Are we safe?【小松泰信・地方の眼力】2021年2月17日
昨夜(2月16日)宿泊したホテルのドア内側に、「無事です」と記載された六角形のおしゃれなマグネットシール。上方には「大地震発生時、無事な場合はドアの外側に貼ってください。」、下方には「We are safe」と記されている。最近宿泊した長野市内、福岡市内のホテルにはなかった。このようなシールを貼らねばならないのがTOKYO2020。
機能別消防団員のすすめ
2月13日(土)深夜、福島県沖を震源とする最大震度6強の地震が発生した。気象庁は、東日本大震災を引き起こした2011年3月の超巨大地震の余震との見解を示した。10年後に余震が起こるとは、「十年一昔」などとは言わせない地学的時間に驚くばかり。
虫の知らせでもあったのだろうか。「消防団」について取り上げた論説・社説が2編。
「県内の消防団員の減少に歯止めがかからない。背景には少子高齢化や人口減がある。自然災害が頻発している現状を考えれば、地域防災を担う消防団員の確保は急務だ。県や市町村は地域の実情を踏まえ、女性や学生の入団促進に一層努力するべきだ」で始まるのは、福島民報(2月11日付)。2020年4月1日時点の福島県内の消防団員数は3万2056人で、前年同期より548人の減。条例定数3万6282人に対する充足率は88.4%で前年より1.1ポイント減。過去最低を更新とのこと。富岡町、川内村、楢葉町、北塩原村などの、原発事故で避難区域が設定された町村や小規模自治体で団員確保がより難しくなっているそうだ。
「災害発生時は消火や水防活動、平時は訓練や火災予防の啓発などの活動に当たる」のが団員の役割。勤め人や女性、学生の団員を増やすために、「仕事や学業、家庭の事情に応じて特定の活動に限定して参加する『機能別団員』への勧誘が有効」とする。
福島市消防団が20年10月に発足させた機能別団員81人のうち、36人は大学や専門学校に通う女子学生。学生団員は主に火災予防の広報活動や大規模災害時の避難所開設などの後方支援に当たる。
各市町村が条例で定める年額報酬は全国平均で3万0925円、福島県平均は2万6654円であることから、待遇改善にも言及している。
女性消防団員の増加に明るい兆し
南日本新聞(2月14日付)によれば、鹿児島県の団員数は20年10月現在1万5170人。ピーク時より4000人近く減少しており、定員に1500人ほど不足とのこと。若年層の減少も深刻で、鹿児島県の平均年齢は全国平均を3歳上回る44.9歳。「危険を伴う活動も多いだけに若手の入団を促し、後継者を育成する取り組みを急ぐ必要がある」とする。
「団員の献身的な取り組みに対し手当が少ない」という現場の声を紹介し、団員減少の背景の一つに「対価の低さ」をあげる。
20年7月、鹿屋市を襲った豪雨時における団員の活動を紹介し、「人的被害がなかったのは、こうした活動があってこそだろう」と称賛する。さらに、同年10月現在、県内に626人いる女性団員の増加傾向を「明るい兆し」と評価する。
そして、「近年、各地で大雨や台風など災害に度々見舞われる中、消防団の役割は大きくなっている」「消防団は地域の防災力を高める上で欠かせない存在」として、待遇改善や加入しやすい環境づくりを訴える。
正論と急所を突く投書二編
コロナ禍でクローズアップされているのが、「PCR検査実施体制の調整役まで担わされている」保健所の存在意義。
国は「感染症の時代は終わった」として、1994年に保健所法を地域保健法に変え、全国に847か所あった保健所を20年には469か所に減らした。結果、「相談したくても保健所に電話が通じない」「人手不足で役割が果たしにくい」という、厳しい事態に保健所は追い込まれている。
この情況に危機感を覚えた大野廣美氏の一文が、長崎新聞(2月11日付)の投書コーナーで紹介されている。
「保健所職員は連日勤務や深夜までの勤務が続いて疲弊しており、中には職場の長椅子で休む方もいたそうです」と、その窮状を指摘し、「なぜ、このような保健所行政になったのでしょうか」と問いかける。それに「歴代政権が金科玉条のごとく言ってきた行政改革という名の保健所や保健所職員の数の削減が今日のコロナ対策の遅れにつながっている一因ではないでしょうか」と自答する。その根拠にあげるのが、政権党や首長が、選挙時に「行政改革=公務員減らし」を叫び続けてきたこと。その一例としたのは、ある首長が「自分は、職員を何人減らしてきた」と選挙運動で述べたこと。これらに怒り、「行政改革とは、保健所や職員数の削減ではなく、少子高齢化や虐待の問題などに関して、よりきめ細かい行政を住民の側に立ってすすめること」が、このコロナ禍を通じて明らかになった、と正論そのもの。
これに並んでもう一つ怒りの投書が、同じ紙面に取り上げられている。
「『老後資金2千万円問題』を巡り2019年6月、国会で前首相に対する問責決議案が出され、反対討論に立った議員が『野党の皆さんは恥を知れ』と痛烈に罵倒した場面があった」で始まる久保哲也氏によるもの。「前政権が『一連の疑惑』で政治不信を招き、菅政権に継承されて約5ヶ月。(中略)永田町では不祥事のオンパレード。かつて『選良』と尊敬された代議士諸氏はどこに行ったのか」と嘆き、「前出の『元気な叱責議員』に、今こそ同僚の不祥事に対して糾弾してほしいものだ」と、急所を突く。
良き選挙民が「選良」を産み育てる
長崎新聞(2月11日付)の「記者の目」というコーナーに豊竹健二氏(同紙東京支社)が、「諫干より卵だった」というタイトルの記事を寄せている。諫干(いさかん)とは、1989年から始まる「国営諫早湾干拓事業」のこと。卵とは、鶏卵生産事業者「アキタフーズ」から現金を受け取り、収賄罪で起訴された吉川貴盛元農相の事件を指す。
「確かに諫早湾干拓事業に関心はなさそうに見えたが、たぶん頭の中は卵のことでいっぱいだったのだろう」と、強烈な皮肉で始まるのには訳がある。吉川氏は農相時代、「閣議後の会見で諫干について何をどう聞かれても官僚が作ったペーパーを機械的に読み上げていた」からである。故に、「なるほど、卵のことを尋ねれば、たぶん冗舌に語ってくれたのだ」と皮肉が続く。
返す刀で、「同じ業者から現金を受け取り、なぜか立件見送りとなった西川公也元農相も恐らく諫干に興味はなかった。視察の際、言い方は悪いがとんちんかんな発言が相次ぎ、車の中で官僚が一生懸命レクチャーしていた姿が懐かしい」とのこと。そして、「そんな人たちが開門問題を左右するポジションに就いていたことに疑問を禁じ得ない」とは同感。そして、悲しむべき現実。
投書を紹介した大野氏は、「有権者もまた、その主張(公務員減らし)を受け入れてきました」と、有権者の責任にも言及している。
久保氏も、死語化する「選良」という言葉をあえて用いることで、選ぶ側に求められる責任と見識を示唆している。
Are we safe? と問われて、We are safe!と答えられる情況をつくるために、我々は選ぶ側の責任を果たさなければならない。
「地方の眼力」なめんなよ
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