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「こどもの日」1500万人割れと「みんなのうた」60年【記者 透視眼】2021年5月8日

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少子化に歯止めがかからない。15歳未満の子どもの数はついに1500万人割れに。5月大型連休最後の「こどもの日」に、改めて少子高齢化の日本の実相を思う。そしてNHK「みんなのうた」60年との関連を考えた。

こどもの日

コロナ禍で少子化加速

コロナ禍の先行き不安から、世界中で出生数が減ると見られている。少子高齢化の先頭を行くわが国は、2月の速報値で出生数は87万2000万人あまりと過去最低を更新した。

総務省は4日、「こどもの日」を前に推計人口を発表したが、15歳未満の子どもの数は4月1日時点で前年より19万人少ない1493万人となった。1982年から40年連続の減少で、こちらも過去最少を更新した。

出生数と子どもの数は、日本の未来の姿を照らす。若者が少ない社会はどうなるのか。国の衰勢は教育力が左右する。これだけ子どもが少ないと学校経営、特に大学は一部有力大学を除き成り立たなくなる。地方の私立大はもちろん、国立大学でさえ倒産の危機に直面する。中京圏で名古屋大学を中心に周辺県の国立大学の統合の動きは、それらの危機感を映す。

人口は人の口と書くが、食育旺盛な子ども達の〈口〉が減ることは、経済、食品、農業生産にも大きなマイナスとなる。一方でジュニア需要から、高齢者ニーズをしっかりとらえたシニア需要をどうつかむのかという問題にも行き着く。

14億中国も減少時代へ

世界最大の人口大国・中国も人口減少時代に突入する。2025年頃に中印逆転でインドが世界最大の人口となる。

一方で中国は急速な少子高齢化が進む。4月末、2020年の人口が失政で大飢饉を招いた毛沢東時代以来の人口減少に転じたと英紙フィナンシャルタイムズが報じた。中国政府は否定し人口増は続いているとしたが、いまだに統計数字を公表していない。実態は減少に転じる微妙な数字なのだろう。今回は統計操作で取り繕っても、早晩、人口減がはっきりするはずだ。

「子ども庁」創設と政治

菅政権は「子ども庁」創設に動き出した。子ども関連の政策を一元的に取り扱うのが狙いだ。むろん、少子化対策ともリンクしている。それにしても、あきらかに10月までの解散・総選挙の政治的動きとも連動する。子ども政策を拡充し、出産しやすく、子ども達が十分に教育環境を整え、健やかに育つ条件を整備するのは欠かせない。だが、それが政争の具とされるのに違和感を思う。

まずは経済格差、十分に食事を摂れない家庭の存在と貧困問題を解消する必要がある。「こども食堂」の位置づけも政策できちんと位置づけるべきだろう。子ども食堂と200万トンを超す米民間在庫、格差解消を求める協同組合の役割をリンケージした対応を、系統組織自らの提案として考えることも急ぐ必要がある。

「こどものうた」1500曲の威力

個人的には、朝6時のNHKニュースを生活リズムの起点としている。「こどもの日」前後して、朝のニュースの後に、再放送も含め「こどものうた」60年の特集番組が何度か組まれ、興味深く観た。

「5分間のミュージカル番組」をコンセプトに1961年4月に始まった。紹介した曲は1500に達すると言うからすごい。この週末、5月8日土曜日には、森山直太朗、平原綾香、リトグリら歌唱力抜群の歌い手が出演し19時30分から「みんなのうた60フェス」の特別番組にある。

番組開始60年は、70代の年齢層まで広く子どもの頃に親しんできたことを意味する。記念すべき第一曲目はチェコスロバキア民謡「おお牧場はみどり」。その後、ウクライナの作曲家による「ドナドナ」、日本の歌では「かあさんのうた」「ちいさい秋みつけた」など、懐かしい〈名曲〉がそろう。

歌はいくつもの反響を呼ぶ。アンジェラ・アキの「手紙~拝啓十五の君へ~」もその一つ。〈荒れた青春の海は厳しいけれど 明日の岸辺へと夢の舟よ進め〉。中三の卒業ソングにも定着した。子ども達が涙を浮かべ歌う姿は切ない。

番組60年記念歌は小田和正

60年の記念の歌は小田和正が作った「こんど、君と」。小田はコロナ禍で創作を進めた。〈想う人がいる 想っている人がいる 小さな幸せが支えてくれる〉。やさしい歌はコロナ禍への反骨でもあるのか。小田は団塊世代。1970年オフコースでデビュー。東北大建築科、早大理工学部大学院を出た理系の秀才だが、小田の奏でる曲は高音を生かした情緒あふれるものが多い。

60年前の1961年は所得倍増と農基法

「みんなのうた」が始まった1961年は激動の歴史を刻む。60年安保闘争を経て高度経済成長の号砲が鳴る。池田内閣の所得倍増計画スタート。国家予算は1兆9527億円と前年度比24%増の積極財政を組む。100兆円を超す今の国会予算とは桁違いだが、大きな経済政策転換だった。3年後にはアジア初の東京五輪も迫っていた。「明日は今日より良くなる」。子ども心にそう思ったのを思い出す。

農業も大きな転機を迎えた。その後の農政の〈憲法〉となる農業基本法が公布。選択的拡大、構造改善、自立経営農家の育成を掲げた。それから60年、経済成長に伴い経済大国の一角を占めるが、日本農業は自由化につぐ自由化で食料自給率は38%と先進国最低にまで落ち込む。

記者の〈透視眼〉を通し、「こどもの日」を前後して「みんなのうた」60年と日本経済と日本農業をのぞけば、また別の〈明日〉が見えてくる。

(K)

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