の感染源になって、市中感染の主な感染源になっている。
だが、政府はこの状態を放置している。そうして、感染拡大の阻止に逆行している。
◇
いま、政府が行うべきことは、医療体制の拡充と整備である。検査体制と隔離・治療体制の抜本的な解体と再編・整備である。無害で有効なワクチンができるまで、国民に苦難を強いることではない。大勢の国民が接種できるまでには1年かかる、という専門家が多い。
それまでに政府が行うべきことは、病苦に耐え、死に怯える多くの国民を傍観していることではない。医療体制の整備である。
国難ともいうべき緊急事態なのだから、なりふり構わずに、プレバブでもいい。テント張りでもいい。政府は、政府直轄のコロナ専門病院を各都道府県に作り、政府の総力を傾け、政府の責任で、日本の、いわば医療力を、そこに結集する体制を構築すべきである。
国権の最高機関である国会の危機感も希薄である。だから、罰則を作るかどうか、などという些末の議論をしている。いまは、その時ではない。法令が邪魔をするなら、いまは緊急事態なのだから、緊急事態的に解釈を変えればいい。
多くの国民は、強い危機感と責任感を持ち、科学に耳を傾け、決断力と実行力を持つ政府の出現を待ち望んでいる。
(2021.01.25)
(前回 コロナ撲滅国民会議を作れ)
(前々回 無責任な緊急事態宣言)
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