新聞チラシ掲載の安値精米商品を探索する【熊野孝文・米マーケット情報】2021年2月23日
朝の定番の行動は新聞受けから朝刊を取り出すことだが、最初にやることは新聞を読むことではなく、新聞に挟んであるチラシを見ることである。週末には20枚ぐらいのチラシが挟まっているが、この内食品スーパーのチラシが半分以上も入っている。野菜やパン、麺類の安さに目が釘付けになることもあるが、精米商品では時系列的に安値を付ける銘柄が変わって来るのが分かるので面白い。
20日のチラシでは、A店秋田県羽後産あきたこまち5キロ1780円、10キロ3380円、B店山形県産はえぬき5キロ1490円、雪若丸1590円、新潟県産コシヒカリ5キロ1990円、C店青森まっしぐら5キロ1480円、10キロ2950円、青天の霹靂5キロ1980円、D店宮城県産つや姫5キロ1680円、秋田県産ゆめおばこ5キロ1480円、E店山形はえぬき5キロ1480円、無洗米はえぬき5キロ1580円、F店千葉県産コシヒカリ5キロ1500円、G店新潟県産コシヒカリ5キロ1980円、2袋3780円、魚沼産コシヒカリ5キロ2480円などが掲載してあった。チラシの中にはコメ欄に「売り切れごめん」と大書してあるもあったが、そう大書するほどは安くはない。もっと安く掲載しているチラシがあるはずだと思いこの分野を執拗に調べている人に聞いてみた。
そうしたところ直近の調査として以下のような価格が送られて来た。
・Y社 福島天のつぶ 5.3キロ(300グラム増量) 1380円 納入はK社
Y社が1380円の商品をチラシ掲載したのは少なくともこの2~3年来はなかった。
・C社 宮城ひとめぼれ 5キロ 1390円 納入はN社
・B社 新潟コシヒカリ 5キロ1590円 納入はH社
・Gスーパー 業務用精米(国産) 10キロ 2280円 納入不明
・F社 山形はえぬき 5キロ 1380円 納入業者不明
・J社 青森あきたこまち 5キロ 1399円 納入業者不明
・D社 茨城コシヒカリ 10キロ 2780円 納入業者H社
・M社 茨城ゆめひたち 5キロ 1380円 納入業者不明
・H社 低温製法 岩手ひとめぼれ 5キロ 1580円 納入業者A社
A社の低温製法米は基本特売になるケースがないので、この値段で出ているのを見たのは初めて。
チラシ検索のエリアを広げればかなりの安値精米商品が出ていることが分かった。とくにY社の価格は他の全食品スーパーが見ているはずで増量したうえに1380円はインパクトがある。ただし、これで驚いてはいけない。本当に破格と言えるほどの商品はチラシには掲載されていない。売り場に行ってみて国産銘柄米が5キロ1000円で置いてあったりする。今はチラシで破格値を付けて集客して密になる手法は避けなくてはいけないというスーパー側の事情があり、表には出てこないのである。
精米商品の特売価格がチラシの紙面を賑わすのは来月以降になると見ている。なぜそう思うのかを記す前に全国スーパーマーケット協会が2021年版スーパーマーケット白書を発刊したのでそれを先に紹介して答えにしたい。
それによると全国のスーパーの店舗数は2万2434店舗、従業員数は109万8200人。利用顧客は店舗1000平米平均で平日が1600人、土日が1920人、客単価は平日が1950円、土日が2200円。商品カテゴリー別売上構成比は、青果16.6%、水産12.4%、畜産15.2%、惣菜9.1%、日配品18.6%、一般食品24.0%、非食品4.0%。2020年の年間総売上高は前年対比全店ベースで106.3%、既存店ベースでは105.0%で「調査を開始した2012年以降最高値を記録」。白書では野菜や魚など品目別、月別に価格動向などのデータが詳細に記されており、大変興味深いが、コメは一般食品の中に一括りにされているため単体での値動きや購入量とは分からない。ただ、資料編に民間調査会社が収集した消費者購買データ(SCI)の中に100人当たりの購入金額が出ており、2020年は前年より増加したことが分かる程度である。この白書の中に極めて気がかりな記述がある。それが答えである。
それはコロナショックについて「今回のショックは『消費性向』が歴史的な低水準に落ち込んだことが特徴である。消費性向とは『可処分所得に占める消費支出の割合』である。緊急事態宣言を機に消費性向は急低下しているのが分かる。旅行やレジャーなど不要不急の消費が抑制されたことが最大の要因であるが、雇用や所得に対する不安の増大も背景にある。これまでも、節約志向が高まることで消費性向が低下することはあったが、今回は『過剰節約』と言える状況となっている」。
<訂正>前回のコラムで水田リノベーション事業予算の都道府県別配分について新潟県は58億円が配分されているととられる記述は、実際の配分が確定するのは3月末です。58億円は取材時に得た情報を基にした著者の見込み額です。
(株)米穀新聞社記者・熊野孝文氏のコラム【米マーケット情報】
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(119) -改正食料・農業・農村基本法(5)-2024年11月23日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践 (36) 【防除学習帖】第275回2024年11月23日
-
農薬の正しい使い方(9)【今さら聞けない営農情報】第275回2024年11月23日
-
コメ作りを担うイタリア女性【イタリア通信】2024年11月23日
-
新しい内閣に期待する【原田 康・目明き千人】2024年11月23日
-
基本法施行後初の予算増確保へ JAグループ基本農政確立全国大会に4000人 生産者から切実な訴え2024年11月22日
-
「適正な価格形成」国関与で実効的に JA群馬中央会・林会長の意見表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
JAグループ重点要望実現に全力 森山自民党幹事長が表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
農林水産省 エン・ジャパンで「総合職」の公募開始2024年11月22日
-
鳥インフル 米モンタナ州、ワシントン州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
鳥インフル オランダからの生きた家きん等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
11月29日「ノウフクの日」に制定 全国でイベント開催 農水省2024年11月22日
-
(411)「豚ホテル」の異なるベクトル【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年11月22日
-
名産品のキャベツを身近に「キャベツ狩り選手権」開催 JA遠州中央2024年11月22日
-
無人で水田抑草「アイガモロボ」NEWGREENと資本業務提携 JA三井リース2024年11月22日
-
みのるダイニング名古屋店開業2周年「松阪牛ステーキ定食」特別価格で提供 JA全農2024年11月22日
-
【スマート農業の風】農業アプリと地図データと筆ポリゴン・eMAFF農地ナビ2024年11月22日
-
自動運転とコスト【消費者の目・花ちゃん】2024年11月22日
-
イチゴ優良苗の大量培養技術 埼玉農業大賞「革新的農業技術部門」で大賞受賞 第一実業2024年11月22日
-
「AGRIST Aiサミット 2024」産官学金オープンイノベーションで開催2024年11月22日