JAの基本的価値を視点に JAグリーン近江常勤監事大林茂松【リレー談話室・JAの現場から】2021年5月8日
私は令和元年6月にJAグリーン近江の常勤監事に就任し、もうすぐ2年が経過しようとしています。就任した年にJA全国監査機構監査から公認会計士監査へと変わり、さらには信用事業収益の低下に伴う経営環境の悪化など、今までに経験したことのないことばかりで、現在2回目の決算期を迎えたところです。まだまだ経験の浅い常勤監事ではありますが、この2年間に監査の現場やいろいろな監事研修会などで感じたことをお話ししたいと思います。
農協法の改正によって公認会計士監査が導入され、それに合わせて監事監査規程、監事監査マニュアル、監事監査基準等の多くの改正もあり、監事の仕事も表面上は変化がないように見えますが中身は随分変わってきたと感じています。
これまでのJA監査は、農林水産省の監督と規制の下で、JA全国監査機構(JA全中)が全国のJAを「農業協同組合」として監査してきましたが、令和元年度の決算からは金融庁の監督と規制の下で「一般の金融機関(会社)」として公認会計士と監事が監査することになりました。
また監事の監査も、より会社法に準拠した監査に移行することで、特に重要な内部統制システムの確立などが必要となり、JAの監事に求められるものも株式会社などのルールに従って監査をすることへと大きく変わって来ています。
しかしながら、私たち監事が監査するJAは「農業協同組合法」という特別の法律で設立された組織であり、一般の「会社法」で設立された組織とは設立の趣旨や考え方、運営形態等も大きく違います。このため、いろいろなルール(規則)の中にあっても文字通り地域に根差した協同組織であり、協同組合としての原則的なあり方、果たしてゆくべき社会的役割にはしっかりと取り組んでいかなくてはなりません。
公認会計士監査が会社法の下で財務諸表の証明を目的にしている中で、また信用事業を取り巻く環境の厳しさから、JAは大変苦しい経営が続いています。内部統制の整備状況や経営基盤強化に向けた取り組みの検証も非常に重要ではありますが、当然私たちJAの監事は株式会社の監査役とは違います。
「協同組合であること」にこだわり、株式会社の監査役としての視点でばかりではなく、JAが組合員とのかかわりをどのように深めているか、組合員のJAへの結集にどのように取り組んでいるか、地域とのかかわりの中で必要とされる組織としてどのような活動を展開しているかなどが重要です。
具体的にはJAグリーン近江の組合員の声である、(1)営農・経済事業をもっと強化してほしい(2)暮らしに役立つ情報をもっと提供してほしい(3)JAグリーン近江独自の取り組みをしてほしい(4)組合員との関係をもっと強化してほしい(5)地域とのつながりをもっと大事にしてほしい――の五つの声を実現するために、もっと協同組合組織の基本的な部分を着眼点として、JA組織に特有の価値をどのように追求しているのかを監査すべきであると考えています。これからも「JA監事としてのこだわり」を持って頑張りたいと思っています。
重要な記事
最新の記事
-
(393)2100年の世界【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年7月19日
-
【'24新組合長に聞く】JA鹿児島きもつき(鹿児島) 中野正治組合長 「10年ビジョン」へ挑戦(5/30就任)2024年7月19日
-
冷蔵庫が故障で反省【消費者の目・花ちゃん】2024年7月19日
-
農業用ドローン「Nile-JZ」背の高いとうもろこしへの防除も可能に ナイルワークス2024年7月19日
-
全国道の駅グランプリ2024 1位は宮城県「あ・ら・伊達な道の駅」が獲得 じゃらん2024年7月19日
-
泉大津市と旭川市が農業連携 全国初「オーガニックビレッジ宣言」2024年7月19日
-
生産者と施工会社をつなぐプラットフォーム「MEGADERU」リリース タカミヤ2024年7月19日
-
水稲の葉が対象のDNA検査 期間限定特別価格で提供 ビジョンバイオ2024年7月19日
-
肩掛けせず押すだけで草刈り「キャリー式草刈機」販売開始 工進2024年7月19日
-
サラダクラブ三原工場 太陽光パネルの稼働を開始2024年7月19日
-
「産直アウル」旬の桃特集 生産者が丹精込めて育てた桃が勢揃い2024年7月19日
-
「国産ももフェア」直営飲食7店舗で25日から開催 JA全農2024年7月19日
-
「くまもと夏野菜フェア」熊本・博多の直営飲食店舗で開催 JA全農2024年7月19日
-
【現地ルポ】福岡・JAみなみ筑後(1)地域住民とともに資源循環 生ごみで発電、液肥化2024年7月18日
-
【現地ルポ】福岡・JAみなみ筑後(2)大坪康志組合長に聞く 「農業元気に」モットー2024年7月18日
-
【注意報】野菜・花き類にオオタバコガ 栽培地域全域で多発のおそれ 既に食害被害の作物も 群馬県2024年7月18日
-
【注意報】過去10年間で最多誘殺 水稲の斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 山口県2024年7月18日
-
【注意報】平年の4倍 水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 滋賀県2024年7月18日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】「財務省経済産業局農業課」て何?2024年7月18日
-
1970年代の農村社会の異質化の進展と農業【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第299回2024年7月18日