医療の非常時体制を作れ【森島 賢・正義派の農政論】2021年4月12日
コロナの第4波が猛威をふるいだした。多くの人たちが予想していたことだが、政府は予想していなかったフリをしている。そうして、このままでは医療が崩壊するといって国民を脅し、崩壊を防ぐには「三密」の回避しかないといい、崩壊したときの責任を、国民に押し付けようとしている。
医療の崩壊を防ぐには、医療体制を充実すればいいのだ。それは、政府の責任だが、政府は、それを行わない。それを行ってから「三密の回避」を唱えればいいのだが、そうしない。
コロナによる非常時が1年以上も続いているのに、医療体制は平時のままにしている。そして、もっぱら大声で、しかし空しく「三密の回避」を叫んでいるだけだ。
このままでは、国民の苦難は、まだまだ続くだろう。
上の図は、最近のコロナワクチンの接種率を、主要国についてみたもので、our world in data による先週末の推計である(文末を参照)。
この図をみると、日本は、際立って小さいことが分かる。文字通りインド以下的である。接種が極端に遅れているのである。これは、日本が世界のワクチン争奪戦で、無残に負けたことを示している。
ここでも、日本が非常時の備えを怠ってきたことが分かる。これは、ワクチンを国内で作ろうとせず、外国に依存してきたことの報いである。コメなどの農産物と同じである。
◇
さて、本題の医療体制に戻ろう。
医療崩壊を防ぐには、「三密の回避」が唯一つの方法だ、と政府よりの、いわゆる専門家に言わせている。この1年以上の間、言わせ続けている。彼らは、コロナは自力では動けない、だから、自力では感染させられない、とまことしやかに言っている。人といっしょに動いて感染させるのだ、と言う。だから、国民に対して、外出するなと言う。外出するときは、なるべく他の人に近寄るなと言う。
だが、そうではない。それは、一面だけを強調することで、国民を騙す反国民的な言動である。
◇
医療崩壊を防ぐには、医療体制を拡充すればいいのだ。そうして市中の感染者を全て隔離し、治療すればいいのだ。そうすれば、感染はなくなる。
だが、いわゆる専門家は口をつぐんで、それを言わない。だから政府は、いわゆる専門家を盾にして、それをしない。せいぜい、既存の一般病室をコロナ用に改装する費用を補助するだけだ。それで、お茶を濁そうとしている。
しかも、お座なりである。言い訳は、病室を整備しても、医師や看護師などを充分に確保できないからムダだ、という。
この言いわけは、いまのような非常時でも、それに即した医療体制を作ろうとしない、あるいは作ろうとしても作れない、という無能な政治の情けない告白である。
◇
ワクチンが行きわたるまで、息をつめてコロナの蹂躙に耐え忍べ、というのかもしれない。
だが、それまでには長い月日がかかる。高齢者に行きわたるのは8月以後だろう。国民の大多数に行きわたるのは、早くても年末だろう。それまでの長の間、コロナ禍に耐え忍んでいろ、というのか。
国民は、耐えきれない。
◇
政府は、何をなすべきか。
それは、感染症の原則に立って、検査、隔離、治療を着実に行うしかない。
検査を徹底的に行い、市中の感染者を激減させることである。そして、感染者を市中から隔離することである。それしかない。
そのために必要なことは、検査体制の非常時的な、抜本的な再編である。その目指すところは、多くの国が行っているような「無料で、誰でも、何度でも」という検査体制である。
◇
隔離、治療の体制は、非常時にふさわしい解体的な再編が必要だろう。いまの体制は、いったん解体するしかない。病床が逼迫するのなら、非常時なのだから、政府がプレハブ造りでもいいから、病棟を大量に作ればいい。
また、医師や看護師などの医療関係者が不足というのなら、医学生や看護学生などのワキチン注射の禁止、などという治療行為の規制も、非常時的に緩和すべきだろう。その上で、非常時にふさわしい体制に再編すべきだろう。
また、看護師などの資格を持っている人たちに対し三拝九拝して、医療体制の中に復帰してもらったらどうか。
◇
これらは、今後10年以内に再来するであろう、つぎの感染症対策に生かされるだろう。こうした備えがあれば、国民は安心していられる。また、ワクチンの国内での開発も重視すべきである。
それができれば、日本は世界中から尊敬を集めるだろう。日本人は世界の中で、胸を張っていられるだろう。
(2021.04.12)
重要な記事
最新の記事
-
日本人と餅【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第331回2025年3月7日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】「コメ騒動」の原因と展望~再整理2025年3月7日
-
(425)世界の農業をめぐる大変化(過去60年)【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年3月7日
-
「とやまGAP推進大会」に関係者約70人が参加 JA全農とやま2025年3月7日
-
新潟県産チューリップ出荷最盛期を前に「目合わせ会」 JA全農にいがた2025年3月7日
-
新潟空港で春の花と「越後姫」の紹介展示 JA全農にいがた、新潟市2025年3月7日
-
第1回ひるがの高原だいこん杯 だいこんを使った簡単レシピコンテスト JA全農岐阜2025年3月7日
-
【スマート農業の風】(12)ドローン散布とデータ農業2025年3月7日
-
小麦ブランの成分 免疫に働きかける新機能を発見 農研機構×日清製粉2025年3月7日
-
フードロス削減へ 乾燥野菜「野菜を食べる」シリーズ発売 農業総研×NTTアグリ2025年3月7日
-
外食市場調査1月度市場規模は3066億円2019年比94.6% コロナ禍以降で最も回復2025年3月7日
-
45年超の長期連用試験から畑地土壌炭素貯留効果を解明 国際農研2025年3月7日
-
日本赤十字社のプロジェクト「ACTION!防災・減災」に参加 コープみらい2025年3月7日
-
健康増進へ野菜摂取レベルなど競う企業対抗企画 タキイ種苗が優勝2025年3月7日
-
フルーツピークス横浜ポルタ店2周年記念 いちごの超豪華パフェや感謝価格のタルト登場2025年3月7日
-
EVトラックの最適充電マネジメントシステムサービスを提供開始 グリーンコープ生協くまもと2025年3月7日
-
「金芽米」活用で市職員の花粉症予防・改善にチャレンジ 大阪・泉大津市2025年3月7日
-
台湾へのイチゴ輸出を本格化 JAかみましき2025年3月7日
-
道の駅「明治の森・黒磯」で「手塚さんちの長ねぎドレッシング」新発売2025年3月7日
-
鳥インフル 米デラウェア州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年3月7日