【リレー談話室】総組合員減少時代を迎えて 藤井晶啓 日本協同組合連携機構常務理事・企画総務部長事務取扱2021年2月27日
准組合員の加入促進は足止め
2018年度に農協の組合員の総数が減少に転じた。組合員の数は協同の力の源泉であるので、農協運動の分岐点が今まさに通り過ぎようとしている。政府が2020年春に発表した2018事業年度総合農協統計表における組合員総数は1049万人・団体であり、前年度に比べて2万人減少した。内訳は正組合員が5万7000人の減少、准組合員が3万6000万人増加。
「たかが2万人」と思われるかもしれない。しかし、15年間増加を続けた組合員総数が、近年頭打ちにある。准組合員の年間増加数は、2013年度の22万人をピークに減少し、2017年度が13万人。2018年度に3万6000人と大幅に減少。このスピードでは間もなく准組合員数も減少に転じると見込まれる。
これまで、JAグループは正組合員の減少を准組合員の増加で補い、組合員総数を確保してきた。正組合員の減少は、構造転換をすすめてきた日本農政の成果であり、かつての准組合員の加入促進は員外利用規制対策であった。だから、農協改革では「准組合員は組合員ではなく不特定多数の顧客だ」という批判となり、われわれは「准組合員は、協同組合を構成する大事な組合員である。顧客ではない」と、対話運動をすすめてきたはずである。
しかし実態はどうか。組合員加入促進運動とつながった対話運動になっているのだろうか。また、複数組合員制度も全国の95%以上のJAで導入されているはずだが、活用されているのだろうか。遺憾ながら、准組合員利用規制が振りかざされたことで、組合員加入促進運動はみごとに足止めをくらい、組合員数の減少という形で表面化した。
組合員政策の3種類と組合員の4類型
JAにおける事業活動の政策はその目的によって、(a)組合員の新規加入、(b)既存組合員の事業活動の深耕、(c)既存組合員の脱退防止、の3種類に分けることができる。
(a)の新規加入は事業活動の伸びしろは大きいが、最もコストがかかる。(b)の深耕は追加コストは少なく、やり方次第で事業活動は伸びる。(c)の防衛は、さらなる事業活動は期待できないかもしれないが(a)よりコストは低い。これまでの事業活動は、第1世代を対象にした(b)の深耕に頼ってきたと自省している。
そして、増田佳昭編『つながり志向のJA経営』(家の光協会)では、組合員の行動と意識から組合員を4つのグループに類型化している。(1)正組合員のうち農業を主とする経営者群、(2)貯金だけ、共済だけなどの単一事業利用型の准組合員、(3)直売所や生活購買店舗をよく利用する准組合員、(4)販売事業の利用がない正組合員。そして、(3)は准組合員であるが食や農に関心が高く、JAに対する親しみが高いこと、逆に(4)は正組合員であってもJAに対する意識が比較的低い、と指摘する。
組合員拡大にむけたターゲットと政策の選択
この4つのグループごとに、3種類の政策を当てはめてみる。ただし、残念であるが、合計12の政策全てを実施するだけの経営体力に恵まれたJAは少数派ではないか。だからこそ、自JAの組合員を取引データをもとに4グループに分け、自JAの財務・職員体制等の体力に応じて、どのグループのどの政策に注力するか判断することが、世代交代後の組合員を増やし、JAへの参加・参画を促す現実的な手法である。
そのためには、各JAが自らの組合員の経済・信用・共済等の各事業利用をまとめてクロスセル化することが前提となる。現在、検討中である第29回JA全国大会議案ではDX(デジタルトランスフォーメーション)が大きな柱の一つと聞いている。組合員拡大につながるDXを期待している。
また、正組合員の資格要件の見直し、世代交代をふまえた組合員組織の見直し、さらに、他の協同組合の組合員にJAの組合員加入促進することはどうだろうか。「共済や生活購買ではライバル」と顔をしかめる方もある。しかし、どの商品を選ぶかは契約する組合員側の判断であり、協同組合どうし互いに補完できる範囲内で連携できる関係にならないものだろうか。
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