千種を超えるコメの品種特徴が分かるデジタル図鑑【熊野孝文・米マーケット情報】2021年2月9日
北海道のコメ生産者からクラフト紙袋に入った精米が送られて来た。開けてみると「ふっくりんこ」、「ななつぼし」、「ゆめぴりか」が2㎏ずつ別々の紙袋に入っていた。それぞれの品種の違いを愉しんで欲しいという事らしい。精米は見た目にはそれぞれの品種がどう違うのか分からない。目視によってコメの品種が見分けられる農産物検査官がどのくらいいるのだろうか? それが急速に進歩するが画像解析技術によって可能になる時代が近づいている。なんと国内の1000種を超えるコメの品種の特長を画像解析したデジタル図鑑が一般に売り出されることになった。
「デジタル穀物品種大図鑑」という商品は、図鑑と表記されているが本ではなくUSBドングル1本に情報が納められている。図鑑はコメ版と麦版の2種類があり、コメ版では日本で生産されている1000種類以上、麦版では270種類以上の品種データが画像や来歴等の情報が納められている。USBをインストールしてコメ版を見てみると各産地別の水稲うるち米、もち米、醸造用米の一覧が出て来て、それぞれの品種の特徴が画像と共に文章で表現されている。
画像はコメ一粒の高さ、幅が分かるようになっており、それを見ると品種によってこんなに違うものかと驚いてしまう。商品紹介のパンフレットには、事例として北海道の「きらら397」が取り上げれており、米粒の画像と共に特長として粒形は「やや細長で、粒大は中、基部がやや細く、背部・腹部はなだらかに丸みがある」、皮の厚薄「皮部は薄く、透明感がある」、縦溝の深浅「縦溝は浅い」、色沢「淡飴色」、胚の大小及び胚の形「胚芽部は中程度で、えぐれは浅い」などと記されている。それにしても品種ごとの特徴を良くここまで捉えることが出来たと感心するが、この穀物図鑑を作った会社は、岩手大学発のベンチャー企業で画像処理が専門の会社で、なんと1億2000万画素と言う解析度で精密機械のマクロ撮影して微細な欠陥を検出するという装置も製品化してビジネスグランプリで賞を得ている。農業関連ではスキャナライザーで土壌のカルシウム、マグネシウム、カリウム、可給態リン酸、硝酸耐窒素の5成分を画像で測定するという機械も作っている。
コメとは無縁であったが、穀物の品種研究者から品種の特徴を簡単に検索できるものはないかと問われたのがきっかけで、調べてみるとほとんどを網羅しているものはなく、印刷物では劣化するためデジタル情報として残して行く必要があると考えたため。画像解析技術はあるものの、最も大変だったのは各産地の確実な品種を集めることで、結果的に4年の歳月を要したという。デジタル化することによって、見たい品種の特徴が簡単に検索でき、本ではないので写真の劣化もない。さらに次々に出て来る新品種も同社からデータが送られてくるので、新品種が出るたびにUSBを買い替える必要がないという有り難い機能もある。まさにコメや麦の育種や栽培研究者にとっては待ち望んでいたような商品だが、生産者、流通、需要者にとっても品種の特徴が簡単に画像で分かるというのは必要な情報だ。
スーパーなどコメ売り場に行けば分かるように日本のコメは「銘柄」を商品名にして販売しているのがほとんどだ。今年7月からは未検査米でも精米商品に銘柄が謳えるようになるというコメ業界にとっては一大変化が起きる。未検査米の銘柄表示をどう担保するかと言うと品種が確かなものであるという情報の保管義務はあるものの基本は生産者の自己申告になる。流通業者はそれを玄米で仕入れて搗精して量販店等に卸すことになるが、表示と違う品種であったら大変なことになる。実際に大変なことになった事例は枚挙に困らない。そうしたことが起きないように、念を入れるところでは玄米段階、精米段階、さらには炊飯米まで品種のDNA鑑定を行っているところさえある。この経費も馬鹿にならない。それだったら画像で品種が簡単に分かればそれに越したことはない。
こうした画像判別の研究開発は以前から行われ、大学の研究者が米粒の形から品種を特定しようとしたり、大手印刷会社がコメ粒の溝に品種の違いが見い出せることを発見、3D画像による判別を試みたが、いずれも断念している。なぜ画像による品種の判別が出来ないのか? それはコメに限らず、穀物の品種は気象条件やその土地によって姿が変わって来るからである。そうした変化を見極めて特定品種を確実に判別するには画像判別技術だけでは不十分だ。それが出来るのかデジタル穀物大図鑑を作った会社の社長に聞いてみた。返事は「AI(Deep Learnig)技術が必要と考えますが、本件の場合かなり難易度が高 い技 術だと思います。弊社ではまだそのレベルに達しておらず今後の課題と考えております」
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