【浅野純次・読書の楽しみ】第60回2021年3月16日
◎保阪正康『陰謀の日本近現代史』(朝日新書、979円)
歴史探偵こと半藤一利さんが亡くなって、残された保阪正康さんには昭和史の真実を掘り起こす期待が今後、ますます高まることになりそうです。
本書は、日本が近代国家を形成していく中で、どのように日中・日米戦争の泥沼へはまり込んでいったか、そして必然ともいえる敗戦にどう突き進んでいったのか、保阪さんならではの知られざるエピソードや証言が随所に散りばめられてとても面白く読めます。
いや面白がってはいられないですが、どのようにしてでも、戦争を知らない世代にはもはや歴史となりつつある時代をしっかり認識してほしいものです。
日本の暗号電報がすべて米国に解読されていた話は有名ですが、最後まで日本はそのことに気づかなかった。情報戦に負け、物量戦に負け、精神力だけで勝とうというのは戦後も完全に払拭されたわけではありません。
仕組まれた日米開戦に始まり、軍事指導者の歪み、山本五十六最期の謎、瀬島龍三の弁解、ポツダム宣言受諾への曲折など、興味深い話が続きます。
戦前戦中の政治家や軍人はなぜこれほどに大局観に欠け、かつ状況や情報を自分に都合よく解釈して行動し続けたのか。今の政治家や官僚にも当てはまる謎がここにあります。
◎スチュワート・ロス『なんでも「はじめて」大全』(東洋経済新報社、2200円)
本書は思いつく大抵の物と事との始まりについて述べた珍しい内容から成っていて、項目数たるや2000を軽く超えています。
ここはやはり農業関係のページから紹介しましょう。初めての栽培食物は紀元前9500年頃に中東で始まります。3種類の穀類(大麦、小麦2種)と4種類の豆類(レンズ豆、エンドウ豆、ヒヨコ豆、ビターベッチ)です。
輪作と灌漑も中東で紀元前6000年頃、始まりました。無機質肥料ではチリ硝石が1820年代にチリと米国で、窒素肥料は1913年にドイツで製造され始めます。種まき機は1701年、脱穀機は1794年にともに英国、肥料散布機は1875年に米国で使われ始めたそうです。
というわけで、健康、料理や食品、地下の貯蔵庫から産業、文化、戦争、政治、スポーツなどありとあらゆる話題が登場します。個々の説明が短いのが難ですが、かえって本質や関連がつかみやすいかもしれません。トリビアの感もありますが、へえっと感服することこの上なしでしょう。
◎中島淳一『オールカラー図解 日本列島の未来』(ナツメ社、1540円)
地震と津波、火山噴火から日本は逃れられない宿命にあります。書名からは未来本のように感じますが、内容の大半は過去の大地震や大噴火を地図などカラー図解によって詳しく説明しています。
そして、それから何千年、何百年の間隔が空いているので、同規模の災害がいつ起きてもおかしくない、という結論に至ります。
地震がどうやって起きるかのメカニズム(とくにプレート)は大事です。房総沖には太平洋、フィリピン海、オホーツクの3つのプレートが接する3重会合点(世界でここだけ)があり2重沈み込みが日々起こっています。(2つ同時に跳ね上がったらどうなるのか、心配になります)。
カルデラなど大噴火も問題です。富士山を休火山と思っている人が多いでしょうが、今は1万年以内の噴火歴があればみな活火山になります。周期的にはいつまた起こってもおかしくない地震と噴火が多いそうで、オリパラ、大丈夫でしょうか。
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