敗戦宣言への着手【小松泰信・地方の眼力】2021年2月24日
新型コロナウイルスのワクチン先行接種が、医療従事者を対象に2月17日から始まった。厚生労働省によれば、22日の午後5時時点で、全国の95病院で合わせて1万1934人が接種した。さすが自称先進国。先に進んではいない。
コロナの収束なくして五輪・パラ無し
東京新聞(2月21日付)で玉川徹氏(コメンテーター)は、東京五輪・パラ開催可否に関する各種世論調査の結果を、「日本人にとっては、五輪・パラ開催よりもコロナの収束の方が優先順位が高い」と読む。「コロナは身近な命と経済の問題。五輪・パラの優先順位が低くても不思議ではありません。(中略)今後、ワクチンの取り合いで、接種が順調に進むかも不透明です。せめてこの問題だけでも解決させなければ、世論の変化は難しい」として、「コロナの収束なくして五輪・パラ無し」とする。
沖縄社会に漂う閉塞感
コロナ禍は、ワクチン接種では解決できない傷を人びとに与え続けている。
沖縄タイムス(2月17日付)の社説は、同社と琉球朝日放送(QAB)が実施した県民意識調査(回答者数1047人)から、沖縄社会に漂う閉塞感を伝えている。要点のみ以下に列挙する。
(1)「暮らしで困ったこと」として、「人との交流機会が減った」をあげる人が67.3%で最も多い。「家にこもりがちになるため、精神的につらい」「コミュニケーション不足で職場の雰囲気が悪化」「友達と会ってストレス発散ができない」「1人暮らしは孤独」といった悲痛な叫びあり。「元気だった母が、デイケアにも行かず、家に閉じこもり、認知症になりつつある」との回答も。
(2)「死にたいと思ったことがある」と答えた人は14人。
(3)生活の苦しさを「大いに感じる」「ある程度感じる」人の合計は65.2%。20年の収入が前年に比べ2~4割減が20.9%、5~7割減が6.1%、8割以上減が5.3%。「ホテル業、お客さまがいなく会社がつぶれそう」「収入が減って、子どもたちの学費の支払いが苦しい」との、切羽詰まった声。
(4)新型コロナは立場の弱い労働者を直撃。解雇や雇い止めで仕事を失った人のうち、非正規労働者が33.3%を占める。
(5)必要な施策として、「一律の現金給付」をあげた人が多い。
(6)経済と社会活動自粛のバランスについては、7割が「感染対策優先」と答え、「経済優先」を大きく上回る。
以上から社説子は「県民、国民は耐えている。政府は、日々の忍耐を支える心のケアに全力を尽くすべきだ。住民に最も近い市町村にもできることが多いはずだ。『つながり』をつくる工夫に取り組んでほしい」と訴える。
島根県からの一矢
朝日新聞デジタル(2月19日17時37分)によれば、2月17日に、島根県内での東京五輪聖火リレーの中止を検討すると表明した丸山達也島根県知事が、19日に「私は聖火リレーの実施が感染拡大を招くと思って中止を検討しているわけではない。おおもとの五輪の開催に問題があるというのが理由だ。聖火リレー自体を問題視しているわけではない」と説明し、コロナ対策の要望について、「総合調整権がある政府に対し、直接お願いにあがりたい」と話した。
山陰中央新報(2月20日付)の論説は、「賛否は分かれるものの、コロナの収束が見通せない中、『五輪開催ありき』で突き進む流れに、一石を投じたのは間違いない」とする。
知事が問題視したことは、次の二点。
ひとつは、世界中から競技者を受け入れる五輪での感染拡大を懸念したもの。島根県では、感染者の疫学調査を幅広く行っており、コロナによる死者は全国で唯一ゼロ。しかし、高齢化率が高い上に医療施設も限られ、感染が急拡大すれば機能不全に陥る危険性をはらんでいる。
もうひとつは、第3波で生じた政府による緊急事態宣言が発令された地域と、島根県をはじめ感染者が少ない地域との支援差。故に、「著しく不公平な対応。もう一度、都が感染拡大を助長するようなイベントの開催は理解できない」と訴える。
自民党の竹下亘衆院議員(島根2区)が「知事の発言は不用意だ。注意しようと思う」と述べたことにも言及し、「中央からの風当たりは強まりそうだが、知事には地方の実情を訴え続けてほしい」と、エールを送る。
敗戦宣言のご提案
東京五輪・パラの開催を巡って国論が二分されている。毎日新聞(2月20日付)で加藤陽子氏(東京大教授)は、開催貫徹をAプラン、開催困難をBプランとし、起きてほしくない事態(プランB)を考えず「開催」だけを唱え続ける態度(日本の政策決定でよく目にする「言霊対応」)は、「もはや許されない状況」とする。
そして、「日本と世界の感染状況に対応し、科学的知見に裏付けられた、科学的検証に堪えうる施策が実施できるかどうか。ここに、開催可否の基準が置かれるべきだろう。この場合の科学的知見は、公開性かつ共有性が担保されていなければならない。科学に基づいて判断がなされた、と内外から信頼される政治決定が求められる」として、開催困難時に政治が発すべき言葉について、興味深い提言をしている。
まず注目したのは、国論が二分された状況下、極めて重要な物事が止められた巨大な先例である、昭和天皇による終戦の詔書(しょうしょ)に、「日本と世界、国民と世界人類というように、内と外双方へ向けた深い洞察が周到に書き込まれていたこと」。
これに導かれて、「内なる国民と外なる世界の人々双方の生命の安全を確保しつつ五輪を開催するのは難しい」と、率直に言明することを提案する。
加藤陽子氏は、菅首相の手によって、理由を明らかにされることもなく、日本学術会議の会員となることを任命されなかった6名のうちのひとり。
菅氏の文字通りの愚息による「親のばか光」を笠に着た接待攻勢が、政権を揺るがす贈収賄事件へと展開しつつある。もともと容量に限界のある彼の脳みそには、加藤氏の提案を検討し、受け入れる余地はないだろう。もちろん、度量も器量もない。しかし、寛容なる知識人からの贈り物をありがたく拳々服膺(けんけんふくよう)すべき段階にある。
鈴木哲夫氏も、「サンデー毎日」(3月7日号)で、橋本聖子東京五輪・パラ組織委員会会長に、「〝敗戦処理〟という大難題がのしかかる」ことを指摘する。潔く、敗戦宣言の起草を日本学術会議にお願いしますか、堪え難きを堪え、忍び難きを忍んで。
「地方の眼力」なめんなよ
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