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「政治の貧困」がもたらす「生理の貧困」【小松泰信・地方の眼力】2021年3月10日

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3月8日は「国際女性デー」、今日10日は「農山漁村女性の日」です。

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女性活躍への提言

国際女性デーに寄せた、北海道新聞と沖縄タイムスの8日付の社説を紹介する。

「菅義偉政権のジェンダーへの感度は鈍い」とするのは北海道新聞。その典型例として、男女共同参画の中心テーマである「選択的夫婦別姓」の文言が、新しい男女共同参画基本計画で削除されたことに加え、制度導入に反対する文書に名を連ねていた丸川珠代氏を男女共同参画担当相に就任させたことを取り上げる。そして、働き方や家庭での男女の役割をさらに見直す必要があることを指摘し、課題解消に向けて先頭に立って取り組むことを政治に求めている。

沖縄タイムスは、「女性が能力を発揮できる環境をつくり、その力を社会に生かすことは持続可能な経済成長につながる」として、22年から始まる沖縄振興計画に言及している。同県内の経済界の女性リーダーから相次ぐ強い要望に加え、「沖縄は非正規労働者の割合が全国で最も高く、母子世帯の割合も全国の2倍」で、「高い子どもの貧困率は女性の貧困と重なる」ことから、「安定した雇用環境で女性が能力を発揮し、安心して暮らせる施策」の検討を求めている。

天災からの避難先が女性にもたらす人災

明日3月11日で東日本大震災・福島第一原発事故から10年が経つ。『災害女性学をつくる』(生活思想社)の編著者のひとり浅野富美枝氏が東京新聞(3月3日付夕刊)に寄せた一文は、氏が宮城県内の避難所を回り、大勢の女性たちの声を聞いたことに基づいているからこそ、鋭く、重く、そして切ない。

「ジェンダー格差の大きい日本では、女性は災害時に弱い立場におかれることが多い。(中略)災害女性学の最大のテーマは、災害時の人権と、被災者の『尊厳ある生活を営む権利』の保障である。(中略)平時と非常時を貫く『ジェンダーの格差』が、災害時の女性の困難の根底にある。それをなくすには、平時と非常時を問わず社会構造を変革し、特にジェンダー平等社会を確立することが求められる」とする。

ある女性が「生理用ナプキンがほしい」と頼むと、避難所の男性管理者から渡されたのは一枚だけ。次のトイレの際にもらいに行くと、「さっきあげたばかりだ」と言われた。ナプキンを女性1人につき1枚、幼児から高齢者まで「公平に」配付した男性管理者もいた。枚挙にいとまなき、避難所での「困った」話のひとつとして紹介されている。

みんなの生理

3月4日7時台のNHK「おはよう日本」では、トップのコロナ関連ニュースに続いて、「生理の貧困」が取り上げられた。

若者のグループ「#みんなの生理」がおこなった「生理に関する実態調査」(2月17日から3月2日、SNS調査、高校生以上の生徒・学生671名が回答) から、次の二項目が紹介された。

「生理用品を買うのに苦労した」約2割。「トイレットペーパーなどで代用した」約3割。

関東の専門学校に通う19歳の女性は、食費を含む生活費のほとんどをアルバイトで稼ぐ。しかしコロナ禍で仕事が減り、画面に映し出された預金通帳には、「2月22日給与18,860円」の印字。「生きていけないとなった時、生理用品にかけるお金はない。まずは食べていかないと。今は、自宅のトイレットペーパーや布で代用。経血で服などを汚さないか不安で、通学やアルバイトを諦める日もある。(中略)生理用品はあって当たり前のものだった。こんなにも長い間買えないことが続くとは思ってもいなかった」という状況に、家人ともども言葉を失う。

グループの代表は「生理って声のあげにくいトピックですが、当事者だけに声をあげることを強要してはいけないと思う。生理があるだけで社会参画の機会が少なくなることは、重く受け止めなければない」として、社会全体での理解を求めた。

最後にキャスターが、「この問題の深刻さのひとつに、食料支援と比べると、ほとんど支援がないと言うことがあげられます。調査団体は自治体や企業に呼びかけ、公共施設や学校に生理用品を設置することを目指している」ことを紹介した。

「生理の貧困」の撲滅に向かうフランス

しんぶん赤旗(2月13日付)は、フランスの学生団体、一般学生会連合会(FAGE)と全国学生助産師協会(ANESF)が20年10月から6518人の学生を対象に行った調査結果を伝えている。13%が「食料か、生理用品か」の選択を迫られたことがある。10人に1人が、手作りで代用品を用意している。20人に1人がトイレットペーパーを使用して対処している。10人に1人が、生理用品を入手できず学校を休むことを余儀なくされた経験を有している。

これらからFAGEは「尊厳ある生理期間」を過ごせないことは「身体的、精神的、社会的に有害な影響がある」として、すべての人が生理用品を入手できる体制を一刻も早くつくることを訴えている。

動きは早い! 同紙(25日付)は1面で、フランス政府がすべての学生に生理用品を無償提供すると発表したことを伝えている。「生理の不安とのたたかいは、尊厳、連帯、健康の問題だ。2021年になっても食料か身を守るかの選択をしなければならない状況があるのは受け入れられない」と表明したのは、ビダル高等教育・研究相。素早い政治決断と格調高いメッセージに感動。

JAグループも「生理の貧困」の解消に取り組め

日本農業新聞(3月10日付)の論説は、「地域農業の方針策定への女性参画を示す指標として政府は、JA役員と農業委員の女性の割合で数値目標を掲げた。増えてきたが、達成にはまだ遠い。次世代の女性リーダーを育む土壌づくりに力を入れるべきだ」とする。確かに、男だらけの社会。その象徴が全国農業協同組合中央会の役員構成。29名中女性理事は1名のみ。

斎藤美奈子氏(文芸評論家)は、東京新聞(3月10日付)で「アリバイ的に、チームの中に1人、2人だけ女性を交ぜるケースは以前からありましたが、それじゃダメです。できれば半々、最低でも3割か4割。それだけで組織は変わる」と指摘する。

タイトルは、ずばり「『紅一点』じゃダメ」。

JAグループにおいても、フードバンクをはじめとする食料支援や大学などへの寄付講座など、多様な社会貢献活動が取り組まれている。女性の運営参画のスピードを上げ、社会貢献活動のひとつに、「生理の貧困」を解消する取り組みを加えるべきである。

それをひとつの契機に、「政治の貧困」が解消され、「生理の貧困」が撲滅されると、この眼は睨んでいる。

「地方の眼力」なめんなよ

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

小松泰信氏のコラム【地方の眼力】

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