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2.5坪の玄米専用弁当販売店をオープンする若手経営者【熊野孝文・米マーケット情報】2021年3月30日

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浅草で僅か2.5坪の厨房で玄米食専用の宅配弁当店をオープンする経営者のところに行ってみた。この店舗はビルの一階にあり、ウナギの寝床のように2.5坪ずつ部屋が区切られて並んでおり、その1室を借り受けて厨房に特化して玄米弁当を作る。こうした造りをシェア型クラウドキッチンというそうである。なぜ玄米食に特化した弁当を作るのか?それはこの経営者が日本のコメ食文化に強い思い入れを持っているからである。

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この若手経営者と最初に会ったのは先月はじめに幕張メッセで開催されたフ―デックスジャパンの会場で、都道府県別に設置されたブースを見て回っていると「玄米×味噌」と大書したパネルが見えた。立ち寄ると10センチほどの小さな袋に入ったシリアルバーが置かれている。試食できるというので味噌、梅、カレーの3種類ある中の味噌を試食してみた。玄米をパフ化させ、それに味噌を加えて成型したもので、サクッとした食感とともに味噌の風味が口の中で広がる。甘くはなくもっと食べたくなるような食品で、ありそうでない食べ物と言った感じ。商品特徴として、玄米と味噌を合せることによって必須アミノ酸8種類が全て含まれているほかビタミン、ミネラル、脂肪酸、食物繊維も含み『完全食』に近い食品で、かつ無添加で作られていること。社名が「ジャパンエナジーフード」と記されてあったので、新しい技術で食品を開発している会社かと思いきやそうではなく「和食を簡単に食べられるようにしたい」という発想で玄米シリアルバーを作ったという。

なぜ玄米にこだわるのかと言うと経営者自身の体験にあるという。大学時代にバトミントン部に所属していたこともあって、体力を持続させる食べ物は無いか調べていると、明治時代に日本に招かれたドイツ人医師が日本の飛脚や人力車夫の体力に驚き、その源が当時の日本人の食事にあることを突き止めたという文献を読み、自らも玄米食を試してみた。ただ、その時は炊飯方法も分からなかったので美味しくなかった。生協に勤めるようになり配送の仕事に携わったが、そこも体力勝負だったこともあって美味しく玄米を食べる方法を工夫してみた。辿り着いたのが玄米を2日間浸漬し、白米50%、玄米50%で炊飯する方法。そうした玄米を中心にした食事を実践しているうちにもっと簡単に玄米を食べられる方法は無いか友人らと一緒に研究、試行錯誤を重ね玄米シリアルバーを製品化出来るようになり、この食品を広げるために合同会社を設立した。設立は2019年4月だが、その起案書にビックリするようなことが記されている。

「ジャパンエナジーフードの事業は、世の中がこうで あってほしいという願いの体現に向けた小さな一歩です。『こう』というのは、誰しもが安全で安心できる美味しい食につくことができ、差別を受けることなく認められ、幸せに生きていけるような、そういう世の中です。 食や農という営みは本来、資本主義経済とはある程度切り離すべき事柄であるべきと考えていました。市場経済において優秀であったり、商品としての価値の高い食べ物というものが、人の健康や将来において有益なものであるとは限らず、むしろ、そうでないことの方が多いからです。少なくとも、これまではそうでした。みんなが買える安い食べ物が、必ずしもみんなの身体にとって良い食べ物ではない、ということです。しかし現代においては、ダイベストメントなどをはじめ、資本主義の中でも、私たちにとって望ましい、幸せな在り方を目指した世界に向けて、私たちが選択できるような世の中になりつつあります。 私はその世界の流れに希望を持って、食の在り方を見直して、日本の食文化を再提案したいと思いました。そしてそれは日本のみならず、世界に対して発信していくことで、より健康で、未来・次世代に向けた食のバトンをつなげていくことを目指して、起業しました。『和食で世界を健康にする』このミッションで世界中の人を、そして社会そのものを健康にしていきたいです」

こうした思いが伝ったのか会社を設立して間もないがメディアに取り上げられる機会も多かったほか山と渓谷と言った登山系雑誌でも紹介され、アウトドア商品としても販売され始めた。

玄米活用商品はシリアルバーだけでなく、玄米ごはんをベースにした1汁1菜のメニューを提供する店を鎌倉に出店した。浅草のクラウドキッチンは2号店で玄米食宅配専門。

使っているコメは有機米で「本当の意味で安心して美味しく食べてもらいたい。これが広がることで日本農業にも役に立つ」ときっぱりと36歳の経営者は答えた。

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

(株)米穀新聞社記者・熊野孝文氏のコラム【米マーケット情報】

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