どこまで続くか? このぬかるみぞや!【坂本進一郎・ムラの角から】第40回2021年1月30日
今、内閣は菅内閣に代わった。予想どうりこの内閣は、ロマンを語らなかった。農業再生を語ることは、予算を農業に光を当てるものになり、同時に政策も農業再生の政策を語るものとなるはずだ。しかし菅内閣は農業再生などは眼中などなく安倍内閣の2番煎じのようになぞるだけである。だが、今家族農業はつぶれるか否かの瀬戸際に来た。なぜ瀬戸際か。真相を探ってみたい。
農工間格差
農業は工業の踏み台、あるいは犠牲にされた。
例えば、1959年の自由化以来、貿易自由化は農産物の輸入で対処してきた。自由化の走りであるMSA協定(1954年)以来自給自足をやめた。自給自足は面倒になってきたからだ。金で買えるなら、買ったほうが手っ取り早いと思ったからでもある。それには「日米相互条約」の橋渡しもあった。アメリカは余剰農産物・余剰商品の小麦をどこかにさばきたい。そうして白羽の矢が立ったのは日本だったのである。
だが余剰農産物という言葉は聞いたことがあるが、「余剰商品」という言葉は小麦が商品だったからであろう。 1954年小麦60万トン、大麦11万トン輸入。輸入代金相当の5000万円は条約の発行している間、日銀に積み立てられ、そのうち8割は米軍の軍備費に回され、残り2割は日本の軍需産業育成に回された。
かくして、日本の農村から麦が消えた。
もう一つの道は
八郎潟干拓地の装置化。その背景に「農業の工業化思想」・ボタンを押すと(モノ)がポンと出てくるという工場スタイルを目指した。大潟村にどういう村を作るのか、それは全国民にとっても象徴的だ。アメリカ型の大規模化、機械化、単作化の村か、それともEU型の村か。EUの農村は大抵住宅に隣接して牛を飼っている。日本でもかつて里山型農村では酪農と生活していた。EUでも200とか300haになると単作化が見えるが、里山型農業が健在なのはさすがEUならではだなと思う。
農産物価格がいかに安定していないか,大潟村の畑作の歴史に見られる。24品目の畑作を導入したが、今残っているものはない。
国際化の時代
大唐への危機意識。黒船への危機意識(西欧への危機意識)。追いつき追い越せ。これに対し天皇制を精神的旗印に集権化(中央集権の創設)。疾風怒濤(シュトウルム・ウント・ドランク)時代の奈良時代は今の日本人の写し鏡であろう。中央集権によって国民を束ねて工業化を推進する。大潟村の工業化は、ひょっとして明治人の近代化の夢であったかもしれない。
近代化は政商大企業の育成と重なり合った。農業軽視と大企業化は進んだ。その一方、1918年のコメ騒動。そして、台湾タイヤル族のモーナルーダを首班とする1930年の霧社(むしゃ)事件。これは日本人の抑圧を跳ね返そうという運動であった。桓武天皇の時代、東北は蝦夷(ヱミシ)の支配する大地であった。その大地を包摂したいというのが平安京造営と並んで桓武天皇の夢である。包摂というのは蝦夷から見れば、内地化のことである。今流によれば日本列島の国際化だ。ついでに言えば、北海道も内地化された。
日本はアメリカの食料の傘に入ることで、ひたすら工業化の道を進んだ。
軽農思想・低賃金のプールとされた農民・あゝ野麦峠
中曽根臨調は凄い。今までの農民の自然死から絞殺死へと変換 。葬儀委員長の中曽根に対し、ペンを持って立ち上る。翻身を呼び掛ける。農民は怒らない。政治は遠い話だ。自分たちは食っていければいい。→現状への眠り込み農民→。目先の実利追及の農民(闇米に変質)。みんなで一緒の農民→弁当とカップ酒をあてがわれ、そそくさと一緒に演説会へ→生産調整も隣もやるから俺もやる。必要悪としての闇米。
明治の危機意識は独立と侵略が紙一重の不安定な気持ちを日本人に植え付けた。そして、不安定な状態が敗れると外に向かって膨張していった。
農民が早く農業に嫌気がさすように仕向けている、それが今の農政だ!
中曽根臨調の「前川リポート」で農業はスクラップ・アンド・ビルドの対象とされた。農業は産業か生業か。田はご先祖からの預かりもの。スナワチ田は位牌のようなものだ。
かくして、穀物自給率38%、学卒新規就農者1700人、耕作放棄地30万ha。(1/20記)
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